日本では2グレードで展開されているフォルクスワーゲンの電動ミニバン「ID.Buzz」から、標準ホイールベースの「ID.Buzz Pro」を試乗。「ID.Buzz Pro Long Wheelbase」との違いをチェックする。

ホイールベース以外の違いは?
今回試乗したのはキャンディホワイト/ベイリーフグリーンメタリックの2トーンカラーが爽やかな一台。2トーンのボディカラーは24万2000円の有償オプションで、さらに、ID.Buzz Proの場合、70万円の「アップグレードパッケージ」を選ぶ必要があり、これらを合わせると価格は983万1000円となる。
このアップグレードパッケージを選ぶことで、上位モデルのID.Buzz Pro Long Wheelbaseと同等の装備になるが、109万円あった両者の差は39万円に縮まる。さらに、国からの購入補助金(CEV補助金)はID.Buzz Proが46万円、ID.Buzz Pro Long Wheelbaseが52万8000円で、それを加味すると2台の差は32万2000円に縮まるから、価格の安さがID.Buzz Proを選ぶ理由にはなりにくい。
ちなみに、パノラマグラスルーフとプレミアムサウンドシステム“Harman/Kardon”がセットになる「ラグジュアリーパッケージ」(29万7000円)はID.Buzz Proでは選択できないのが惜しいところだ。
外観では、リヤ左右のパワースライドドアがID.Buzz Pro Long Wheelbaseに比べて短くなるとともに、タイヤ/ホイールが20インチから19インチに1インチダウンになる。さらに、搭載されるバッテリーが7kWh減の84kWhになるなどの影響で、車両重量はID.Buzz Pro Long Wheelbaseの2720kgに対して170kg軽い2550kgになる。

6人乗りのアドバンテージ
室内に目を移すと、ボディカラーとコーディネートされた明るい内装が、楽しげな雰囲気を醸しだしている。
運転席は「Golf Touran」や「Sharan」よりもさらに着座位置が高く、乗り降りにはひと手間かかる。そのぶんアイポイントも高く、前方の見晴らしは抜群である。
メーターパネルは、「ID.4」同様、小振りのものがステアリングコラムの上に搭載されている。速度、パワーメーター、各種データ、シフトポジションなど、必要な情報がシンプルな表示で得られるのがいい。
「Passat」や「Tiguan」、さらに最新のID.4と同じように、シフトレバーはステアリングコラムの右に配置されている。シフト操作に慣れるのにさほど時間は必要なく、慣れてしまえばセンターコンソールよりも断然使いやすい。
ダッシュボード中央のタッチパネルも最新のデザインが採用されるが、このID.Buzzではパネルがドライバーに向けられておらず、多少見にくいのが気になった。

2列目以降の様子は、ID.Buzz Pro Long Wheelbaseとは大きく異なる。ID.Buzz Pro Long Wheelbaseの2列目は3名の分割可倒シートを採用するのに対して、このID.Buzz Proでは2名分の独立シートが採用されているのだ。乗車定員が1名減る一方、3列目へのアクセスが容易なのがうれしいところだ。
肝心のスペースは、2列目、3列目ともにヘッドルームには十分な余裕があり、足元も2列目は大人でも十分な広さが確保されている。一方、3列目は、2列目を一番後ろにスライドさせると膝と前席の間隔がギリギリといったところで、大人が5名以上乗る機会が多い場合はID.Buzz Pro Long Wheelbase、大人が4名以内で子供を合わせて6名以内であればID.Buzz Proがオススメだ。


荷室は、3列目を使用する状態では奥行きが40cmほどで、3列目を倒せば約110cmまで拡大が可能。ここまではID.Buzz Pro Long Wheelbaseと同じである。一方、2列目を倒した状態では奥行きが約220mと、ID.Buzz Pro Long Wheelbaseよりも25cm、すなわちホイールベースの差だけ短い。それでも十分なスペースではある。


軽さは正義
ID.Buzz Pro、ID.Buzz Pro Long Wheelbaseはともに、最高出力210kW(286ps)、最大トルク560Nmの電気モーターにより後輪を駆動している。前述のとおり、車両重量はID.Buzz Proのほうが170kg軽い。そのぶん、ID.Buzz Proの走り出しはID.Buzz Pro Long Wheelbaseよりも軽快で、ブレーキをかけたときも素早く止まる印象だ。
走り出したあとも、これだけ大きなボディを加速させるのに十分過ぎるほどトルクがあり、ストレスを感じることはない。
ホイールベースが短いぶん、ID.Buzz Pro Long Wheelbaseに比べて最小回転半径が小さく、狭いスペースでの車庫入れなどでは切り返しが少なくてすむのがいのもうれしいところだ。

一方、ID.Buzz ProとID.Buzz Pro Long Wheelbaseと乗り比べると、ホイールベースが長い後者のほうが走行時の挙動に落ち着きがあり、乗り心地もより快適である。とはいえ、ID.Buzz Proでも十分な快適性を確保しており、取り回し性を重視するならID.Buzz Pro、室内の広さを求めるならID.Buzz Pro Long Wheelbaseというのが最適な選択といえるだろう。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Satoshi Ubukata, Volkswagen Japan)


