2026年1月9日から11日まで、フォルクスワーゲン ジャパン(VWJ)は、幕張メッセで開催中の「東京オートサロン2026」に2年連続で出展し、電動GTIの将来像を示す「ID.GTI concept」を日本で初めて公開するとともに、「Golf R Black Edition」とフル電動ミニバン「ID. Buzz」も展示している。

VWJのブースでは、中央のステージにジャパンプレミアとなるID.GTI conceptを展示し、GTI誕生50周年を迎える節目の年にふさわしい活気に満ちたブース仕立てになっている。
その横には、2025年注目を集めた「2025-2026 インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」と「2025-2026 デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたID.Buzzと、Golf Rの限定車のGolf R Black Editionが脇を固める。

この日は2025年11月にVWJのブランドディレクターに就任したマーティン・ザーゲ氏が、プレゼンテーションを行った。
2025年の販売台数は前年比36%増の3万1000台
ザーゲ氏はまずはじめに、2025年の日本市場における販売実績を報告した。
2025年の販売台数は3万1000台で、前年比36%増となったという。背景には新型車の投入によるラインナップ刷新があり、商品ポートフォリオが「若く、魅力的」になったことで日本の需要に合致したと説明した。さらに、BEVとICEの双方に注力する「2本の柱(Two Pillar)戦略」が成長を支えたとしている。

ID.4の性能を強化
BEV分野では、改良版のID.4が同日発売されたことに触れた。ID.4はVolkswagenグループで世界的に最も販売されているEVであり、日本市場でも中核モデルとして扱われている。
改良点は3つに整理されている。第1に加速性能の向上で、運転の楽しさを増す狙いがある。第2に充電速度の向上。第3に実用性と日常の使い勝手の改善で、ライトバージョンには新しいインフォテインメントシステムを採用し、ドライブモードセレクターの配置も見直された。
Golf Rに特別仕様車を用意
一方、内燃機関を搭載するモデルについては、「T-Cross」「Golf」「Tiguan」「Passat」など主要モデルの刷新が進んだ。狙いは燃費効率と環境性能の向上で、マイルドハイブリッドを全車に導入し、プラグインハイブリッドも用意したという。一方で、日常の使い勝手と「運転する楽しさ」にも注力したと説明した。
その具体例として挙げられたのがGolf RとGolf R Variantである。Golf Rはフォルクスワーゲンのガソリン車ラインナップで最もパワフルなモデルとされ、4MOTIONと高出力エンジンの組み合わせがRモデルの核だとされた。ザーゲ氏は、Rモデルを「ハイパフォーマンスの頂点」「最新技術のショーケース」と表現し、年内にGolf Rの特別仕様車を投入する見通しも示した。


また、2026年はGTI誕生50周年にあたり、VolkswagenはGTIを「中核的なアイコン」として強化する方針を示した。ザーゲ氏はGTIの成り立ちを1970年代のドイツに遡って説明し、全長4m未満、1.6L、約110PSの小型車がアウトバーンで大型車に挑んだことが、GTIの価値を象徴すると語った。
さらに、GTIは世界で累計約250万台が生産され、日常性とスポーツ性の両立によってスポーティーコンパクトというジャンルを確立したと位置づけた。ニュルブルクリンク24時間では2024年と2025年に「Golf GTI Clubsport」がクラス優勝を連覇したことにも触れた。
デザイン面では赤いライン、タータンチェックシート、黒いルーフライナーなどの伝統的要素を列挙し、技術面でも燃料噴射やABSなどを先駆けて導入してきた歴史を強調した。
ID.GTI conceptが示すGTIの未来
そのGTIの電動化を象徴する存在として披露されたのがID.GTI conceptである。ザーゲ氏は、GTIというアイコンを更新することは「ルーツを失わず、キャラクターを薄めない」ことが求められると述べ、ウォルフスブルクの開発陣がGTIのDNAを電動化時代へ移す課題に取り組んだと説明した。



ID.GTI conceptは、運転の喜びと高い実用性というGTIの要素を、電気自動車の強大なトルクと静粛性とともに提示するモデルと位置づけられた。駆動方式はGTI伝統に従う前輪駆動で、電動モデルとして初めて電子制御フロントディファレンシャルロックを採用した点が強調された。デザインはID.2allをベースにしつつ、赤いラインやハニカムグリルなどGTIの意匠を組み合わせたとしている。
プレゼンテーションの終盤で、ザーゲ氏はID.GTI conceptの日本導入がまだ確定していないとし、導入を後押しするために日本のファンの後押しが必要だと訴えた。
そしてフォルクスワーゲンの今後の方向性として「True Volkswagen」を掲げ、クリーンで認識しやすいデザイン、厳格な品質基準、直感的操作性、革新的技術を、魅力的な価格性能比で提供することを「伝統的な強み」として強調した。
ファンフェストが復活する!?
プレゼンテーション後の取材では、日本市場における小型EVの成長可能性、GTI50周年施策、GTIファミリーの拡張性、価格戦略、ID.GTI conceptの導入可能性が論点となった。
小型EVの重要性についてザーゲ氏は、現状ではEV市場が小さいことを認めつつも、将来は前向きな発展があるとの見通しを示した。特に日本では日常利用に適した小型・コンパクト車の人気が高く、このセグメントが最大の成長ポテンシャルを持つと述べた。
GTI50周年については、GTIユーザーを対象とした「ファンフェスト」を企画中であることが明らかになった。GTIやRモデルのユーザーが最もブランドへの愛着が強い層であり、その熱量に応えるイベントにしたいという趣旨が語られた。
GTIファミリーの展開については、GTIは常にハッチバックと結びつくものであり、現時点で追加車種の計画はないと説明された。ただし、将来的に電動Golfが登場すれば、GTIとして成立する可能性があるという見解も示された。
価格戦略については、為替の悪影響を認めつつも、各モデルは旧世代比で価値が大きく向上しており、価格は高くても「その価値がある」との立場が示された。加えて、ローンやリースなどのファイナンスプログラムと組み合わせることで、消費者にとって合理的な購入が可能になるとした。

最後には、ID.GTI concept(=ID. Polo GTI)の日本導入についてザーゲ氏がメディア関係者に逆質問し、価格や航続距離、充電時間などのバランスが鍵になるという声が上がった。一方で、Golf8 GTIオーナーである筆者が、次の乗り換え候補としてID.GTI conceptを強く支持する姿勢を示すと、取材の場はユーモアを交えたやりとりで締めくくられた。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)





