2025年11月27日、Volkswagenグループ傘下のVolkswagen、Škoda、SEAT&CUPRA、Volkswagen Commercial Vehiclesで構成されるブランドグループコア(以下BGC)が、生産体制の再編を本格的に進めてことを明らかにした。

今回の発表は、イベリア半島地域の統括責任者となる「Chief Production Officer(CPO)」を新設し、クロスブランドでの生産管理を地域単位でまとめるというものだ。一見すると単なる人事異動に見えるが、その背景にはグループの構造変化を示す重要なメッセージが隠れている。
“地域分権化”はコストのためだけではない
Volkwagenはここ数年、電動化時代に対応するため、生産と開発の仕組みを大幅に見直してきた。ブランドグループの再編、プラットフォームの共通化、ソフトウェア領域の統合など、いずれも「巨大組織をいかに俊敏に動かすか」という課題に向き合う改革だ。
今回の生産体制再編もその流れのなかにある。5つの生産地域に分け、各地域が生産・物流機能を直接管理するという仕組みは、従来の“中央集権型”から一定の裁量を地域に移し、より短いタイムラインで意思決定できるようにする狙いがある。
電動車の立ち上げは、従来の内燃機関車に比べて生産準備の負荷が重い。バッテリーパック、電動モジュール、熱マネジメント――いずれも車両全体との整合性が強く影響し、工場のライン構成にも大きな変更が必要となる。そのため、地域ごとにプロジェクトを統括し、ブランド横断でプロセスを標準化することが、グループ全体の効率を左右する。
イベリア半島は“電動小型車”の前線基地
最初の改革がスペインとポルトガルから始まった点も興味深い。ここは次世代の小型EV「Electric Urban Car Family」が生産される重要拠点だ。ヨーロッパでボリュームゾーンに位置する手頃な価格帯のEVは、各メーカーの収益性を左右する。Volkwagenにとっても、ここを成功させられるかどうかは電動化戦略の成否を大きく左右する。
そのため、イベリア半島にアンドレ・クレブ氏をCPOとして配置し、SEAT&CUPRAのVSC(プレシリーズセンター)を率いてきたアナベル・アンディオン氏をAutoeuropa工場のトップに据えることで、次世代EVの発売に向けて着々と準備を進めている。
とくにアンディオン氏は、Audiでデジタル生産を担当した経験を持ち、試作から量産への流れを深く理解している人物だ。電動小型車はコストと品質のバランスが非常に難しい領域であり、VSCで培った知識を量産ラインに落とし込める人材は貴重である。
Volkwagenが目指すのは「巨大組織の柔軟化」
今回の発表は、Volkwagenが生産の効率化をめざすだけではなく、巨大な組織をしなやかに動かすことに主眼が移っていることを示している。
BGCは20万人以上の従業員を抱え、22工場を運営する巨大組織だ。そのすべてに中央から指示を出すモデルは、電動化・デジタル化の変化速度に対応できない。だからこそ地域単位に権限を委譲し、一方で中央では専門性の高いコア機能を集中させる“ハイブリッド型”の運営が必要になっている。
Volkswagenとしては「地域主導×グローバル標準化」により、EV・SDV時代に突入する自動車産業をリードする狙いだ。
イベリア発の改革は序章にすぎない
今回の動きは、グループ全体の再編のほんの序章である。今後、東欧・中欧・南米など、他地域でも同様の体制が整備されていくはずだ。その過程で、各ブランドが持つ生産技術やノウハウがどのように共有され、EV時代の生産最適化が実現されるのかが注目点となる。
Volkswagenの変革は、大きな組織が“電動化の荒波”にどう立ち向かうかを示す好例でもある。イベリア半島での人事は、その第一歩。今後の動きを追うことで、Volkswagenグループの本気度を読み解く手がかりになるだろう。
(Text by 8speed.net Editorial Team / Photos by Volkswagen AG)
※本記事はプレスリリースをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。


