2025年6月に日本でも発表されたフォルクスワーゲンの電動ミニバン「ID.Buzz」。箱根のワインディングロードで試乗するとともに、受注状況を探ってみる。

画像: 「ID.Buzz」人気の仕様は?

山道でもパワフルな走り

「ID.Buzz」は、現在、日本市場で新車で購入できる唯一の電動ミニバンである。伝説の“ワーゲンバス”を彷彿とさせる楽しげなデザインということもあり、フォルクスワーゲン好きはもちろんのこと、フォルクスワーゲンに詳しくない人からも注目を集めている。

日本では2025年6月20日に正式に発表され、翌7月には納車が始まっているという。すでに街中で見かけたという人も少なくないはずだ。

そんなID.Buzzの特徴や見どころについては、ぜひ上記のニュースをご一読いただくとして、今回は湘南で行われたメディア向け試乗会に参加し、日本のスポーツカーの聖地ともいわれる箱根ターンパイクを走行することができた。日本では標準ホイールベースの「ID.Buzz Pro」と、ロングホイールベース版の「ID.Buzz Pro Long Wheelbase」が販売されており、今回は後者をドライブした。

実は以前にもID.Buzz Pro Long Wheelbaseを試乗したことがあったが、ワインディングロードを走らせるのは初めてだ。一般道や高速道路の印象などについては、ぜひ下記の試乗記をチェックしてほしい。

あいにく、試乗当日は天候に恵まれず、箱根ターンパイクを登り始めるとすぐに雨と霧に見舞われてしまう。いつも以上に慎重な運転が求められるが、ID.Buzzのドライブは想像以上に痛快だった。

オプションのパノラマガラスルーフが装着される試乗車は車両重量が2730kgに達し、これまで日本に導入されたフォルクスワーゲンとしては最重量級といえるが、最大トルク560Nm(57.1kgm)/0〜3581rpmの実力を誇るリヤの電気モーターは登り坂を物ともせず、グイグイと加速していくのがとても頼もしい。しかも、フロア部分に重量物のバッテリーを搭載するID.Buzzの場合、ミニバンでありながらコーナーリング時の挙動は安定していて、不安なくコーナーを駆け抜けられた。

画像1: 山道でもパワフルな走り

ただ、調子に乗っていいペースで箱根ターンパイクを駆け上ったら、平均電費は1.3km/kWhまで低下し、登り始める前に92%あったバッテリーはわずか14kmの走行で79%まで減ってしまった。しかし、同じルートを下っていくと、回生ブレーキでエネルギーを回収できたおかげで、下りきった地点では84%まで復活し、往復の平均電費も4.4km/kWhまで改善している。ちなみに、この日、一般道を走行したときの電費は6.8km/kWh、有料道路では4.7km/kWhという数字だった。

画像2: 山道でもパワフルな走り

Long Wheelbaseの比率は?

試乗の合間には、ID.Buzzの受注状況を伺うことができた。前述のとおり、日本では標準ホイールベースのID.Buzz Pro(888万9000円)と、ロングホイールベースのID.Buzz Pro Long Wheelbase(997万9000円)が購入可能だが、受注の約7割はID.Buzz Pro Long Wheelbaseが占めるという。

画像1: Long Wheelbaseの比率は?

ボディカラーは単色の「キャンディホワイト」「モノシルバーメタリック」「ディープブラックパールエフェクト」と、ツートーンの「キャンディホワイト×ライムイエローメタリック」「キャンディホワイト×スターライトブルーメタリック」「キャンディホワイト×ベイリーフグリーンメタリック」の6色が用意される。

このうち、よく選ばれているのがツートーンの3色で、それぞれが3割ほどを占め、残り1割が単色となる。

画像2: Long Wheelbaseの比率は?

ちなみに、ID.Buzz Proで選べるのは単色のキャンディホワイトとモノシルバーメタリックだけで、他のボディカラーを選ぶにはオプションのアップグレードパッケージ(70万円)を選択したうえで、有償オプションカラー費用(24万2000円)が必要になる。

一方、ID.Buzz Pro Long Wheelbaseでも、単色のディープブラックパールエフェクトやツートーンペイントを希望する場合は有償オプションカラー費用(24万2000円)が必要だ。

ID.Buzz ProとID.Buzz Pro Long Wheelbaseには109万円の価格差があるが、ID.Buzz Proにアップグレードパッケージを装着するとその差は39万円に縮まる。さらに、国からの購入補助金(CEV補助金)はそれぞれ46万円と52万8000円で、それを加味すると差はさらに縮まって32万2000円になる。ID.Buzz Pro Long Wheelbaseならさらに広い室内と長い航続距離が手に入ることを考えると、ID.Buzz Pro Long Wheelbaseの比率が高いのも納得がいく。

一方、シートレイアウトは、ID.Buzz Proが2+2+2の6人乗りであるのに対して、ID.Buzz Pro Long Wheelbaseは2+3+2の7人乗り。ID.Buzz Pro Long Wheelbaseは定員が1人多いというメリットがある一方、6人乗りのID.Buzz Proは2列目シートが独立しているためより快適に過ごせるとともに、3列目にアクセスしやすいという良さがある。そのため、ID.Buzz Pro Long Wheelbaseでも6人乗りを導入してほしいという声が挙がっており、フォルクスワーゲン ジャパンでも対応を検討しているそうだ。

画像: 左の7人乗りがID.Buzz Pro Long Wheelbase。右のID.Buzz Proは6人乗り。

左の7人乗りがID.Buzz Pro Long Wheelbase。右のID.Buzz Proは6人乗り。

興味深いのが顧客の内訳で、フォルクスワーゲンの既納客を新規客が上回っているという。ID.Buzzがきっかけでフォルクスワーゲンに関心を持つ人もいるといい、ID.Buzzが展示された「Volkswagen Brand Exhibition」に足を運んだ人が「Golf Variant」を契約したという例もあったという。

そういう意味で、日本のフォルクスワーゲンを元気づけてくれそうなID.Buzzの上陸。今後の人気の高まりを期待したい。

(Text by Satoshi Ubukata)

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