ついに日本に上陸したフォルクスワーゲンのフル電動ミニバン「ID.Buzz」を国内で試乗。まずは自慢の広い室内をチェックする。

“ワーゲンバス”こと「フォルクスワーゲン・Type 2」のイメージを受け継ぐフル電動ミニバンがID.Buzzだ。日本では2025年6月20日に正式発表されたばかりで、デリバリー開始は2025年7月下旬以降を予定している。
ID.Buzzの概要や日本仕様については上記のニュースをご一読いただくとして、今回試乗したのは、全長が4965mmの「ID.Buzz Pro Long Wheelbase」(997万9000円)。ボディカラーは、自分だったらこれを選ぶと思うキャンディホワイトとライムイエローのツートーン。ただし、有償カラーなので24万2000円の追加費用が必要だ。さらに試乗車には、パノラマガラスルーフとプレミアムサウンドシステム”Harman Kardon”を含むオプションの「ラグジュアリーパッケージ」(29万7000円)が搭載されている。車両本体価格とメーカーオプション価格の合計は1051万8000円である。
眺めの良いコックピット
フロントのドアを開け、運転席に陣取ると、「Golf」や「Passat」はいうまでもなく、「Tiguan」よりもさらに高いアイポイントのおかげで、前方の見晴らしは抜群である。ドライバーからフロントガラスまでが遠く、ダッシュボードも広大で、これまでのフォルクスワーゲンとは別世界の視界が広がっている。
ダッシュボードは派手さや華美さはないが、シンプルでそれなりに上質なつくりに好感が持てる。ただ、ダッシュボード中央のタッチパネルがドライバーに向けられておらず、多少見にくいのが気になる。

メーターパネルは、ID.4で見慣れた小振りのものがステアリングコラムの上に搭載されている。速度、パワーメーター、各種データ、シフトポジションなど、必要な情報がシンプルな表示で得られるのがいい。
ID.4では、このメーターパネルの右横にシフトスイッチが配置されていたが、ID.Buzzではステアリングコラムの右に独立したレバーが用意される。これはPassatやTiguanと同じスタイルであり、ID.4も最新のモデルイヤー(日本未導入)ではこの方式に置き換わっている。シフト操作に慣れるのにさほど時間は必要なく、慣れてしまえばセンターコンソールよりも断然使いやすい。
ステアリングスイッチはタッチ式を採用する。左側にはACC(アダプティブクルーズコントロール)関係、右側にはメーターパネルの表示関係のスイッチがまとめられている。
ACC関係のスイッチは、ID.4もそうだが、このID.Buzzでも「+」「-」の押し方ひとつで設定速度のステップが変えられるのが個人的には気に入っている。強く押すと10km/h単位、軽く押すと1km/h単位で設定速度を調節できるのが、使いやすいのだ。




キャンディホワイト/ライムイエローのボディカラーには、白とグレーのツートーンのファブリックシートが組み合わされる。運転席は、電動調節に加えて、シートヒーター、さらにリラクゼーション機能が搭載される。座り心地は快適で、長時間のドライブでも疲労はほとんど感じなかった。
ダッシュパネルの中央には格納式のドラインクホルダーが用意される。これを収納すれば前席の横の移動が楽にできるのがうれしいところ。また、センターコンソールは取り外し可能で、外しておけば前席とセカンドシートの行き来も可能で、狭い駐車場で出入りするときには重宝する。




2列目も3列も余裕たっぷり
ノーマルホイールベースのID.Buzz Proよりも250mm長い3240mmのホイールベースを誇るID.Buzz Pro Long Wheelbaseだけに、セカンドシートもサードシートも、大人が乗っても余裕あるスペースが確保されている。
ID.Buzz Pro Long Wheelbaseのセカンドシートは3人乗車が可能。左右は2:1の比率で分割されていて、独立してスライドとリクライニングが可能だ。セカンドシートを一番前のポジションにしても足が組めるほど広く、反対に一番後ろにすればリラックスした姿勢がとれるほどに広い。
パノラマガラスルーフが装着される試乗車でも頭上のスペースは十分過ぎるほどのスペースが確保されている。
前席の後ろにテーブルが用意されるのもうれしいところで、クルマを停めてPCを開いたり、食事をするのに便利だ。電動スライドドアには電動の小窓が用意され、外の空気が吸いたいときには重宝する。
サードシートも、補助的な役割ではなく、大人が座っても足元、頭上ともに十分なスペースが確保されている。5〜7人で使う頻度が高いファミリーでも、これなら安心だ。




大型のパノラマルーフは開放的な雰囲気を演出するとともに、内蔵された液晶フィルムによりスイッチひとつで透明と半透明が切り替えられるのも見逃せない。おがげでスライド式のサンシェードが不要で、夏の暑さもある程度和らぐものと予想される。


ID.Buzz Pro Long Wheelbaseの荷室を見ると、手前に小さなボードが設置されているのがわかる。これは「マルチフレックスボード」と呼ばれるもので、サードシートを倒したときにフラットなスペースをつくるのに便利。マルチフレックスボードは取り外すことも可能で、サードシートを取り外せばより低い位置にフラットなスペースをつくることもできる。
3列目を一番後ろに下げた状態では、奥行きは40cmほどだが、2列目を倒せば約110cm、さらに3列を倒せば奥行き240cm強のスペースが生み出されるから、車中泊をするにはもってこいだ。






サードシートは左右独立して取り外せるが、結構重く、ぶつけてバンパーに傷をつけないよう、取り扱いには注意したい。

後編につづく……
(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Satoshi Ubukata, Volkswagen Japan)