フルモデルチェンジにより9代目に生まれ変わった「Passat」のなかから、マイルドハイブリッドシステム搭載の1.5 TFSIエンジンを採用し、充実した装備が魅力の「Passat eTSI Elegance」を試乗した。

新型はステーションワゴンのみに
ご存じのように、新型Passatは、フルモデルチェンジを機にステーションワゴンボディのみとなり、これまで「Passat Variant」と呼ばれてきたワゴンは、単にPassatと名乗ることになった。
今回のフルモデルチェンジでは基本設計も大きく変更されている。「MQB evo」と呼ばれる最新のプラットフォームを採用するとともに、アダプティブシャシーコントロール”DCC”が、2バルブ独立制御式の”DCC Pro”へ。また、大型のタッチディスプレイや新デザインのシフトレバーの採用、パワートレインの電動化など、見どころは盛りだくさんだ。
新型Passatはデザインも一新。細いラジエターグリルやシャープなヘッドライト、それらを結ぶLEDライトストリップを採用するフロントマスクは最新のGolfとのつながりを強く示しながら、Golfの上位モデルらしい品の良さを漂わせているし、スリムなLEDテールライトとそれを結ぶLEDストリップも実にスタイリッシュ。それでいて嫌みのない爽やかなデザインがフォルクスワーゲンらしいところだ。



インテリアは、“庇(ひさし)”がないデジタルメーターの「Digital Cookpit Pro」や15インチの「Discover Pro Max」によりデジタル化を進めている。センターコンソールからシフトレバーが消え、かわりにステアリングコラムの右側にステアリングコラムスイッチが設けられたのも新型の特徴のひとつで、前後に回転させるなどして行うシフト操作はすぐに慣れ、使い勝手も良い。
コックピットを彩るセンターディスプレイは大画面ゆえに画面の上下に必要な項目が常に表示され、アイコンも小さすぎないため、操作性は悪くない。画面下のタッチスイッチにはイルミネーションが設けられ、おかげで夜間でも操作に困ることはなかった。
広さが自慢だったPassat Variantの伝統は、この新型にもしっかりと受け継がれている。旧型に対してホイールベースが50mm延びて2,840mmになり、後席に座ると前席に足が届かないほど広々としているし、ラゲッジルームも、後席を倒さなくても奥行きが110cm強と広く、後席を倒せば奥行き約180cmのほぼフラットなフロアが現れる。

加速も燃費も優秀な1.5 eTSI
今回の試乗車には、1.5L直列4気筒ガソリンターボと48Vマイルドハイブリッドを組み合わせたeTSIが搭載される。さっそく走り出すと、1.5 eTSIは期待どおりのパフォーマンスで、動き出しは軽い。低回転から十分なトルクを発揮するうえに、マイルドハイブリッドシステムのモーターが加速時にエンジンをアシストすることで、アクセルペダルを踏む右足の動きに素早くかつ力強く反応するのが、運転のしやすさにつながっているのだ。一方、アクセルペダルを深く踏み込めば、3000rpmあたりから5000rpmを超えるくらいまで勢いよくスピードを上げるので、高速道路への流入や追い越しといった場面で頼りになる。
マイルドハイブリッドシステムを搭載することで、アイドリングストップの状態からエンジンがスムーズに再始動するのもうれしいところ。走行中にアクセルペダルをオフにすると、条件が整えばエンジンを完全に停止して、無駄なガソリンの消費を防いでくれるのもその特徴のひとつだ。一方、アクセルペダルを軽く踏む状況では、4気筒のうち2気筒だけを働かせる「アクティブシリンダーマネージメント」機構が備わり、マイルドハイブリッドシステムとあいまって低燃費を実現するのもeTSIの魅力である。
実際、Passat eTSI Eleganceの燃費は、カタログ値がWLTCモードで17.4km/L、市街地モードのWLTC-Lで13.0km/L、郊外モードのWLTC-Mで17.6km/L、高速道路モードのWLTC-Hモーでが20.2km/Lであるのに対して、ACCを使って高速道路を約100km/hで巡航したときが23km/L強、比較的空いた一般道を丁寧なアクセルワークで走ったときが21km/L強となった。総平均燃費も約19km/Lとカタログ値を超え、1.5 eTSIの燃費の良さが確認できた。
オプションのDCC Proパッケージが装着されたこのクルマの走りは、路面によっては235/45R18タイヤが凹凸を拾うこともあるが、概ね快適な乗り心地を示し、走行時の挙動が落ち着いている。速度を上げるとサスペンションのしなやかな動きが際だち、高速で挙動もフラットで好ましい。
DCC Proパッケージにはプログレッシブステアリングが含まれていることもあって、ハンドリングには軽快さがあり、乗り心地とハンドリングのバランスは実に高い。R-Lineに比べて大人しいデザインだが、むしろそのほうが好みという人にはうれしい選択肢になるだろう。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)