フルモデルチェンジにより9代目に生まれ変わった「Passat」のなかから、TDIエンジンを搭載した人気モデル「Passat TDI 4MOTION R-Line」をチェックする。

モデルチェンジでさらに魅力的なデザインに
新型Passatは、フルモデルチェンジを機にステーションワゴンボディのみとなり、これまで「Passat Variant」と呼ばれてきたワゴンは、単にPassatと名乗ることになったのは既報のとおりだ。
そんな新型Passatのなかから、今回試乗したのは、2Lディーゼルターボの2.0 TDIを搭載するPassat TDI 4MOTION R-Lineである。2.0 TDIは、EA888 evo TDIと呼ばれる最新の2L直列4気筒直噴ディーゼルターボで、最高出力142kW(193ps)、最大トルク400Nm(40.8kgm)と、「Golf TDI」よりパワフルな仕様だ。排ガス中のNOxを低減するために、SCR触媒コンバーターを2個直列に配置した“ツインドージング”システムを採用しているのもこのTDIの特徴だ。これに7速DSGが組み合わされ、4WDの4MOTIONにより4輪を駆動する。
新型Passatのエクステリアは、細いラジエターグリルやシャープなヘッドライト、それらを結ぶLEDライトストリップを採用するフロントマスクは最新のGolfとのつながりを強く示しながら、Golfの上位モデルらしい品の良さを漂わせているし、スリムなLEDテールライトとそれを結ぶLEDストリップも実にスタイリッシュ。それでいて嫌みのない爽やかなデザインがフォルクスワーゲンらしいところだ。
一方、インテリアは、新型「Tiguan」に似た、最新のスタイルを採用している。すなわち、“庇(ひさし)”がないデジタルメーターの「Digital Cookpit Pro」や15インチの「Discover Pro Max」によりデジタル化を進めているのだ。センターコンソールからシフトレバーが消え、かわりにステアリングコラムの右側にステアリングコラムスイッチが設けられたのもTiguanと共通で、前後に回転させるなどして行うシフト操作もすぐに慣れ、使い勝手も良い。


自慢の広い室内は、新型でさらに磨きがかかった。ホイールベースが50mm延びて2,840mmになり、後席に座ると前席に足が届かないほど広々としているし、ラゲッジルームも、後席を倒さなくても奥行きが110cm強と広く、後席を倒せば奥行き約180cmのほぼフラットなフロアが現れる。ラゲッジルームをアレンジする各種アイテムが付属しているのもうれしい。

写真はPassat eTSI R-Line

写真はPassat eTSI R-Line

写真はPassat eTSI R-Line
新型Passatでちょっとうれしいのが、センターコンソールが深くなったおかげで、ここに車検証や取扱説明書、点検簿などがすっきり収納できること。一方、ちょっと残念なのが運転席の足元で、これまで右ハンドル車にはアクセルペダルの右側に右足がちょうど置けるスペースがあって、ACC使用時にはとても重宝していた。それが、新型Passatではなくなってしまったのだ。

写真はPassat eTSI Elegance

写真はPassat eTSI Elegance
最新の2.0 TDIは快適さが向上
さっそくPassat TDI 4MOTION R-Lineを走らせると、期待どおり、力強い加速が実に頼もしい。走り出した瞬間からトルクには余裕があり、軽快な加速を見せてくれるのだ。アクセルペダルの動きに対する反応も良好で、街中で加減速を繰り返すような場面でも即座に反応し、ストレスのないドライブが楽しめる。
高速走行時は100km/h、7速時のエンジン回転が1450rpm程度で、エンジン音は実に控えめ。低速で加速する場面でもエンジンの振動やノイズがほとんど気にならないレベルに抑え込まれていて、とても快適なのだ。
アクセルペダルを深く踏み込むと、2000rpmを超えたあたりからさらに力強さが増し、4500rpmあたりまでその勢いが続く。とはいえ、高速道路の合流や追い越しといった場面では3000rpm以下で十分に事足りるので、アクセルペダルを思い切り踏み込むことはあまりなく、そのぶんゆったりと運転できるのもTDIの魅力である。
気になる燃費だが、Passat TDI 4MOTION R-Lineのカタログ燃費は、WLTCモードが16.4km/L、市街地モードのWLTC-Lが12.2km/L、郊外モードのWLTC-Mが16.4km/L、高速道路モードのWLTC-Hモードが19.3km/L。これに対して試乗時の燃費は、ACCを使って高速道路を約100km/hで巡航したときが21.1km/L、比較的空いた一般道を丁寧なアクセルワークで走ったときが19.4km/Lをマーク。約250kmを走行した総平均燃費は16.7km/L(平均速度37km/h)で、カタログ値から期待される以上の低燃費が確認できた。
DCC Proの効果は?
新型Passatのハイライトのひとつに、アダプティブシャシーコントロール”DCC Pro”の採用が挙げられる。Passat TDI 4MOTION R-LineではDCC Proが標準装着され、おかげで、走り出した瞬間から乗り心地は穏やかでしっとりとした印象。スピードを上げてからの挙動も落ち着いていて、快適さとフラットな乗り心地を見事に両立している。
一方、スポーティなR-Lineにはスポーツサスペンションと235/40R19インチのスポーツタイヤが装着されるため、タイヤと路面とのコンタクトが硬めなのが気になるものの、車両重量が重いぶん、DCC Proが装着されたPassat eTSI R-Lineに比べると伝わるショックは穏やかだ。プログレッシブステアリングが装着されることもあって、ハンドリングには軽快さがあり、スポーティな走りを求める人にはぴったりだろう。

4MOTIONの搭載により、加速時の挙動は安定しきっており、また高速走行時の安定感もきわめて高い。そのうえ力強い加速と低燃費が自慢のTDIを搭載するPassat TDI 4MOTION R-Lineは、とくに長距離ドライブが多い人には打ってつけの一台だろう。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)