Golfシリーズの頂点に君臨するグランツーリスモ「Golf R」の最新版に試乗。マイナーチェンジでの進化は?

画像1: 【試乗記】Golf R Advance

Golf4 R32を起源とするRシリーズが進化

4代目Golfの時代に、3.2Lの6気筒「VR6」エンジンと4WDの「4MOTION」を組み合わせたスポーツモデルとして誕生した「Golf R32」。以降、Golfシリーズのトップグレードとして、Golfのスポーツイメージを牽引してきた。6代目Golfでは、エンジンのダウンサイジングにより2.0 TSIが搭載され、それにともないモデル名が「Golf R」に改められた。

その流れを汲むGolf8 Rがマイナーチェンジによりさらにスポーティさを強め、ついに日本上陸を果たした。

搭載される2.0 TSIエンジンは、マイナーチェンジ前に比べて最高出力が10kW(13ps)アップし、245kW(333ps)/5600〜6500rpmを発揮。最大トルクは従来と同じ420Nmとしながらも、発生回転域が2100〜5500rpmと、より高い回転域まで最大トルクが持続する特性となっている。これに7速DSGと4WDの4MOTIONが組み合わされ、ハッチバックでは0-100km/h加速は4.6秒を誇る。

マイナーチェンジ前と同様、「R-Performance トルクベクタリング」が搭載されるのもGolf Rの特徴のひとつ。エンジンのトルクをフロントとリヤアクスルに配分するだけでなく、リヤアクスルの左右のトルク配分を自在にコントロールし、コーナリング性能を高める「Rパフォーマンス トルクベクタリング」が標準で搭載される。その実現のために、リヤアクスルには2個の多板クラッチが搭載され、リヤの外輪により多くのトルクを配分することで、コーナリングしやすい状況を生み出す。

この4MOTIONに加えて、電子制御ディファレンシャルロック“XDS”やアダプティブシャシーコントロール“DCC”を、“Vehicle Dynamics Manager”が統合制御することで、優れたコーナリング性能を発揮するというのだ。

画像: Golf4 R32を起源とするRシリーズが進化

試乗車はGolf R Advance

このGolf8.5 Rには、「R」と「R Advance」の2グレードが設定され、今回試乗したのは後者のR Advanceだ。Golf R Advanceでは、装着されるタイヤが1インチアップの235/35R19タイヤになるとともに、鍛造アルミホイールの“Warmenau(ヴァルメナウ)”が装着されるのが見どころのひとつ。さらに、DCCとR専用電動ナパレザーシートが標準装着されるのも見逃せないポイントだ。

運転席のドアを開けると、R Advanceに標準装着のR専用電動ナパレザーシートが迎えてくれる。ヘッドレスト一体型のスポーツシートは、少し硬めの座り心地でドライバーを支えてくれるとともに、シートベンチレーションにより、寒い時期だけでなく夏の暑い時期でも快適なドライブを支えてくれるのがうれしいところだ。なお、前席の電動調節は運転席だけであり、助手席は手動になるのでご注意を!

マイナーチェンジよってコックピットのデザインが大きく変わったのは他のグレードと同様である。ダッシュボード中央に設置された12.9インチのタブレット型タッチパネルが大きくて見やすいうえに、直接アクセスできるメニューが増えたことで操作が向上している。また、モニター下部にあるエアコンの温度設定と音量調節用のタッチスライダー部分にイルミネーションが追加されたおかげで、夜間でもストレスなく使えるようになった。

一方、他のグレードとは異なり、このGolf Rはタッチスイッチ付きのステアリングホイールが装着されている。

ラゲッジルームは、通常のハッチバックが381L、GTIが374Lであるのに対して、R/R Advanceでは341Lと少し狭いが、それでも他のグレードと同等のスペースを確保している。他がテンパータイヤを搭載するのに対して、床下の収納部がないRではタイヤ修理キットが用意されているのも異なるところだ。

スポーツモードで走りたい

前置きはこのくらいにして、さっそく走らせることにしよう。ドライブモードは、マイナーチェンジ前が「コンフォート」「スポーツ」「レース」「カスタム」の4つだったのに対して、マイナーチェンジ後はこれに「エコ」が加わった。

まずは基本のコンフォートで発進する。マイナーチェンジ前は、アクセルペダルに対するエンジンの反応がやや鈍く、のんびりした印象を受けたコンフォートモードが、マイナーチェン後は、アクセルペダルを踏み始めた瞬間こそすこし反応が鈍いものの、ふだん運転するぶんには十分受け入れられる特性に改められている。

とはいえ、2.0 TSIエンジンの魅力を楽しむならスポーツモードがお勧めで、微妙なアクセルコントロールが得意な人には、ターボラグを感じさせないレスポンスの良さと、低回転から豊かなトルクにより、ストレスのない運転が楽しめるのがうれしい。

巡行中にアクセルペダルを軽く踏み増すと、基本的にはそのトルクがほぼ前輪に伝えられる。一方、アクセルペダルを思い切り踏み込むと、後輪にもトルクを伝えることで、安定した加速を実現するのが4MOTIONの有利なところだ。2.0 TSIエンジンは4000rpmの手前あたりから一段と力強さを増し、5000rpmを超えるとさらに勢いづいてレッドゾーンまで駆け上がる。その加速は、まさに痛快そのものである。

アンダーステア知らずのハンドリングと快適な乗り心地を両立

スポーツモードでは明らかに硬めの乗り心地を示していたGolf Rだが、コンフォートモードを選ぶと、乗り心地はやや硬めとはいえ、路面からのショックを軽く受け流すようになり、それでいて姿勢変化を抑えた落ち着いた印象に変わる。マイナーチェンジ前に比べて快適さが向上したのは、サスペンションやDCCの制御がブラッシュアップされたことと、軽量の鍛造アルミホイールが効いているからに違いない。バネ下の動きもしなやかで、足まわりにかぎれば、硬めでも快適な乗り心地を誇るGolf R Advanceが、Golf8.5のなかではベストの味つけで、その仕上がりに感服した。

ちなみに、ドライビングモードでカスタムを選び、ドライブをコンフォート、DCCをコンフォートから2つスポーツ寄りに設定するのが私の好みだ。

画像1: アンダーステア知らずのハンドリングと快適な乗り心地を両立

ハンドリング性能の高さもこのクルマの大きな魅力だ。ワインディングロードで走らせると、R-Performance トルクベクタリングを搭載するGolf R Advanceアンダーステア知らず。コーナーに向かってステアリングを切ると、鋭さこそないものの、ノーズがしっかりとインに向かい、コーナーの途中でアクセルペダルを踏み込むと、リヤ外側のトルクを厚くしてアンダーステアを抑え、狙いどおりのラインをトレースしてくれるのだ。そのときの接地感はきわめて高く、安心してアクセルペダルが踏めるのが実に頼もしい。

さらにアクセルペダルを踏み増すと、リヤが外側に振り出すような感覚をともないながら、クルマがコーナーのインに向けて切り込んでいくのわかる。Golf GTIがフロントから切れ込んでいくのとは対照的だ。

こんなキャラクターだから、ワインディングロードを駆け抜けるのが実に楽しい。残念ながら今回はサーキットを走る機会がなかったが、いつかそのチャンスが訪れることを願う。

画像2: アンダーステア知らずのハンドリングと快適な乗り心地を両立

ということで、速さ、ハンドリング、乗り心地のすべてを高いレベルで両立するGolf R Advance。街乗りからスポーツドライビングまでこれ一台で味わい尽くせるオールマイティさを考えれば、700万円超えのプライスも十分納得がいくのではないだろうか。

(Text & Photos by Satoshi Ubukata)

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