ハッチバックとともにマイナーチェンジした「Golf Variant」のなかから、充実した装備が自慢の「Golf Variant eTSI Style」を引っ張りだし、週末を過ごすことにした。

3代目Golfの時代にラインアップに追加されたステーションワゴンのGolf Variant。Golf7 Variantまではハッチバックと同じホイールベースだったのに対して、Golf8 Variantではハッチバックよりもホイールベースが50mm長くなった。これにより、ハッチバックでも余裕ある後席のスペースはさらに広がり、前席と膝のあいだは20cm強と、脚が組めるほどのスペースが確保されている。
ラゲッジルームは、後席を使用する状態でも100cm強の奥行きがあり、さらに後席を倒せば160cmを超える広さに拡大。ラゲッジスペースのレバーを操作するだけで簡単に後席を倒すことができたり、使用しないときにラゲッジネットパーティションやスライディングカバーを床下に収納できたりするのも便利である。フロアは2段階で高さの調整が可能で、フロアボードを上の段に設置すれば、リヤの開口部とラゲッジのフロアの段差がなくなり、荷物の積み下ろしが楽になる。また、この状態で後席を倒せばフラットなフロアが現れるので、大きな荷物を積むのに適している。
さらに、オプションのテクノロジーパッケージを選択すればパワーテールゲートが装着されるのもうれしいところだ。



こうした特徴を持つGolf Variantがマイナーチェンジによりさらに進化。ハッチバック同様、より直線的なデザインになったヘッドライトや新デザインのテールライトなどを採用したことに加えて、フロントグリルにイルミネーション付きのVWエンブレムを初めて採用。一方、室内は、ダッシュボード中央のタッチパネルがこれまでよりひとまわり大きな12.9インチとなり、操作性の向上が図られるなど、見どころは盛りだくさんである。
最新版Golf Variantの概要は上のニュースをご一読いただくとして、今回試乗したのは充実した装備が自慢のGolf Variant eTSI Styleだ。このグレードは、1.5L直列4気筒直噴ガソリンターボエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「1.5 eTSI」のなかでも、高出力タイプの110kW(150ps)の1.5 TSIエンジンを搭載する仕様。同じパワートレインを採用する「Golf Variant eTSI R-Line」がスポーティさを前面に押し出しているのに対して、このGolf Variant eTSI Styleは快適さを優先させた仕上がりとなるのが異なるところだ。
さっそくマイクロフリースのスポーツコンフォートシートに座ると、クッションの厚みが感じ取れる快適な座り心地。前席のシートヒーターやステアリングヒーターのおかげで、寒い日でもすぐに暖かくなるのもうれしい。
他のグレード同様、コックピットの眺めは大きく変わり、12.9インチのタブレット型タッチパネルは大きくて見やすいうえに、直接アクセスできるメニューが増えたことで操作が向上している。また、モニター下部にあるエアコンの温度設定と音量調節用のタッチスライダー部分にイルミネーションが追加されたおかげで、夜間でもストレスなく使えるようになった。



センターコンソールにあるスタートボタンを押すと、一瞬遅れてエンジンが始動した。マイナーチェンジ前はスターターによりエンジンを始動していたが、マイナーチェンジ後はスターターを廃止し、マイルドハイブリッドシステムを構成するスターター・ジェネレータモーターがその役目を果たすということで、アイドリングストップからのエンジン再始動と同様、滑らかさが際だっている。
まずは一般道をドライブすると、110kWの1.5 eTSIはこれまで同様走り出しから力強く、実に活発な印象だ。前述のスターター・ジェネレータモーターが加速時にエンジンをアシストするおかげで、低回転でもアクセルペダルの動きに素早く反応してくれるのだ。
発進から40km/hあたりまでは加速時のエンジン音が耳につくこともあるが、さらにスピードが上がれば気にならなくなる。やや大きな加速が必要な場面では、2000rpmを超えたあたりから力強さを増し、さらに3000rpm半ばからは勢いを増していく。
1.5Lでありながら余裕ある加速性能を発揮する一方、その低燃費にはびっくり。マイルドハイブリッドシステムが搭載されることで、走行中にアクセルペダルから足を離すと、エンジンを完全停止して燃料の消費を抑える「エココースティング機能」が頻繁に働いて燃料をセーブ。一方、アクセルペダルを軽く踏む状況では、4気筒のうち2気筒だけを働かせる「アクティブシリンダーマネージメント」機構により、こちらも低燃費に貢献している。
Golf Variant eTSI Styleのカタログ燃費は、WLTCモードが18.3km/L、市街地モードのWLTC-Lが13.7km/L、郊外モードのWLTC-Mが18.6km/L、高速道路モードのWLTC-Hモードが21.0km/L。これに対して、ACCを使って高速道路を約100km/hで巡航したときが23.4km/L、比較的空いた一般道を丁寧なアクセルワークで走ったときが23.3km/Lをマーク。Golf Variant eTSI Styleを借りだした週末は、栃木県のモビリティリゾートもてぎで取材があり、その際、サーキットとホテルを往復するなどして一般道を約245km走行したときが19.1km/L。一般道と高速を含む全行程470kmの総平均は18.2km/Lで、その燃費の良さにはあらためて驚かされた。

さらにこのGolf Variant eTSI Styleは、乗り心地の良さも魅力だ。フォルクスワーゲン車らしい多少硬めに味付けられたサスペンションのおかげで、落ち着いた安定感のある走り示す一方、乗り心地はマイルドで快適。目地段差を通過する際のマナーもまずまずで、高速道路の挙動もフラットさが際だっている。これには225/45R17サイズのタイヤに加えて、ハッチバックよりも長いホイールベースが貢献しているのだろう。
R-Lineがクイックなステアリングレシオのプログレッシブステアリングを搭載するのに対して、このStyleには装着されないためにスポーティな演出こそないが、R-Line同様、マルチリンクリヤサスペンションが装着されるStyleは、ワインディングロードを走行する場面などでは素直で軽快なハンドリングを見せ、思いのほかドライブが楽しい。個人的にはR-LineよりもこのStyleの乗り味のほう断然好ましいと思う。

マイルドハイブリッドシステム搭載により、フットブレーキと回生ブレーキを協調制御するためか、フットブレーキを踏んだときの感触にリニアさが欠けるのが気になったものの、加速、燃費、乗り味のバランスが良く、クルマとしての満足度が実に高いGolf Variant eTSI Style。快適なドライブを楽しみたい人にはお勧めのグレードである。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)