マイナーチェンジした「Golf」のなかでも、とりわけスポーティなデザインと走りが自慢の「Golf eTSI R-Line」に試乗し、その実力を確かめる。

最新版Golfの概要は下のニュースをご一読いただくとして、今回試乗したのは、「GTI」や「R」以外の標準モデルのなかでは最上級グレードとなるGolf eTSI R-Lineだ。
110kW(150ps)の1.5L直列4気筒直噴ガソリンターボエンジンと、48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた1.5 eTSIを搭載するグレードにはGolf eTSI R-Lineと「Golf eTSI Style」があるが、よりスポーティな性格が与えられているのがこのGolf eTSI R-Lineということになる。
たとえば、Golf eTSI R-LineにはGTIやRを連想させる開口部の大きいフロントバンパーが搭載されるとともに、“グラナディアブラックメタリック”以外のボディカラーを選んだ場合、ルーフ部分がソリッドブラックに彩られ、また18インチホイールが標準で装着されるなど、スポーティなデザインが際だっている。
さらに、R-Line専用スポーツサスペンションや、プログレッシブステアリングが搭載されるのもR-Lineの特徴である。

一方、室内では、ファブリック&マイクロフリースのトップスポーツシートが装着され、ルーフライニングがブラックになるなど、スポーティでシックな雰囲気に仕立てあげられている。
Golf8導入当初のR-Lineはステアリングホイールのスイッチがタッチ式だったが、フェイスリフトを機に物理スイッチに変更されている。私自身はタッチスイッチに不満はなかったが、使いにくいという声の応えて全グレードで物理スイッチが搭載されたのだ。
他のグレード同様、タッチディスプレイが12.9インチのタブレット型に変更されたのもマイナーチェンジ版の見どころだ。サイズが拡大されたうえに、従来よりも手前に配置されたぶん迫力を増している。
ディスプレイのサイズが大きくなったぶん、直接アクセスできるメニューが増えたことで操作はよりシンプルになったことに加えて、モニター下部にはエアコンの温度設定と音量調節用のタッチスライダー部分にイルミネーションが追加されたことで、夜間でもストレスなく使えるのは、Golf8を所有する私にはうらやましいかぎりである。


そんなことを思いながら、まずは一般道を走らせると、動き出しから力強い加速に感心する。Golf eTSI Activeの85kW(116ps)仕様よりもさらに活発で、48Vマイルドハイブリッドシステムのモーターが加速時にエンジンをアシストするおかげで、低回転でもアクセルペダルの動きに対する反応が素早く、意のままに加速できるのが実に頼もしい。
一方、ここぞという場面でアクセルペダルを強く踏み込めば、3000rpm半ばからさらに力強さを増し、その勢いはレブリミットまで続く。
走行中にアクセルペダルから足を離すと、エンジンを完全停止して燃料の消費を抑える「エココースティング機能」が頻繁に働く。一方、アクセルペダルを軽く踏む状況では、4気筒のうち2気筒だけを働かせる「アクティブシリンダーマネージメント」機構が備わる。この2つにより低燃費を実現するのもeTSIの魅力である。
2気筒運転と4気筒運転が切り替わったことはいまや体感することは困難。しかも、以前は2気筒運転時に「2シリンダーモード」の表示が現れたが、最新版ではこの表示が廃止されたので、もはや運転モードの切り替えを意識することはない。
48Vマイルドハイブリッドシステムの搭載により、アイドリングストップの状態からエンジンがスムーズに再始動するのもうれしいところだ。一方、フットブレーキと回生ブレーキを協調制御するためか、フットブレーキを踏んだときの感触にリニアさが欠けることがある。マイナーチェンジでかなり改善されたものの、完全に解消されていないのが惜しいところだ。

Golf eTSI R-Lineの走りは、18インチタイヤとR-Line専用スポーツサスペンションの組み合わせにより硬めの乗り心地を示すうえ、路面のざらつきた感触を伝えてくる。荒れた路面ではややショックを伝えがちなのも気になった。
一方、マルチリンクリヤサスペンションが装着されるGolf eTSI R-Lineは、クイックなステアリングレシオのプログレッシブステアリングとあいまって、ハンドリングは軽快さが際立ち、コーナーを駆け抜けるのがとても楽しい。高速走行時の直進性も優秀で、落ち着いた挙動とあいまって、ロングドライブには打ってつけである。

前述のとおり、110kW(150ps)の1.5 eTSIを搭載するグレードとしてはGolf eTSI Styleという選択肢も用意されており、スポーティさで選べばGolf eTSI R-Line、快適さを重視すればGolf eTSI Styleがお勧め。今回は限られた時間での試乗だったため、今後あらためて試乗車を借りだし、eTSIの燃費をチェックしたいと思う。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)