ホットハッチの代名詞であるフォルクスワーゲンのコンパクトスポーツ「Golf GTI」がマイナーチェンジ。その日本仕様をついに試乗できる日がやってきた。
2025.3.3 追記
情報を追加し、【ミニ試乗記】から【試乗記】に変更しました。

フォルクスワーゲンを代表するモデル「Golf」のなかでも、ひときわ注目を集めるのがスポーツモデルの「Golf GTI」だ。他のグレード同様、このGolf GTIもマイナーチェンジにより内外装をリニューアルし、日本でも2025年1月に販売が開始されている。
いわゆる“Golf8.5”は、エクステリアではより直線的なデザインになったヘッドライトや新デザインのテールライトなどを採用したことに加えて、フロントグリルにイルミネーション付きのVWエンブレムを初めて採用するなどして、これまで以上に洗練されたデザインに仕上げられたのが特徴だ。
さらにこのGTIでは、フロントスカートのデザインが変更され、これまで下部が直線的だったのに対して、マイナーチェンジ後はフォルクスワーゲンのデザイナーが“ホッケースティック”と呼ぶ形状とすることで、ダイナミックな印象を強めている。X字に配置されたフォグライトとともに、ひとめでGolf8.5 GTIとわかる表情を手に入れることになったのだ。
細かいところでは、フェイスリフト以前はフロントフェンダーにあった“GTI”のバッジが廃止され、かわりにフロントドアにGTIの3文字が移されている。これによって、サイドビューがよりシンプルでスタイリッシュになったのも見逃せないところだ。
現時点でボディカラーは9色が用意され、“グラナディアブラックメタリック”以外のボディカラーを選んだ場合、ルーフ部分がソリッドブラックに彩られるのもGolf8.5 GTIの特徴のひとつである。

Golf8 GTI(写真左)とGolf8.5 GTI(写真右)

Golf8 GTI(写真左)とGolf8.5 GTI(写真右)
一方、インテリアは、12.9インチに拡大されたタブレット型のタッチディスプレイが、従来よりも手前に配置され、迫力を増している。他のグレードにもいえることだが、ディスプレイのサイズが大きくなったぶん、直接アクセスできるメニューが増えたことで操作はよりシンプルに。モニター下部にはエアコンの温度設定と音量調節用のタッチスライダーが残っているが、以前はイルミネーションがなく、夜間の操作がしにくかったのに対して、この部分にイルミネーションが追加されたことで夜間でもストレスなく使えるのは、Golf8のオーナーにとってはうらやましいかぎりだ。
ステアリングホイールは、Golf8 GTIではタッチ式のスイッチが使われていたが、フェイスリフトを機に物理スイッチに変更されている。私自身はタッチスイッチに不満はなかったが、使いにくいという声に応えたものだ。


デザイン以外の変更としては、搭載される2L直列4気筒直噴ガソリンターボの2.0 TSIエンジンがパワーアップ。従来は最高出力:180kW(245ps)/5000〜6500rpm、最大トルク:370Nm/1600〜4300rpmだったのが、マイナーチェンジ後はそれぞれ195kW(265ps)/5250〜6500rpm、370Nm/1600〜4500rpmと、最高出力が15kW(20ps)強化されている。

Golf8.5 GTIの足元は、標準で225/40R18タイヤを装着する一方、オプションの“DCCパッケージ”を選択した場合には1インチアップの235/35R19となるのは従来どおり。今回はDCCパッケージが装着された試乗車を都内および箱根などでテストすることができた。

さっそくドライビングプロファイル機能で“コンフォート”を選んで走りだす。やや硬めの乗り心地を示すGolf GTIだが、可変ダンパーのDCCが良い働きをし、十分な快適さを確保しているのには感心する。しかも、ふだん私が乗るDCC付きのGolf8 GTIと比べ、サスペンションの動きがしなやかさを増し、目地段差を超えたときのショックも巧みにかわすなど、これまで以上に洗練された印象なのだ。
このあたりに関しては、フォルクスワーゲンの資料に何も記述がないが、モデルイヤーが変わるごとに細かいランニングチェンジを欠かさない同社だけに、マイナーチェンジともなると改善の度合いが大きいのも納得がいく。

一方、改良された2.0 TSIエンジンについては、低回転から余裕あるトルクを発揮するとともに、アクセルペダルの動きに対する反応も良好。しかも、マイナーチェンジ前に比べて、反応がより素早くなった印象である。
アクセルペダルを深く踏み込むと、2000rpm半ばから力強さを増し、6000rpm超えまで勢いが続く。こちらもマイナーチェンジ前に比べると、より高回転まで伸びのある加速が楽しめる感覚で、Golf8 GTIのオーナーとしてはうらやましいかぎりだ。

ワインディングロードではその本領を発揮。電子制御油圧多板クラッチ式のフロントディファレンシャルが標準で搭載されるGolf GTIは、ターンインこそとりたてて鋭い動きはないものの、コーナー途中から出口に向けてアクセルペダルを踏んでやると、ノーズが切れ込んでいく感覚をともないながら、アンダーステア知らずのコーナリングが楽しめる。その際のタイヤの接地感も高く、安心してアクセルペダルを踏めるのが実に頼もしい。

高速道路では直進安定性も高く、乗り心地も十分な快適さを確保している。ちなみに、100km/h巡航時、7速のエンジン回転数は約1600rpmで、ACCを使った100km/h巡航燃費は20.5km/Lをマーク。空いた一般道では13.8km/L、一般道で渋滞に巻き込まれたときは10.0km/L。約550kmの試乗の総平均燃費は13.0km/Lで、そのパフォーマンスを考えればなかなか優秀といえる。
デザイン、走りともに確実にアップデートされたGolf8.5 GTI。ワインディングロードはもちろんのこと、ふだんのなにげないドライブでも運転の楽しさに溢れているGTIは、クルマ好きにはかけがえのない存在である。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Satoshi Ubukata, Volkswagen)