フルモデルチェンジにより3代目に進化した「Tiguan」のなかから、1.5 eTSIを搭載する「Tiguan eTSI Elegance」を試乗。R-Lineとの違いをチェックする。
2019年以降、世界で最も売れているフォルクスワーゲンであるTiguanが3代目に生まれ変わった。最新のMQB evoアーキテクチャーを採用するとともに、従来に比べてボンネットの位置を高くすることでSUVらしさを強める一方、15インチの大型タッチディスプレイを用いたインフォテインメントシステムのMIB4や、アダプティブシャシーコントロール“DCC Pro”、マイルドハイブリッドシステムなどの採用により、より魅力的なクルマに進化したのが特徴である。
モデル概要は上記のニュースをご一読いただくとして、新型Tiguanには2種類のパワートレインそれぞれに3種類のグレードが設定されている。エントリーグレードの「Active」、“IQ.LIGHT HD”や運転席/助手席のシートマッサージ機能を標準装着する「Elegance」、Elegance同様に装備が充実し、さらにスポーティな内外装を備えた「R-Line」という内容だ。
その中から、今回は1.5 eTSIを搭載する「Tiguan eTSI Elegance」を試した。
フルモデルチェンジにより、大きく変わったのがコックピットのデザイン。デジタルメーターの「Digital Cookpit Pro」が装着されるとともに、隣接する15インチの「Discover Pro Max」が大きく、見やすいのがうれしいところだ。
センターコンソールからシフトレバーが消え、かわりにステアリングコラムの右側にステアリングコラムスイッチが設けられたのも新しいところで、これを前後に回転させるなどして行うシフト操作は、慣れると従来のシフトレバーよりも使いやすい。一方、ステアリングコラム左のウインカーレバーにはワイパーのスイッチが統合され、これまでとは使い勝手が違うだけに、はじめのうちはどう操作したらよいのか戸惑うこともあった。
パワートレインは、48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載する110kWの1.5 eTSIで、7速DSGとの組み合わせで前輪を駆動する。
1.5 eTSIの動き出しは実に軽快! もともと低回転からトルク十分な1.5 TSIに加えて、マイルドハイブリッドシステムのモーターが加速時にエンジンをアシストすることで、素早く力強く反応するのも、運転のしやすさにつながっている。さほどアクセルペダルを踏み込まなくても上り坂を進むのも頼もしいかぎりだ。一方、アクセルペダルを深く踏み込めば、3000rpmあたりから5000rpmを超えるくらいまで力強い加速を見せ、高速道路への流入や追い越しといった場面で困ることはなかった。
マイルドハイブリッドシステムを搭載する1.5 eTSIは、走行中にアクセルペダルをオフにすると、条件が整えばエンジンが完全に停止して、無駄なガソリンの消費を防いでくれる。さらに、低負荷時に2気筒運転を行うアクティブシリンダーマネージメント(ACT)なども手伝い、低燃費が期待できる。実際、高速道路をACCを使ってほぼ100km/h巡航した際に20.7km/Lをマーク。都内の一般道でも10km/Lを超え、郊外なら15km/L以上を記録するなど、1.5 eTSIの低燃費には驚かされる。
マイルドハイブリッドシステムにより、アイドリングストップの状態からエンジンがスムーズに再始動するのもうれしいところだ。一方、先行車に近づいた状況でアクセルをオフする場面でもエンジンが停止してコースティング(惰力走行)を続けるが、こういうときにはエンジンを再始動してエンジンブレーキをかけてくれるほうが、車間距離を維持するうえでは助かるので、ぜひともそうした制御を盛り込んでほしいものだ。なお、コースティング中にステアリングホイールの左のパドルを操作すれば、エンジンが再始動してエンジンブレーキを使うことが可能だ。
走りに関する部分では、Tiguan eTSI R-Lineでは255/40R20タイヤとDCC Proが装着されるのに対して、Tiguan eTSI Eleganceでは2インチダウンの235/5R18が装着される一方、DCC Proは装着されず、オプションとしても用意されないのが異なるところだ。
Tiguan eTSI Eleganceの挙動は、100km/h以下の速度域であれば前後左右の揺れを抑えた安定感のある走りを見せてくれる。そのぶん乗り心地はやや硬めで、Hankook Ventus evo SUVが装着された試乗車では低速域でゴロゴロとした感触が気になることも。その点、DCC Proが装着されるTiguan eTSI R-Lineはワンランク上の快適さで、個人的はTiguan eTSI R-Lineのほうが好ましいと思った。
とはいえ、SUVとしては十分快適で軽快な走りを見せるTiguan eTSI Elegance。SUVらしからぬ低燃費も魅力で、4WDにこだわらない人にとっては魅力的な選択肢といえそうだ。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)