「ID.Buzz」のロングホイールベース仕様2グレードにドイツで試乗。室内の広さや走りをチェックする。

画像1: ID.Buzz Pro long wheelbase(左)ID.Buzz GTX long wheelbase(右)

ID.Buzz Pro long wheelbase(左)ID.Buzz GTX long wheelbase(右)

フォルクスワーゲン ジャパンでは、“ワーゲンバス”の再来として注目を集めているEVミニバン「ID.Buzz」を2025年以降に導入する予定で準備を進めている。ID.Buzzは、フォルクスワーゲン グループが開発したEV専用プラットフォーム「MEB」を用いた「ID.シリーズ」の一員で、ヨーロッパでは2022年11月に販売がスタート。日本でのラインアップは現時点で未発表だが、今回ドイツで、ホイールベースと全長がともに拡大されたロングホイールベース仕様の2台を試乗する機会を得た。それが、RWDの「ID.Buzz Pro long wheelbase」と4WDスポーツの「ID.Buzz GTX long wheelbase」である。

画像2: ID.Buzz Pro long wheelbase(左)ID.Buzz GTX long wheelbase(右)

ID.Buzz Pro long wheelbase(左)ID.Buzz GTX long wheelbase(右)

標準ホイールベースのID.Buzzが全長4712×全幅1985×全高1927mm、ホイールベース2989mmであるのに対して、ID.Buzz Pro long wheelbaseは全長4962×全幅1985×全高1924mm、ホイールベース3239mmと、全長とホイールベースがともに250mm拡大される。

ID.Buzz Pro long wheelbaseには86kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーと210kWの電気モーターが搭載され、後輪を駆動。欧州のWLTPモードで485kmの航続距離を誇る。

一方、スポーツモデルのID.Buzz GTX long wheelbaseは、システム出力250kW(340ps)を発揮する2基のモーターにより4WDを構成。航続距離は475km(WLTPモード)である。

ID.Buzz Pro long wheelbaseは日本で人気の「トヨタ・アルファード」とほぼ同じ全長であるが、全幅はさらに135mm広く、その大きさに圧倒される。狭い駐車場や洗車機に入れるときにはかなり気をつかったが、その一方でワーゲンバスを思わせるフロントマスクは威圧感とは無縁で、見ているだけで楽しい気持ちになれるのが、このクルマの魅力だと思った。

ID.Buzz Pro long wheelbaseの明るい室内も、このクルマの印象をさらに良くしている。コックピットは開放的でデザインは実にシンプル。それでいてダッシュボードのつくりなどは「ID.4」よりも上質な仕上がりだ。ステアリングコラムの上には小振りのメーターパネルが備わり、またステアリングコラムの右側にシフトスイッチが配置されるのは、最新のID.シリーズと同様である。

画像3: ID.Buzz Pro long wheelbase

ID.Buzz Pro long wheelbase

ロングホイールベース版ではシートが3列になり、2-3-2の7人乗りと2-2-2の6人乗りが用意される。今回は6人乗りに試乗したが、2列目、3列目ともにスライドが可能で、2列目を一番後ろに下げても3列目には十分余裕があり、大人6名乗車でも窮屈な思いをしないほど広々とした空間が確保されている。

ラゲッジスペースは、3列目を一番後ろに下げても奥行き40cmを確保する一方、2列目と3列を倒せば奥行き240cm強のスペースになり、自転車など簡単に飲み込む広さである。

ちなみに、試乗車に装着されている大型のパノラマルーフは開放的な雰囲気をさらに演出するとともに、内蔵された液晶フィルムによりスイッチひとつで透明と半透明が切り替えられるというすぐれもの。「ID.4 Pro」オーナーの私としては、なんともうらやましい装備である。

まずはRWDのID.Buzz Pro long wheelbaseから試乗をスタート。これだけボディが大きいと動き出しは緩慢かと思っていたら、そこは低回転から大トルクを発生するEVだけに、むしろ力強く思えるほど余裕がある。

その後、一般道では十分な加速が楽しめ、また、アウトバーンでも本線の合流する場面で力不足を感じることはなかった。ただ、120km/hを超えたあたりからは加速がやや鈍ってくる。

シフトスイッチでBモードを選び、強めの回生ブレーキを効かせるようにすると、通常の走行ならフットブレーキをあまり使わずに済む一方、高速からのブレーキでは、車両重量がかさむぶん、想定よりも減速せず、フットブレーキを強めに踏んでやる必要があった。

感心したのはその乗り心地。ボディの低い位置に重たいバッテリーを積むEVだけに、落ち着いた挙動を示すのは想像していたが、このID.Buzz Pro long wheelbaseの場合、乗り心地は実にマイルドで、しかも高速走行時のフラット感も抜群! DCC(アダプティブシャシーブログラム)なしで、この乗り心地は驚くばかりである。

画像7: ID.Buzz Pro long wheelbase

ID.Buzz Pro long wheelbase

ID.Buzz Pro long wheelbaseからID.Buzz GTX long wheelbaseに乗り換えると、さらに加速が力強くなるとともに、ID.Buzz Pro long wheelbaseで気になった高速域での加速の伸び悩みが解消され、スポーティさが際だつ印象に。RWDのID.Buzz Pro long wheelbaseに比べ、高速時の直進安定性がさらに良くなり、これならアウトバーンを飛ばすのに好都合だ。

一方、乗り心地に関しては、モーターがパワフルなぶん、それに見合うよう足まわりのセッティングが硬めで、心地よさではID.Buzz Pro long wheelbaseに一歩及ばない。それでも、ハイスピードで長距離を移動した人や、降雪地域のユーザーにとっては、実に魅力的な一台といえるだろう。

画像3: ID.Buzz GTX long wheelbase

ID.Buzz GTX long wheelbase

短期間の試乗だったが、見るからに楽しげなエクステリアデザイン、シンプルで心地よい室内、必要十分なパワー、快適な乗り心地などにより、すっかり気に入ってしまったID.Buzz。東京で使うには大きいかなぁと思いつつも、こんなクルマと一緒に、いろいろな場所に出かけたいと思わせる魅力がID.Buzzには詰まっている。

乗る人も見る人も楽しくさせてくれるID.Buzzは、いまいちばんフォルクスワーゲンらしいクルマといえるのかもしれない。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Volkswagen Japan)

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