公道を走ることができるオフロード Beetle。ドイツの Beetleオーナーが、1300をBaja Bugに改造した。このキットのおかげで、 Beetleはオフロードレースに参加できる!クラシック オブ ザ デイ。

画像: 【Auto Bild】VW Beetleにはこんなバージョンもあったの知ってましたか? VW TYPE-1 BAJA Bug物語

ヴォルフスブルクのヨハネス クルグが、ノーマルの「1300 Beetle」を壮大な「VW Baja Bug」に改造した!「Baja Bug」とは、砂漠レース用に地上高を高めた「オフロード Beetle」である。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

1960年代末、最初の「Baja Bug」がカリフォルニアを駆け抜けた。今日に至るまで、メキシコ北部で開催される悪名高い「Baja1000レース」で使用されている。

画像: Baja Bugのエンジンはカバーされていない。冷却効果を高めるためだ。

Baja Bugのエンジンはカバーされていない。冷却効果を高めるためだ。

この「Baja Bug」は67年型「VW Beetle」にコンバージョンキット(hazard streaker kit)を装着したものだ。ピルマゼンスの「Beetle」メカニックであるクルグは、67年型「VW Beetle」を「Baja Bug」のベースとして使用した。フロントエンドに損傷があり、ノーズはへこんでいた。

元々、リヤには40馬力の1300ボクサーエンジンが搭載されていた。クルグはこれを1500cc、44馬力のエンジンに交換した。やや大きめの排気量は、大径ホイールを動かすのに役立つ。さらにパワーアップすると、別のブレーキが必要になる。

フロントとリヤのアクスルは「VW TYPE181」のもので、「Beetle」のアクスルと同じ方法でボルト留めされているが、最低地上高は15cmも高い。トーションバーサスペンションもオリジナルだ。

改造には、クルグが幸運にも見つけた珍しいコンバージョンキットを使用した。クルグは毎日、どんな天候でも「Bug」を使うことができ、このユニークなクルマで買い物やジムに行くことができる。この「 Beetle」でオフロードを走ったこともある。

画像: Baja Bugのステアリングを握るヨハネス クルグ。

Baja Bugのステアリングを握るヨハネス クルグ。

Baja Bugへの改造は特に複雑ではない

熟練したメカニックが「Baja Bug」に改造するには、少なくとも6カ月はかかる。フロントとリヤのマッドガード、トランク、ボンネット、サイドパネルを取り外し、GRP製に交換する。スペアホイールラックも取り外される。そのため、ノーズは「Beetle」に比べておよそ50センチ短くなった。

エンジンは覆われていない。これは、メキシコの砂漠の酷暑の中で冷却効果を高めるためである。ボディには乗員を保護する鋼管製のバーまたはケージがあり、オプションでフロントとリヤに2つずつ、スナウトとエンジンを固定する。側面はさらに鋼管で補強されている。

「 Beetle」にはトーションバーサスペンションが装備されているため、最低地上高を簡単に上げることができる。長めのショックアブソーバーと、それなりの直径を持つオフロードタイヤがその役割を果たす。それでも不十分な場合は、トーションバーサスペンションをスプリングストラットに置き換えることもできる。

画像: このようなコンバージョンキットを手に入れることは、もはや不可能である。

このようなコンバージョンキットを手に入れることは、もはや不可能である。

アメリカでは、「Baja Bug」に改造される「Beetle」も少なくなってきている。また、ハイパワーエンジンを搭載したチューブフレームレーサーやプラスチック製の Beetleシェルの方が、むしろ競争力がある。

完成車はリオデジャネイロの「Baja Bug Brasil」から入手できる。しかし、ドイツでは、テュフ(TÜV)認定でレストアされた「Baja Bug」を入手できる。コンバージョンにはドイツの「ハザードストリーカーキット(hazard streaker kit)」を使用しなければならないが、実はこれはもう入手できない。

完成した「Bug」を登録する場合、コンバージョンを書類に記録しなければならない。これは通常、ヨーロッパの書類の場合はそうだが、アメリカの書類の場合はそうではない。

大林晃平: フォルクスワーゲンと言えば今やゴルフとかポロであるが、私が小学校時代はとにかくフォルクスワーゲンといえば、この Beetleだった。その頃は輸入車も珍しかった時代だったが、良家のガレージやお医者さんのガレージには Beetleが止まっていることが多く、ヤナセのステッカーがきちんと貼られてることと、フォルクスワーゲンの「VW」がかたどられた、オレンジやグリーンのスケルトンプラスチックが付いたフェンダーポール、通称「へたくそ棒」がバンパーの先っちょに起立していたものである。

小学校時代、一番かわいいと評判だった良家のお嬢様であられた「まややん」のおうちもブルーのフォルクスワーゲンで、とても僕などは彼女に話しかけることはもちろん、半径5m以内に近寄ることなどとてもできなかったから、たまに小学校にお母様の運転するフォルクスワーゲンで通学される姿を、友人のはるっぺと指をくわえながら遠巻きに見ていたものである。

そんな、まややんのお母様がご覧になったら「お下劣」の一言で終わってしまうような一台が、今回のBaja Bugで、おおよそ良家子女のご家庭のお車に選ばれるようなフォルクスワーゲンではないことは一目瞭然である。そしてこのような改造フォルクスワーゲンは一時期、カリフォルニアあたりに無数に走っていたが、いつのころからかマンハッタンビーチにもサンタモニカにもカブトムシは見かけなくなり、今や大きな恐竜のようなSUVばかりが跳梁跋扈するようになってしまった。そしてそんなでかいSUVからはどれを聴いても同じにしか思えないラップミュージックが、ドンツクドンツク流れていたりする。

ハワイから西海岸に持ちこまれたサーフィン文化やUCLAのTシャツはどこかに消え去り、フォルクスワーゲン Beetleそのものも街角からどこかへと消えてしまった。そういえばその頃はフォルクスワーゲン Beetleを題材(主人公?)にした「ラブバック」という映画さえディズニーによって作られていたのだから、いかに Beetleが彼の地で愛されていたかわかるだろう。銀幕からも Beetleが消えてしまったなぁ・・・と思っていたら、この7月に公開される『レディBug』というアニメ映画で、 Beetleは主人公級の扱いでカムバックするのだという。おお!!おかえり Beetleと思ったら、復活するのはエレクトリック Beetleという妙に未来に進化しすぎた姿で、ノスタルジーのかけらもない復活スタイルであった・・・。ま、仕方ないか・・・。

さて話を70年代に戻すが、個人的にはこういうフォルクスワーゲン Baja Bugみたいな車とか、空冷のフォルクスワーゲン バス(ブリ)が、ぼろぼろの使い古されたズックのような姿で、若者たちに愛用されている姿の方は、今のようながんじがらめなライフスタイルよりもずっと自由で健康的で素敵な光景だと思う。しかしそんなのは遠い昔の話になってしまっている。昔は日本でもこういうちょっと改造したフォルクスワーゲン Beetleも見かけたし、カリフォルニアあたりではファストフード店の駐車場には止まっていたものだったのになぁ、というのは遠い昔の話である。

Baja Bugも当時は立派な文化だったし、専門店が林立し、ルックスだけのものから、こてこてに改造されたお化けのようなものまで、もう千差万別に存在していた。そんな改造Baja Bugの中でも、今回の記事の一台は本格も本格。なにしろあのキューベルのアクスルなどを使用し、Baja1000のレースにエントリーして活躍しているというのだから、マジな車輛である。ガルフカラーのボディもイカしているし、正直言うとビーチか砂地で運転してみたい。BEVだ、ハイブリッド車だなんだと、小難しいこと言わずに、青い空の下でフラットフォーを奏でながら、思い切り走り回ることのできる自由・・・。それこそがこのBaja Bugの最大の魅力であり、与えられた特権であったといえよう。

そんなBaja Bug、2023年の現在、欲しいなぁと思ってしまったあなた、朗報です。日本にもまだBaja Bugの専門店がいくつか存在し、その中でも兵庫県三木市にある専門店にはまだまだ在庫もあるし、カスタムチューンも承っているというではないか。BEVだ、プラグインハイブリッドだなんだという響きに息苦しさを覚えたあなた、三木市を訪れてみてはいかがだろうか(お土産には、お隣の小野市に在る増富のお肉がお薦めです)。

さて、今回Baja Bugの写真を見ていたら、なぜかビーチボーイズの曲が頭に流れ始めた。ビーチボーイズの曲はどことなく切なく、いつ聴いても夏の終わりのような光景が目の前に広がる。噂ではビーチボーイズのメンバーはサーフィンをしたことは一度もないのだという。だから切なく聞こえるのかどうかはわからないが、あの頃の色とか温度を奏でていることは間違いない。

触媒も何も関係なく(どうせ Beetleの出す排気ガスなんて、戦車が巻き散らかす排気ガスと比べたら可愛いもんだ)、あっけらかんとしたマフラーから響くフラットフォーのビートは、今よりもゆっくりした70年代のリズムに違いない。

(Text by Lars Hänsch-Petersen / Photos by Johannes Klug)

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