「Golf R」シリーズの日本導入20周年を記念したスペシャルモデル「Golf R 20 Years」に試乗。ノーマルのGolf Rとの違いは?

画像1: 【試乗記】Golf R 20 Years

フォルクスワーゲンAGでは、2022年6月、「Golf4 R32」の登場から20年を記念したスペシャルモデル「Golf R 20 Years」を発表している。標準のGolf Rに対してエンジンを10kWパワーアップしたことに加えて、「Rパフォーマンスパッケージ」を標準装着したりすることで、特別なRに仕立てあげられたのが特徴だ。

このGolf R 20 Yearsが、Golf Rシリーズの日本導入20周年を記念した特別仕様車として、フォルクスワーゲン ジャパンが販売することになった。標準のGolf Rには、最高出力235kW(320ps)、最大トルク420Nmの2.0 TSIエンジンが搭載されているが、このGolf R 20 Yearsでは最高出力が245kW(333ps)にパワーアップとなる。

それ以上にうれしいのが、標準モデルで選択できなかったRパフォーマンスパッケージが採用されること。2ピース構造の大型ルーフスポイラーと1インチアップの19インチアルミホイール、Akrapovic(アクラポビッチ)のチタンエキゾーストシステムが標準で装着されるのだ。さらに、標準で用意される4つドライビングプロファイル(「コンフォート」「スポーツ」「レース」「カスタム」)に加えて、ニュルブルクリンク北コースに最適化した「スペシャル」と、ドリフトが可能な「ドリフト」が利用できるようになる。DCC(アダプティブシャシーコントロール)も標準装着だ。

加えて、20 Yearsの特別装備として「20」のエンブレムをBピラーに施したり、カーボンのデコラティブパネルをドアトリムやダッシュボードに使用したりすることで、このクルマのスペシャルさをアピールしている。

フロントシートは、カーボン調の素材で彩られたナパレザーの専用シートがスポーティさと豪華さを際立たせている。ベンチレーション機能を備えたスポーツシートは、夏の暑い時期でも快適に過ごせる優れモノ。標準のGolf Rにはない装備が手に入るだけでも、このモデルを選ぶ価値は十分にある。

まずはコンフォートモードで走り出すが、期待に反してアクセルに対する反応がもっさりとしており、スポーツモデルに乗り慣れない人向けのモードという印象。そこですぐにスポーツモードに切り替えると、エンジンは生き生きとした反応を見せ、低回転から力強い加速を示すようになった。いわゆるターボラグも気にならず、街中でも実に扱いやすい特性。高速道路の合流や追い越しでも、アクセルペダルを軽く踏み増すだけで十分な加速が得られる余裕もうれしい。

一方、アクセルペダルを深く踏めば、2.0 TSIエンジンは3500rpmあたりから勢いを増し、6600rpmのレブリミットまで一気に吹け上がる。その加速は痛快そのもので、トップエンドの伸びは標準モデルを上回る印象である。そんな状況であっても、常に高いトラクションが得られるのは4MOTIONの成せるワザだ。

しかも、Golf Rに搭載される4MOTIONは、エンジンのトルクをフロントとリヤアクスルに配分するだけでなく、リヤアクスルの左右のトルク配分を自在にコントロールし、コーナリング性能を高める「Rパフォーマンス トルクベクタリング」を標準で搭載。おかげで、そのハンドリングはアンダーステア知らずで、コーナーの途中でアクセルペダルを踏み込んでいってもクルマが外に膨らむ気配はなく、狙いどおりのラインを駆け抜けることができるのだ。

ここでレースモードに切り替えると、シフトが自動的にSレンジに変わると同時に、エキゾーストノートが少し目立ってくる。より低いギアを保つこともあり、アクセルのレスポンスはさらに鋭く、より素早い加速が楽しめる。そしてスペシャルモードでは、DSGのシフトポイントが一段と高まり、より高回転を保つセッティングに。走行中にアクセルペダルを少し緩めても自動的にシフトアップしないため、ワンディングロードやサーキットのスポーツドライビングを楽しむシチュエーションではこのほうが走りやすい。また、パドルでマニュアルシフトに切り替えた場合、エンジンがレブリミットに達すると自動的にシフトアップするが、スペシャルモードでは自動でシフトアップすることはなく、ドライバーの意思どおりにコントロールが可能である。

Akrapovicのチタンエキゾーストシステムは乾いたサウンドを発するが、音量自体は大きすぎない。一方、レースモードやスペシャルモードでは、アクセルオフ時にパンパンと勇ましいサウンドを響かせるから、ふだんの走行ではスポーツモードを選んでおくのが無難だろう。

Golf R 20 Yearsの乗り心地はコンフォートモードでもやや硬め。街乗りでは、カスタムモードでDCCをもっともコンフォートにセットし、他をスポーツにするのがオススメである。

ドリフトモードについては、サーキットなどのクローズドコース向けの機能であり、また、リヤタイヤの摩耗も激しいことから今回は試していないが、機会があればどんな挙動を示すのかチェックしてみたいと思う。

画像10: 【試乗記】Golf R 20 Years

このように装備も走りも標準モデル以上に魅力的に仕上げられたGolf R 20 Years。792万8000円(ラピスブルーメタリックの試乗車はプラス4万4000円)という価格は悩ましいが、スポーツドライビングを楽しみたい人にとっては、その内容を考えると十分納得のいくプライスだと思う。Golf R 20 Yearsは限定車ではないが、ほしい人は早めにフォルクスワーゲンディーラーにコンタクトを!

(Text & Photos by Satoshi Ubukata)

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