フォルクスワーゲン・ブランドの営業・マーケティング・アフターセールス担当取締役を務めるイメルダ・ラベー氏が来日。現在の取り組みについて日本のプレス関係者の質問に答えた。

画像1: Golfがなくなることはありません〜フォルクスワーゲン・ブランド取締役イメルダ・ラベー氏が語るLove Brand戦略

Love Brandとは?

2022年7月に取締役に就任したラベー氏は、「Love Brand(愛されるブランド)」をモットーにフォルクスワーゲン・ブランドの未来づくりに積極的に関わってきている。そんな彼女が今回、日本を訪れた理由とは?

「今年は、日本にフォルクスワーゲンの正規輸入が開始されて70年という節目の年。アイコニックなブランドであるフォルクスワーゲンが、この日本の市場で発展できたことをうれしく思います。自動車業界はいままさに大きな変革の時期を迎えています。そのなかで、ブランドをどう発展させていくか、電動化をどう進めていくかを議論するために、日本を訪れました」

画像1: Love Brandとは?

ラベー氏が力を注いでいるLove Brandとは、何を意味するのだろうか?

「ご存じのとおり、フォルクスワーゲンは非常にアイコニックなブランドであると同時に、長くエモーショナルな歴史を持っています。現在、ウォルフスブルクの本社では、もう一度、人々から愛されるブランドになりたいと考えています。そのために、よりエモーショナルな味付けをブランドにするための戦略を打ち出しています。それは、ブランドイメージだけではなく、商品も含まれます。

それと並行して、フォルクスワーゲンは自動車業界のパイオニアとして、トランスフォーメーション(変革)に積極的に投資しています。さらに日本市場では、トランスフォーメーションへの投資と同時に、ICE(内燃機関)モデルのラインアップ強化を行います。これを“ICEパーフェクション”と呼んでいますが、これと電動化へのトランスフォーメーションをバランス良く並行して推し進めることで、Love Brandを目指すというのが、いまの私どもの戦略です。そのために、日本の市場にはどういったニーズがあるかをしっかりと理解し、お客様のニーズにあう商品を今後も導入していきたいと考えています」

画像2: Love Brandとは?

Love Brandとなるために、具体的にはどんなことに取り組んでいるのだろうか?

「Love Brandは、お客様から見たフォルクスワーゲンのイメージを反映したものでもあります。いまの時代、テクノロジーが発達して、モダンでデジタル化が進んではいますが、お客様がクルマを人生の伴侶として考えているという見方は変わっていません。

フォルクスワーゲンには、Golfや“ワーゲンバス”といった象徴的なモデルがいくつかあります。それらは、クルマとしての機能のニーズだけでなく、お客様のライフスタイルに対するニーズに応えてきた歴史があります。“もっと自由になりたい”とか、“いままでの伝統的な生活とは違う生活をしてみたい”といったようなお客様のニーズです。

いま導入を進めているID.ファミリーについても、電気自動車に乗りたいけれども、他の人とは違うニーズにお応えするためのモデルという位置づけです。私たちは素晴らしい過去の財産がありますので、それとこれからの未来を完璧なかたちで融合することが重要だと思うのです。

それを具体的にどう落とし込むかというときに、真っ先に挙がったのが、日常の使いやすさ、つまり、機能を見直すことでした。お客様への調査では、世の中でこれだけデジタル化が進んでいるにもかかわらず、お客様は触覚的に使える機能を求めているのがよくわかりました。たとえば、ダイヤルを使って直感的かつシンプルに操作したいと思っています。Love Brandでも、ここにフォーカスしています」

GolfやID.4ではコックピットのデジタル化が進められ、極力物理スイッチを排し、タッチパネルでの操作に集約したことが、使いにくさをもたらした。それを改善する動きが出ているということか。

「それがよくわかるのが、『ID.2all』というコンセプトカーです。エクステリアは、いかにもフォルクスワーゲンというデザインです。クラシックなデザインの要素を採り入れて、ひと目でフォルクスワーゲンとわかっていただけるのが重要です。一方、コックピットは、エアコンの温度設定やオーディオの音量調節などは、ハプティック(触覚的)に使えるものが大切だと考えています。現在はステアリングホイールにスライダーを採用していますが、これも見直します。とにかく、デジタル化の時代であっても、直感的に、簡単に操作できることが重要であり、日々、クルマに乗るうえで使いやすいことをデザインの採り入れることにより、Love Brandになることを目指しています」

Golfの未来は?

“ICEパーフェクション”と電動化へのトランスフォーメーションを並行して推し進めるフォルクスワーゲンだが、Golfに未来はあるのだろうか?

「Golfがなくなることはありません。フォルクスワーゲンといえばGolf、Golfといえばフォルクスワーゲンの代名詞ですから。私たちの戦略は、アイコン的な商品はそのままキープしつつ、未来の電気自動車のラインアップにうまく落とし込む、移し替えるという考え方です。その最たる例がID.Buzzで、ワーゲンバスを完全電動化したものです。

その一方で、アイコン的な商品と呼ぶ以上は、ブランドのヘリテージをきちんと反映して、なおかつ未来の価値に応えられる、そういったものでなければいけないという、厳しく明確な基準を設けています。ID.Buzzはご覧いただいているとおり、まさにそれができていると思います。

Golfについては、そのアイデンティティを完全に反映したもの、そういったコンセプトができあがるまでは電気自動車にはなりません。言い換えれば、私たちが100%納得できるコンセプトができたら、そのときには電気自動車のGolfが登場するということです」

画像: Golfの未来は?

そのGolfについて、ラベー氏からはこんな発言も!

「ICEパーフェクションと電動化へのトランスフォーメーションを同時に進めていますが、マーケットによってトランスフォーメーションの進捗が異なり、日本の場合は当面はどちらかといえばICE寄りということになるでしょう。

日本市場では、2024年末にGolfの次のエディションが発表になると思います。ICEパーフェクション戦略の一環として、新しいエディションのGolfとGolf GTIをしっかりと訴求することが、日本市場でいまもっとも大事なことだと思っています。電気自動車のGolfはそのあと、その次の世代ということになります」

GTIやRも継続するという。

「電気自動車の時代でもファン・トゥ・ドライブは大事だと考えています。それは電気自動車でもICEモデルでも一緒です。両者はメカニズムこそ異なりますが、GTIというコンセプト自体は今後も継続していきます。ただ、どう電動化するかというのは時期尚早ですので詳しくはお話できないのですが、すでに良いアイディアがあります。Rモデルについても、ブランド自体をよりエモーショナルにするために、非常に重要な役割を担うモデルだと位置づけています」

これまで以上に親しみやすいブランド、そしてクルマに変わるために、大きく動き出しているフォルクスワーゲン。その成果がどのように現れるのか、まずは2024年末に登場する次のGolfでお手並み拝見といこう。

(Text by Satoshi Ubukata)

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