デザイナー、ヴァルター・デ・シルヴァはライン(線)の達人だ。ヴァルター・デ・シルヴァはアルファロメオで頭角を現し、その後数年間、フォルクスワーゲングループのデザインを形成してきた。彼はクルマに飾り気のない軽快さを与え続けてきた。そんな彼のライフワークを紹介する。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

画像1: 【Auto Bild】ヴァルター・デ・シルヴァの軌跡

ヴァルター・デ・シルヴァは、静かな言葉を発する人だ。しかし、彼が自動車デザインについて語るとき、その言葉が熱を帯びたものになることは珍しくない。何が良いデザインなのか、というよくある質問に対する彼の答えは、「クルマは2本、多くても3本の線で定義されなければならない」というものだ。彼の創るものは、淡々としていて、明快で、シンプルだが単純ではない。

彼は今まで、常に自分自身の原則にしたがって行動し、その結果、新しい自動車を紹介するのに最適な色はシルバーであることを発見したのだ。「なぜなら、そこでは形が最も強調されるからだ」。

デ・シルヴァがドイツの自動車産業の中枢に身を置くまで

1972年、研修を終えたデ・シルヴァは、トリノにあるフィアットのデザインセンター(チェントロ スティレ)に入社した。しかし、この若いイタリア人は、デザイナーとして成長するためには、もっと多くの影響を受ける必要があることに気づいた。1975年、ミラノの有名デザイナー、ロドルフォ・ボネットのもとで家具をデザインし、1979年にI.De.A研究所に入所。そして、1986年にアレーゼのアルファロメオ チェントロスティレに入り、翌年から責任者となり、1990年代の終わり、1998年までその任にあたった。

デ・シルヴァがデザインしたシルバーのクルマといえば、アルファロメオ156が有名だ。アルフィスティにとって、このセダンはすでにクラシックであるべき要素を備えており、時代を超えたクルマに事欠かないイタリアの自動車メーカーの歴史を考えると、それはとても重要なことなのだ。

画像: デ・シルヴァがドイツの自動車産業の中枢に身を置くまで

ヴァルター・デ・シルヴァがデザインした「セアト アルテア」と「セアト レオン」

アルファのデザインは、ある自動車経営者の目にとまる。フェルディナント・ピエヒにだ。

ピエヒがやろうとしたことは、フォルクスワーゲングループのセアトのテコ入れだ。そこでデ・シルヴァは、1998年にフォルクスワーゲンの子会社であるセアト社に移籍した。そこで彼はすぐに、イベリア半島の自動車ブランドにエモシンを吹き込む仕事に取り掛かった。「セアト アルテア」や、とりわけ「アルファロメオ147」に酷似した、「セアト レオン」といったクルマは、デ・シルヴァの筆から生まれたものだ。

画像: ヴァルター・デ・シルヴァがデザインした「セアト アルテア」と「セアト レオン」

地中海的なデザインはその目的を果たし、マートレル製のクルマに、このイタリア人の関与によってグループ経営陣が意図したスポーティなタッチを与えた。デ・シルヴァは、セアトのデザインを通じて、グループの主要なブランドに対する聖別を獲得していた。当時、特にアウディには、ビジュアル面での改革を必要としていた。

実りあるパートナーシップ:デ・シルヴァとヴィンターコルン

そして、ヴァルター・デ・シルヴァとフォルクスワーゲングループのボス、マルティン・ヴィンターコルンは、プレミアムブランドで出会うことになる。対照的な2人の出会いだった。

マルティン・ヴィンターコルンは、自分の品質基準に満たない部品を投げつけるほど気骨のある経営者であり、デ・シルヴァは、常に上質な糸を身にまとい、柔らかな声で話す洗練されたイタリア人であった。インゴルシュタットでは、「シニョーレはいつまで人間の台風の目(ヴィンターコルン)に耐えられるか」という賭けがさかんに行われた。

しかし、自称専門家たちは勘違いすることになった。二人は外見こそ違うが、完璧な自動車を追求することでは一致していた。技術者でもあるヴィンターコルンは、明快なデザインを得意とする設計者を意のままにさせた。

二人はよく夜遅くまで新型Audiについて語り合った。BMWとメルセデスとの三つ巴のプレミアムバトルに遅れをとらないためには、Audiはビジュアル面で変身する必要がある、ということが二人にとって明確だったからだ。

ヴァルター・デ・シルヴァが最も美しいと思うクルマは「Audi A5」

ワルテル デ・シルヴァは、Audiのモデルに、現在でもブランドを象徴する顔であるシングルフレームグリルを与えた。さらに、シンプルでありながら、それまで以上に存在感のある新しいデザイン言語を与えた。そして、アウディデザイナー時代には、「Audi A6(C6)」、「Audi TT(8J)」や「Audi R8」などの美しいスポーツカーが生み出された。

イタリア人にお気に入りを尋ねると「Audi A5は、私がデザインした中で最も美しいクルマです」と答えた。この意見は彼だけのものではなかった。2010年、彼は「Audi A5」でドイツ連邦共和国のデザイン賞を受賞している。

画像1: ヴァルター・デ・シルヴァが最も美しいと思うクルマは「Audi A5」

2007年にフォルクスワーゲンデザイン部門のCEOに就任したマルティン ヴィンターコルンは、すぐに信頼するデザイナーをニーダーザクセン州に連れて行った。デ・シルヴァはウォルフスブルクに到着するや否や、すぐにパフォーマンスを発揮する必要があった。

「Golf6」は、すでにスタート台に立っていたが、マルティン ヴィンターコルンはその外観に満足していなかった。「Golfは古くなってはいけない」というのが、当時も今もデザインの前提である。

画像2: ヴァルター・デ・シルヴァが最も美しいと思うクルマは「Audi A5」

Golf6のデザイン言語は、フォルクスワーゲングループの次の年、次のモデルにとって決定的なものとなった。ヴァルター・デ・シルヴァは、ヴォルフスブルクを去る2015年までフォルクスワーゲンに在籍していた。

現在は、自動車サプライヤーであるEDAGに関わるだけでなく、自身のデザイン事務所を持ち、「ヴァルター・デ・シルヴァ シューズ」で、自身のファッションブランドも展開している。

(Text by Wolfgang Gomoll / Photos by autobild.de)

画像2: 【Auto Bild】ヴァルター・デ・シルヴァの軌跡

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