50年以上にわたり、累計3,000万台が生産された「Passat」は、ファミリー向けのセダンやステーションワゴンとして、多くの人々に親しまれてきた。そんなフォルクスワーゲンの人気モデルの歴史を振り返る。
※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。
Passatは80年代から90年代にかけて人気を博したファミリーカー。先生が乗るクルマ、セールスマンが乗るステーションワゴンというイメージが強い。そんなフォルクスワーゲンのミッドサイズカーが、世界で最も成功したクルマとして上位にランキングされている理由は単純。中国市場での成功である。ホイールベースが長いPassatは、東アジアの経済大国で、この10年の間に、とんでもない数のファンを獲得したからだ。
それでもスタートは順調なものではなかった。1973年、「Passat 32A」のモダンで角張ったフォルムは、空冷エンジンをリヤに搭載する「Beetle」のイメージとはあまりにかけ離れていた。
1973年に登場したPassat 32A。
しかし、実用的なハッチバックと、それに続くステーションワゴンの「Variant」は、瞬く間に市場を席巻する。全長4.19m、55PSのファミリーカーを、基本価格9,060マルク（約63万円）で実現したのである。
後継の「Passat 32B」は、より大きく、より高価になった。また、はじめてディーゼルターボや5気筒エンジンを搭載したモデルも用意された。また、ノッチバック仕様の「Santana」も登場し、このSantanaは中国で多くのユーザーを獲得し、愛されていた。
日本でもノックダウン生産が行われおなじみの「Santana（サンタナ）」ことPassat 32B。中国市場でも大人気だった。
ラジエーターグリルが閉じていることから“鼻熊”とも呼ばれた「Passat 35i」は、1988年から発売された初の6気筒モデルである。1996年からは「Passat B5」として、一段と豪華になった。
Passat W8は、上流階級の雰囲気を醸し出していた
8気筒エンジンが搭載された「Passat W8」、精緻なボディのつくりと上質な仕上がりに加え、シンプルだったキャビンに上流階級の雰囲気をもたらした。
4L W8エンジンと4MOTIONを組み合わせたラグジュアリーなPassat W8
その後、「Golf5」のプラットフォームをベースに開発された「Passat B6」は、Golfとの差別化に苦しむ不運なモデルとなった。
現行のPassat B8は全長4.77m
現行の「Passat B8」は、2020年の改良を経て、販売が続けれているモデル。全長4.77m、最小のディーゼルでも122PS、価格は最低でも34,725ユーロ（約485万円）した。
グローバルではVariantよりもSedanが人気だったPassat。全世界で累計3,000万台を販売した。
また、要望に応じて、現行のPassatには先進的なプラグインハイブリッド車も用意されている。それでも物足りないなら、「Arteon」が高貴で個性的な選択肢となりうる。
現在、PassatはVariantのみの販売
現在では、ヨーロッパで販売されているのはステーションワゴンのみ。多才なPassatはとくに長距離の移動におすすめだ。多くの営業マンに愛用されているクルマというイメージは、今も昔も変わらない。
一方、ファミリー層の注目は、「Tiguan」や「Škod KODIAQ（シュコダ コディアック）」などに集まっている。だから、次期Passatもステーションワゴンのみとなる。そして、長期的にはBEVの「ID.7」に道を譲ることになるだろう。
結論
ほぼ半世紀にわたって、Passatは非常に汎用性が高く、絶対に裏切らないタイプとして貢献してくれる。多人数の家庭でも、ファッションモデルのスーツケースでも、Passatが手に負えないということはほとんどなかった。そして、その才能が騒がれることは決してなかった。しかしみんながSUVに走ったときでも、Passatは多くの人に受け入れられたのだった。
(Text by Malte Büttner and Gerald Czajka / Photos by Volkswagen AG）
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