スムーズでパワフルな300psのエンジン。シャープなルックス。GTIのデビューからさほど待つこともなく、フォルクスワーゲンは新たに「クラブスポーツ」なるバージョンを発表した。我々は、本来のGTIともいえる性能を持つこのモデルを徹底試乗した。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

これが本当のGTIの姿だ

現行のゴルフGTIは基本的には何も非難されるようなものはない。速く、そしてクリーンにドライブでき、そのパワーユニットは先代モデルの性能を上回っている。すべてが正常進化といえる。あえていうならエモーショナルな部分が少々欠けているといえるのかもしれない、サウンドこそ際立つものがあるが、たとえば、さほどこの車に興味のない人にとっては、GTIが特別であることを前後につけられたレタリング以外からは感じることができないだろう。

画像: これが本当のGTIの姿だ

しかし、このクルマを見てほしい。あなたが本当にパフォーマンスGTIとディテールにこだわるなら、このGTIクラブスポーツがベーシックモデルのGTIに欠けているものを(ほぼ)すべて提供してくれるはずだ。

われわれはそんな欧州市場で登場間近の「クラブスポーツ」をさっそくテストすることに成功した。

0-100km/hは5.6秒

最も大きな数値上の変化は、245psから300psへのドライブトレーンの強化だろう。トルクも370Nmから400Nmに増強されている。

ホットハッチについて語る場合、くどくどと数値的な前置きを語るより、ドライバーズシートに身を沈め、ホイールを握って、カントリーロードへと飛び出すべきだと考える。

クラブスポーツの発進加速のパンチ力は間違いなく特筆モノだ。「EA888」4気筒エンジンは、2000rpmからもりもりとトルクが湧き出し、6000rpmを超えてもなお貪欲に回転しようとするパワフルさも兼ね備えており、実に運転が楽しい。

標準装備のDSGは、いつものように軽快にシフトワークをみせてくれる。そして強化されたパワーを前輪がしっかりと路面に伝えてくれている。

この試乗車による加速タイムをまだ測定することは許可されていないが、フォルクスワーゲンのいう0-100km/h加速5.6秒という数字は、まんざらでもないと実感できるものだ。

画像: 控えめなリヤディフューザー、太目のエグゾーストパイプ、そして大きなリヤスポイラーが、GTIの「らしさ」をアップさせている。

控えめなリヤディフューザー、太目のエグゾーストパイプ、そして大きなリヤスポイラーが、GTIの「らしさ」をアップさせている。

そしてDPF(ガソリン直噴エンジン車の排気ガスから粒子状物質排出量を削減するためのフィルター)が装着されているにもかかわらず、スポーツ走行に不可欠なサウンド演出も、これまで以上に良いものとなっている。エアインテークからの吸気音、ターボの過給音、フラップエキゾーストからの唸り、ダウンシフトやスロットルダウン時には意図的にプログラムされたミスファイアリングサウンドが出るようになっており、人工的とはいえ気分的にもアガる。

練り上げられた足まわり

動力性能もさることながら、新しいブレーキとサスペンションのチューニングは何よりも賞賛に値する。ワインディングロードでこそこの「クラブスポーツ」が楽しめた大きな理由がそこにある。

テスト車には、冬用タイヤが装着されていたのだが、それでもここまでいわせるのだからよほどである。

左右で600gの軽量化が図られた、ベンチレーテッドディスクと大型キャリパーが採用されているフロントアクスルには、ネガティブキャンバーの増加と、1cmのローダウンにより、1461kgのゴルフはより速く正確なコーナリングを実現してくれるようになった。

さらに、ESCを使ったトルクベクタリング機能のXDSとオプションの調整式ダンパー、そして電子制御油圧多板クラッチ式のフロントディファレンシャルロックと、新しいドライビングダイナミクスマネージャーにより、GTIクラブスポーツには事実上アンダーステアをなくすことに成功したという。

ちなみに、ESPスポーツモードを選択するとリヤエンドがある程度リフトアップすることさえある。

画像: オプションの19インチのホイールの後ろには、フロントに460mmのベンチレーテッドディスクを備えたスポーツブレーキがある。

オプションの19インチのホイールの後ろには、フロントに460mmのベンチレーテッドディスクを備えたスポーツブレーキがある。

これが冬用タイヤを履いていても、コーナリング時にアンダーを感じることなくカーブを正確にクリアできた理由かもしれない。ステアリングも、わずかながらに不自然さを感じるものの、良いフィードバックを与えてくれる。

唯一の気になったのはマニュアルモードを選択していても、リミッターが働き自動でシフトアップしまうところだ。これはちょっと残念。

これにとどまらず、フォルクスワーゲンはクラブスポーツ専用に、ニュルブルクリンクドライビングモードを開発している。エンジンとトランスミッションをよりスポーティに、シャーシをややソフトに設定するというものだが、フォルクスワーゲンの発表によれば、クラブスポーツはあのニュルブルクリンク北コースで、なんとGTIより13秒速いラップタイムを記録したのだという。

こんな走りの楽しみ満載のクルマにもかかわらず、コンフォートモードを選べば、快適に日常生活を送ることができというところが素晴らしい。

排気システムやオプションの19インチタイヤを使用した場合でも、許容レベルの快適性を提供する。

画像: ついにGTIテールパイプがチューニングカーのような太さになった! レポーターの手がすっぽりと入ってしまうほどだ。

ついにGTIテールパイプがチューニングカーのような太さになった! レポーターの手がすっぽりと入ってしまうほどだ。

エクステリアに目を移してみると、フォルクスワーゲンはいくつか小さな手直しを施したが、どれも正しいチューニングだといえるだろう。

フォグランプを取り除き、粗くメッシュ化されたグリルでリデザインされたフロントエプロンはワイルドさを増した。

リヤには大きなルーフスポイラーと太いテールパイプが採用されている。やはりGTIならこうでなくては。

残念ながらインテリアについてはこうしたアップデートはない。シートカバーが新しくなった以外は何も変わっておらず、GTIのコックピットには、らしさを増す演出は施されていない。

例えば、シフトパドルを大きくしたり、あちこちに滑り止めのアルカンターラを貼ったとしても、クラブスポーツの名にふさわしいスポーティさを演出できたのではないだろうか。

さらに、クルマのどこを見渡してもクラブスポーツのロゴはひとつも見当たらない。

画像: VWはGTIクラブスポーツのコックピットに、もう少し独自性を持たせても良かったのではないかと思う。

VWはGTIクラブスポーツのコックピットに、もう少し独自性を持たせても良かったのではないかと思う。

総合的に見れば、このクラブスポーツは、GTIという車をよりエキサイティングなクルマにすることに完全に成功しているといえると思う。

リーズナブルな追加料金

さて、肝心の価格だが、16%の付加価値税を含めたクラブスポーツの費用は、40,224ユーロ(約530万円)からとなっており、ベースモデルのGTIよりも2,617ユーロ(約35万円)の上乗せという計算になる。とてもリーズナブルなアップグレードではないだろうか?

画像: クラブスポーツは、高い運動性能でありながら日常使いをまったく犠牲にしない、真のGTIかもしれない。

クラブスポーツは、高い運動性能でありながら日常使いをまったく犠牲にしない、真のGTIかもしれない。

テクニカルデータ:ゴルフ8 GTIクラブスポーツ

● エンジン:4気筒、ターボ、フロント横置き● 排気量:1984cc ● 最高出力:300ps/5300rpm ● 最大トルク:400Nm/2000~5200rpm ● 駆動方式:前輪駆動、7速DSG ● 全長×全幅×全高:4295×1789×1465mm ● 乾燥重量:1461kg ● トランク容量:374~1230リットル● 最高速度:250km/h ● 0-100km/h加速:5.6秒 ● 燃費:13.5km/L ● CO2排出量:167g/L ● 価格:40,225ユーロ(約530万円)より

(Text by Moritz Doka / Photos by Christian Goes[AUTO BILD])

画像: 【Auto Bild】これぞ本物のGTIだ! ゴルフ8 GTIクラブスポーツに初試乗

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