ゴルフGTIをさらにスポーティに味付けした「ゴルフGTIパフォーマンス」が、ついに日本へ上陸。その真価に迫るべく、ワインディングロードに連れ出した。
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※2014年12月16日の記事を再構成して掲載しました。
レッドに塗装されたフロントブレーキキャリパーに「GTI」の文字が誇らしく記されている。ただのゴルフGTIではない。GTIが誇るスポーティさをさらに磨き上げたのが、このゴルフGTIパフォーマンスだ。
ドイツではカタログモデルとしてラインアップされているこのモデル、僕自身はヨーロッパでひとあし先に味見し、日本への導入を心待ちにしていた。そして今回ようやく500台限定で日本でも販売することになったのだが、うれしいことにプレス向けの車両が用意されたというので、さっそく借り出してみた。
試乗車は、標準のゴルフGTIでは選ぶことのできない"カーボンスチールグレーメタリック"のボディカラーをまとっていた。暗い場所で見ると、ほぼ黒というガンメタだ。ちなみに、日本で販売されるゴルフGTIパフォーマンスは、このグレーと"ピュアホワイト"の2色だけとなる。
ゴルフGTIとGTIパフォーマンスの違いはいくつかある。まずはエンジンの最高出力。ゴルフGTIの2.0 TSIが220ps/4500〜6200rpmであるのに対し、GTIパフォーマンスのそれはプラス10psの230ps/4700〜6200rpm。最大トルクの350Nmは同じだが、GTIが1500〜4500rpmで発揮するのに対し、GTIパフォーマンスは1500〜4600rpmと、より幅広い回転域で最大トルクを絞り出すようになる。
前述のとおり、GTIのロゴ入りブレーキキャリパーもこのクルマの専用装備だ。ブレーキローターも大型になり、フロントが312×25mmから340×30mmに、リヤが300×12mmから310×22mmに。GTIではフロントのみのベンチレーテッドディスクが、GTIパフォーマンスでは4輪ベンチレーテッドになるのも異なる点だ。
さらに、GTIパフォーマンスではDCCと225/35R19タイヤと7.5J×19の"サンティアゴ"が標準装着となる。
一方、インテリアは一見いつものGTIだが、タータンチェックのスポーツシートがファブリックからファブリック&アルカンターラに変更され、スポーティな印象を強めている。純正ナビゲーションの"Discover Pro"(&DSRC車載器)が標準装着されるのもうれしい点だ。
これだけでも追加費用の元が取れそうだが、GTIパフォーマンスにはさらに特別な装備というか、実はこれが一番のウリという部分がある。それが、電子制御油圧多板クラッチのハルデックスカップリングを用いたフロントディファレンシャルロックだ。
コーナリング時のトラクションを向上させるとともに、前輪外側により多くのトルクを配分することで、アンダーステアの発生を抑制。いわゆる"トルクベクタリング"機構で、通常のGTIがESCにより実現してるXDSを、専用のハードウェアによってさらに強力に仕立て上げているのだ。
結論を先にいうと、このフロントディファレンシャルロックは効果絶大! コーナーリング中にアクセルペダルを踏み込んでもアンダーステアとはおよそ無縁で、さらにぐいぐいとインに切れ込んでいくほど。少ない操舵量でコーナーを曲がることができるうえに、コーナリング中の安定性も極めて高いため、早い時点から安心してアクセルペダルを踏んでいける。おかげで、コーナーから素早く脱出できるというわけだ。
プラス10psの2.0 TSIエンジンは、正直なところパワーの差はそう感じられないものの、レスポンスや高回転の伸びが向上している印象。フロントディファレンシャルロックのおかげで、コーナリング中にそのパワーを使い切れる場面が増えることや強化されたブレーキのおかげで、"ラップタイム"の短縮が大いに期待できる。
ただ、225/35R19タイヤを履く日本仕様は乗り心地が硬めで、目地段差を越えたときのショックもやや目立つのが気になった。ちなみにドイツでは17インチタイヤでDCCなしが標準である。まあ、しばらく乗っていると体が慣れてくるが......。
いずれにせよ、ハンドリングにこだわるなら、このゴルフGTIパフォーマンスは見逃せない存在である。
今回は限定モデルとして販売されたGTIパフォーマンスだが、これがレギュラーモデル化され、タイヤやDCCが自由に選択できたら、もういうことはない。
(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Hiroyuki Ohshima)