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イタリアの我が家は「要らんもの捨てるデー」というのを決め、毎月末さまざまな物品を処分している。まだ使えそうなものは、リサイクルショップに持ってゆく。

「イル・メルカティーノ」は、イタリアにおける全国チェーンのフランチャイズ制リサイクルショップである。Il mercatinoとは「小さな市場」を意味する。

持ち込んだ品は店員によって査定され、一定期間店内に陳列される。売上金額に応じてお客が受け取る割合が設定されている。たとえば、大半の品物がそれに属する販売価格500ユーロまでは50%である。売上を店とお客が折半するかたちだ。

画像1: 実車より生存率低し? 
初代ゴルフ・カブリオのバービー仕様

先日そのイル・メルカティーノに、毎月のように要らないものを持ち込んだときだ。陳列ケースの高い位置に、車がプリントされた箱を発見した。バービー人形用のフォルクスワーゲン・ゴルフIカブリオである。

玩具といえど、ロールオーバー・バーや、スクエア感覚溢れるダッシュボードなども適切なデフォルメを伴って再現されている。車をわかった人による企画であることが伝わってくる。

後日インターネットで確認したところ、製造元のマテル社は1981年前後に、この商品を製造していたことがわかる。

また同社は1980年代中盤、バービー仕様とは別に「ハートファミリー」と名付けられた家族人形シリーズにも、ゴルフIカブリオを模した玩具を設定している。バービー仕様がピンクであるのに対して、こちらは白で、ステッカーが微妙に別物になっている。ほんとうの自動車でいうところの“バッジ・エンジニアリング”である。

マテル社は後年、ニュービートルのバービー仕様もリリースしているから、このゴルフIは両社のコラボレーションにおける始まりとみられる。

陳列されているゴルフIカブリオ・バービー仕様を、ドイツ語とイタリア語で説明が記された箱から出してもらう。

トランクも、開口部の切り欠き形状とともに実車が再現されている。壊さないようにそっと開けてみると、元持ち主が忘れたと思われるバービー人形の衣装や帽子が出てきた。

さすがにソフトトップは再現できなかったらしく、代わりに折り畳んだ幌をかたどったプラスチックを取り外してから装着するハードトップが用意されている。

店主でこの道22年のジャンニ氏(冒頭の写真)に聞く。

彼は「最近、こうした商品はコレクターズ・アイテムとして引き合いが多いね」という。「300ユーロで売れる品だ」

300ユーロといえば約3万6千円である。実車のゴルフIカブリオは、2019年現在ヨーロッパで1万ユーロ(約120万円)前後が維持されている。ポピュラーカーがベースの車としては高値だ。それには及ばないが、このバービー仕様玩具も価格が維持されている。

「ただし」とジャンニ氏と釘を刺す。「この個体の場合、箱の状態があまりよくない。そのうえ、ウィンドーが折れてしまっているので減額せざるを得ない」。ということで、88.8ユーロ(約1万500円)の値札を付けたという。売れた場合、持ち込んだお客の取り分は約5000円ということになる。

たしかに、ウィンドスクリーンが根本からポキっと折れている。伝説のポルシェ550のフロントウィンドー無しバージョンになぞらえて「スピードスターでーす」などというのは通じないわけだ。

ウィンドーが折れていなければ、一気に3倍以上の値か。惜しい。といっても当然、この玩具が“現役”の頃の子供はそのへんがわからないから、容赦なく遊んでしまったのであろう。車両保険も掛けられないし。のちのニュービートルのバービー仕様には、より強固なクローズドルーフ仕様が選ばれている理由がわかってくる。

もしや、好コンディションのバービー仕様は、実車よりさらに生存率が低いのかもしれない。そんな気さえしてきた。

(文と写真 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

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