「アウトモトレトロ」とは、イタリア・トリノで毎年開催されるヒストリックカー・ショーである。第37回の2019年は、1月31日から2月3日まで4日間にわたり行われた。

会場はトリノのメッセ「リンゴット・フィエレ」。3つのパビリオンには、メーカー展示、中古車店、クラブ、部品&書籍、さらには軍隊や警察まで多彩なジャンルのブースが200以上展開された。

画像1: 懐かしの「ワーゲン・ロイス」に再会!

出展車両をみると、自動車都市トリノゆえ、やはり地元ブランドが幅を利かせている。

しかしそれに拮抗するが如く、最も目立つ位置を陣取ったヒストリックカー・ショップは、ポルシェ911を展開していた。近年のアルプス以北の人気を受けたかたちといえる。

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参考までに、1971年911STグループ4仕様も価格応談ではあるものの展示されていた。まもなくやってくる春から初夏にかけて各地で開催されるヒルクライムには、もってこいの車両であろう。

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フォルクスワーゲン タイプ2トランスポーターの人気も衰えていないようだ。

T1・8人乗りパネルバンには、1964年型で2万ユーロ(約250万円)のプライスタグが記されていた。その特徴的な光沢を放つボディサーフェスを売り主のフランチェスコ氏は、「研磨とブラシで仕上げました。一般的にラット・ルックと呼ばれるものです」と解説してくれた。

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ここヨーロッパでも、オリジナル性やウィンドーの枚数を競うレベルから、次なるステージに入りつつあることを示しているのかもしれない。ただし「気に入らなければペイントするも良し」と彼はつけ加えた。

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タイプ2といえば1985年T3(1900cc)も出品されていた。こちらの価格は8000ユーロ(約100万円)だ。つい先日までのモデルと錯覚しがちだが、計算してみれば車齢34年。立派なヤングタイマーである。

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スペックをよく見ると、燃料としてガソリン以外にLPGも使えるように改造されている。排ガスがクリーンなLPG仕様への改造は、燃費節約とともに年々環境規制が厳しくなるなか、古い車に乗り続けるための一手段だ。欧州屈指のLPGスタンド数(約4000カ所)も、それを後押ししている。超オリジナル・コンディションにこだわらなければ、有効な選択肢なのである。

もちろんビートルは安定人気を保っている。こちらは、1962年の6ボルト仕様だ。

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しかしながら、今回最も印象的なビートルといえば、1972年型をベースに、前後フードやフェンダーを換装したスペシャル(6000ユーロ:約76万円)である。

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背後には「CarLook」というバッジが付加されている。

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ビートルのフロントフードを戦前車風グリルに取り替える類似のモディファイは、日本でも1970年代半ばに流行した。

当時「ワーゲン・ロイス」といった俗称が流布したが、今日再確認してみると、ロールス・ロイス風以外にも、さまざまなデザイン的バリエーションがあったことがわかる。

当然のことながら、純粋なエンスージアストの間では興味の対象とはならなかった。だが、のちに東京都知事も務める青島幸男氏が、それ以前の参議院議員選挙の際、類似の改造を施したビートルを街宣車にしている写真を筆者は記憶している。

1980年代末に現在の秋篠宮殿下(当時の礼宮さま)が中古で購入され使用されていたビートルには、1930年代のリンカーン/フォード風グリルが備わっていた。

ちなみに1989年夏、同車を天皇陛下と交代で運転された様子を伝える朝日新聞には「水いらずでドライブ」という見出しが付いていたものだ。もしや記者がビートルが空冷=水要らずを意識したのでは、などと当時の筆者は空想を逞しくしたものだ。

ところで、2019年3月のジュネーヴ・モーターショー2019で、フォルクスワーゲンブランドはコンセプトカー「ID. BUGGY」を公開した。モティーフは、1960年代にアメリカのスペシャリストがビートルを用いて製作したバギーである。

バギーをイメージしたコンセプトカーとしてはup!をベースにした先例がある。しかしI.D.シリーズでも、いわばサードパーティーのプロダクトに範をとるとは。

次なるID.コンセプトを考えるVWブランドのデザイナーは、この懐かしい「ワーゲン・ロイス」をお手本にしてはいかがだろう。おっと、やはりグループの手前、やるならベントレー風か。

画像10: 懐かしの「ワーゲン・ロイス」に再会!

(文と写真 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

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