100226repo_ogu009.jpg新型ポロは驚くほどよくできたクルマだ。フォルクスワーゲンだからといって、絶賛するつもりはないが、その実力を知れば知るほど、それに限りなく近い称賛を与え て然るべきクルマと思う。ほぼ全方位スキがないクルマなのである。


100226repo_ogu004.jpg■これでいいと思わせる加速

まず驚くのは運転操作関連の違和感のなさ。7速DSGはさらに制御が緻密になったようで、発進も、ゴルフ5のトレンドラインなどの初期7速DSGモデルには少なからずあったぎこちなさがほとんどなくなった。ブレーキを踏んだ状態でのアイドリングは約750rpm。ブレーキを離すと、エンジン回転は直ちに約900rpmに上昇、クリープ現象を作り出す。軽くアクセルを踏んでいくと、1500rpmにもならないうちにセカンドへ、実にスムーズなシフトアップ。街中を普通に走っている限り、シフトアップはこのパターンの繰り返しで、60㎞/hあたりで7速に入ってしまう。燃費がいい理由を実感させられるというわけだ。

100226repo_ogu001.jpg特筆しておきたいのは、この60㎞/h前後で流す状況で、ゴルフの初期7速DSGモデルには感じられたエンジンの揺動を原因とするわずかな振動もほとんど感じられなくなっていること。60㎞/h時のエンジン回転数は6速で1500rpmあたり、7速では1300rpmあたり。ほんの少しのアクセルオンで6速にシフトダウン、またすぐに7速へ戻ったりする。7速の場合、さすがにトルクが不足すると見えて、エンジンがやや苦しげに揺動するのだが、ゴルフに比較してエンジン自体が軽量であるためか、それに起因する振動がきわめて少ない。60㎞/h前後という速度域は、街中でも郊外でも頻繁に使うだけに、ウレシイ発見ではあった。

100226repo_ogu017.jpgステアリングフィールも絶妙だ。ゴルフは燃費を追求して5で電動パワーステアリングを採用したが、この新型ポロは電動油圧パワーステアリング。5のドライなステアリング操作感は、6になって改良され、シットリ感もあるものに変わったが、それでも、油圧を使うこのパワーステアリングのスムーズさ、違和感のなさには負けると思う。

100226repo_ogu016.jpgエンジンは従来モデルに比較して5psアップの85psとなった。スムーズに回転を上昇させるものの、ストーリー性には乏しく、相変わらず官能性には乏しい。まあ、フォルクスワーゲンのエンジンらしく存在を主張しないというところか。とはいえ、NAエンジンのよさは十二分に感じられる。素直なのだ。回転上昇に伴ってトルク、もちろんパワーもアップさせる。1.4リッターの排気量の割には低回転域からトルクがあるとはいっても、もちろん過給器装着エンジンほどではない。しかし、過給器装着エンジンに感じられる人工的な味付け、わざとらしさがなく、鼻につかないのだ。そこがいい。この部分ばかりは、数カ月後日本にも導入される予定の1.2TSIエンジンでは得られないものだろう。

このエンジンと7速DSGの組み合わせは、意外なまでの活発な走りをもたらしている。街中で要求される加速性能は十分以上、ワインディングでは驚くほどはいわないまでも、気持ちのよい伸び方を見せる。7速DSGが効率よくエンジンの美味しい部分を引っ張り出すため、トルク不足といった感触をまったく与えない。もちろん、圧倒的な加速というわけではない。しかし、過剰という印象もない。頃合いというか、これでいいと思わせる加速なのである。

100226repo_ogu014.jpg■楽しもうと思えば楽しめる

乗り心地とハンドリングのバランスは、試乗車の場合、オプションの16インチのタイヤ&ホイールを装着するため、厳しくいえば、乗り心地がやや犠牲になっている。タイヤはダンロップのスポーツタイヤ、ディレッツァの215/45R16サイズで、これはVGJの選択。ホイールは、"シニット"のブラックで、7J×16というサイズ。標準より1インチだけアップされているだけだが、それでも45プロファイルのサイドウォールの硬さはやはり感じられる。サスペンションはスプリングもショックアブソーバーも変更されているわけではないので、ほんの少し乗り心地が低下するのもやむを得ないところだろうか。

しかし、この乗り心地、十分許容範囲にある。ワインディングに持ち込んで、そのダイレクト感あるハンドリングを味わってしまうと、むしろこのあたりが最も好ましいゾーンではないかとも思える。その高いボディ剛性ゆえに、サスペンションの位置決めは確かなもので、したがって、形式(フロント=ストラット、リア=トレーリングアーム)こそ従来モデルを踏襲するものの、新設計とされるサスペンションは開発陣が意図したとおりに動くのだろう、全体にソリッド感のある気持ちのよいハンドリングをもたらしている。

100226repo_ogu005.jpgそう、新型ポロはコンフォートラインであっても、スポーティなドライビングを楽しむことができるのである。DSG任せのギアチェンジであっても、Sモードにしておけば、高いエンジン回転数を保ってくれ、安心してステアリング操作に集中することができる。より積極的にコーナーを攻めるのであれば、シフトレバーを左側に倒してマニュアルモードでとして、自在にシフト操作を行なえばよい。DSGのシフトダウンでの回転合わせの見事さはご存知の通りで、かつて誰もが経験しただろう、ヒール&トゥーをミスってタイヤをギャーッといわせるようなこともない。前輪のグリップを失う心配はほとんどなく、自信を持ってコーナーに入っていけるというわけだ。パドルシフトこそ装備されないが、楽しもうと思えば十分楽しめるのである。

100226repo_ogu015.jpgこんなシーンでちょっと不満なのは、フロントシートのサポート性が不足すること。新型ポロのシートは小ぶりで、なぜか座面前端の両サイドが斜めにカットされているため、膝上での踏ん張りがきかない。もっとも、コンフォートラインというグレードに、そこまで求めるのは酷というものかもしれないが。

100226repo_ogu008.jpg■ポロはもう立派な大人である!

ポロはゴルフの下に位置するクルマである。しかし、新型ポロはある意味、ゴルフよりもいまという時代にマッチしたクルマだと思われる。10・15モードで17.0㎞/Lという燃費もさることながら、ボディサイズそのものにもジャスト感があって、従来モデル以上に"いいもの感"を強く漂わす。このところ顕著な傾向は、これまで上のクラスに乗っていたユーザーが燃費はもちろんだが、ボディのダウンサイジングも考慮してよりコンパクトなクルマを求めるようになっていることで、そうした場合、シンプルだが存在感のあるスタイリングと、品質感の高い室内を持つ新型ポロは、俄然 "魅力的な存在"となることは間違いない。VWのラインナップのなかでのポジショニングはともかく、ポロはもう立派な大人である。この印象こそが、新型ポロの強味ではないだろうか。

新型ポロはいま、バリエーションを拡大中だ。1.2TSIの日本導入はもうすぐで、GTI、クロスポロも、まもなく開催されるジュネーブでショーデビューとなる。が、あえていわせてもらうならば、新型ポロはこのコンフォートラインこそが"賢い選択"だ。

(Text by M.OGURA)

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