今年の上海モーターショーにて発表された新型ビートルに、モータージャーナリスト・島下泰久さんがベルリンで試乗!
13年という長いモデルライフを全うして、ニュービートルが遂にフルモデルチェンジを迎えた。
その名もシンプルに「ビートル」としての再登場である。名称が変わったことには当然、意味がある。何よりまずデザイン性が先にあったニュービートルから一旦、タイプ1つまり初代ビートルに立ち返り、デザインにしても使い勝手にしても、まさに初代ビートルのように誰からも愛されるクルマであることが目指された。それが新しいビートルなのである。
その名もシンプルに「ビートル」としての再登場である。名称が変わったことには当然、意味がある。何よりまずデザイン性が先にあったニュービートルから一旦、タイプ1つまり初代ビートルに立ち返り、デザインにしても使い勝手にしても、まさに初代ビートルのように誰からも愛されるクルマであることが目指された。それが新しいビートルなのである。
象徴的なのがエクステリアデザインだ。サイドビューは、3つの円弧を重ね合わせてビートルを表現していたニュービートルに対して、フロントウインドウの角度が起こされ、合わせてボンネットが伸び、ルーフもより低くフラットに。そこからリアエンドまで流れるようなラインで繋がれることで、まさにタイプ1を彷彿とさせる輪郭を描くに至ったのだ。
しかもボディサイズは全長4,278mm×全幅1,808mm×全高1,486mmと、より長く、広く、低くなった。ロー&ワイドなそのフォルムはスポーティな印象が強まっていて、とりわけ斜め後方からの眺めなど、まるでポルシェ911かのような迫力である。
率直に言って、このスタイリングは賛否が分かれるところだろう。「ニュービートルは女性が乗るようなクルマというイメージを払拭したい」という意図は解るが、その柔らかな雰囲気に惹かれていた人にとっては、少々肩の力が入り過ぎているように感じられるのではないだろうか。
もっとも、そのフォルムは空間設計の改善にも大きく貢献している。フロントウインドウが立てられたことで、異様に奥行きのあったインストルメンツパネルは普通の長さになり、四隅の掴みやすさや視界は大きく向上。後席も膝まわりはギリギリながら大人2名が何とか座れるようになり、ラゲッジスペースも310ℓ〜905ℓとまずまずの容量が確保されたのだ。なるほど、2ドアで差し支えなければ十分に実用車足り得るものになったと言っていいだろう。
但し、デザイナー氏曰く「過剰な装飾を排して長く愛され得る普遍的なものにしたかった」という内装は、さほど個性的ではない。タイプ1がモチーフの上ヒンジのグローブボックスなど見所はあるが、一輪挿しが無くなってしまったのも寂しい。今回試乗した「スポーツ」はダッシュパッドがカーボン調となるのも、そんな印象の一因だろう。ボディ同色の「デザイン」なら、結構雰囲気は変わると思う。
ちなみにインテリア素材はすべてハードパッド。ニュービートルでは気にならなかったが、このようなデザインなら、ソフトパッドを使うなどもう少しクオリティ感が欲しかったところである。
興味深いのはオーディオだ。フェンダー製サウンドシステムは、あのギターのフェンダー社が自動車用としては初めて、パナソニックと共同で手掛けたもので、計9スピーカー、出力400Wを誇る。サウンドもギターカッティングを歯切れ良く聴かせる元気なもので、ビートルのキャラクターにはブランド性ともどもよく合っていた。
続いては走りの話なのだが、予めて断っておくと今回試乗できたのは2.0TSIエンジンを積む北米仕様と欧州仕様の2車種だったが、日本導入が予定されているのは1.2TSIである。よってエンジン出力は異なるし、実はサスペンションも2.0TSIのリアマルチリンクなのに対して、1.2のそれはトーションビームになるという大きな違いがあるのだ。
よって乗り心地やハンドリングに関しては未知数の部分も多いが、試乗車に関して言えば予想通りフィーリングはゴルフGTIによく似たものだった。日本仕様がどうなるかは楽しみなところだが、取り敢えず動力性能に関してはゴルフより若干ボディが軽そうなので悲観することは無いと思う。尚、アイドリングストップシステムは本国でも追加は来年ということだから、だいぶ遅れて上陸することになるに違いない。
気になったのは風切り音を含む騒音が大きめなこと。やはりボディ形状の差だろうか。高速域での直進性も今イチと思えた。未だスタイリング優先のクルマだけに、致し方ないところだろうか。
生まれ変わったビートル、確かに従来のように「女性が乗るクルマ」という感じではなくなった。好評とは言えなかったヨーロッパでも、これなら受け入れられる余地はあるかもしれない。でも一方で、日本での人気の一因だったはずの、今のクルマには希有なほんわかとした柔らかい雰囲気が薄まったのは事実。ニュービートルにとって世界2位の市場だった日本の声はあまり反映されなかったのだと思うと、そこにも寂しさもある。
余談だが、リアエンドには「Beetle」や「Kafer」など国や地域ごとのニックネームのバッヂを付けることができるのだが、これにも日本語は用意が無いのだ。中国語の「甲壳虫」はあるのに!
話を戻すと、タイプ1だってデビュー当初とモデル末期では実はデザインはまったく異なっていたし、ニュービートルも前/後期型で個性が分かれる。それと同じで、振れ幅はあるけれど、やはり"ビートル"であることは一緒。なんだかんだ言われつつも、結局は受け入れられていくのではないか。今ではそんな気がしている。
話を戻すと、タイプ1だってデビュー当初とモデル末期では実はデザインはまったく異なっていたし、ニュービートルも前/後期型で個性が分かれる。それと同じで、振れ幅はあるけれど、やはり"ビートル"であることは一緒。なんだかんだ言われつつも、結局は受け入れられていくのではないか。今ではそんな気がしている。
気になる日本上陸は来年初頭の予定である。となれば、今年の東京モーターショーには持ってきてくれるのでは? と、勝手ながら大いに期待しておこう。
(Text: Y.SHIMASHITA / Photo: Volkswagen Group Japan)