2011年の東京モーターショーでワールドプレミアを果たした「パサート オールトラック」を桂 伸一さんがヨーロッパで試乗。その出来映えは?
欧米で人気のセダン系クロスオーバーにフォルクスワーゲンとしてはじめて加わった新種が、「パサート オールトラック」である。日本はワゴンの需要はあるが、車高が高く走破性を求める向きがどれだけいるのか? 日本での反応を確認したい......そんな意味がこめられていたかのか、パサート オールトラックの世界デビューは昨年の東京モーターショーだった。
見た目はパサート ヴァリアントの背を高めた「クロスモデル(ポロ/ゴルフに用意される地上高を高めた仕様)」という認識。しかし外装は本格的なクロスオーバーを想像させる。アンダーガードの類とフェンダーカバーを加えることで、ヘビーデューティーさを強く意識させる。
地上高を165mmと標準のヴァリアントから30mm高め、駆動システムをオンデマンド4WDシステムの「4モーション」を採用した。
エンジンはガソリン/ディーゼルともに2種類用意される。日本に導入されるのはガソリン1種類のみ。211ps/28.6kgmのパフォーマンスを誇り、燃費にも優れる2.0TSI+6速DSGの組み合わせで上陸する。
このエンジン、すでにゴルフGTIでお馴染みの2L直噴ターボ。オールトラックの1.7トンの車重を感じさせない駆動力を誇るほか、キャンピングハウスやボートトレーラーを牽引するため、28.6kgmの最大トルクを1700〜5200rpmの広域で発生し続けるトルク重視のエンジン特性は、GTI以上に活きる。
雪を求めて向かった先はオーストリアのスノーリゾート、エルマウ。ミュンヘン空港でオールトラックを受け取り、まずはアウトバーンでドライの高速性能を確認する。
装着タイヤが標準のスポーツタイヤ(コンチネンタル・スポーツコンタクト3)からM+S(ピレリ・ソットゼロ)のオールシーズンに交換されたことで、乗り味に滑らかさがプラスされたぶん、ハンドリングから剛性感とシャープな特性は削られた。とはいえ、200km/hまで加速した高速直進性と安定性に、タイヤによる腰砕け等のマイナス要因はない。
雪を求めての旅だが、行けども行けども雪はなく、強い直射日光に肌が焼かれる。4WDシステムの4モーションは通常前輪駆動でスタートし、高速であれば10%程の駆動力が後輪に配分される。
駆動輪のスリップ率を感知して瞬時に前後の駆動配分を可変させるのが4モーションを司る「ハルデックスカップリング」の特性だが、いまやフルタイム4WDと遜色がない制御の速さに驚いた。
エルマウに到着すると路面は雪も氷も解けてザクザクのシャーベット状、あるいは水分をたっぷり含んだ土が泥粘地になった不安定な路面状況。だからこそ4モーションの威力が確認しやすいという幸運。
走行中に1輪が深い轍に落ちた瞬間に駆動力を失い、そこで4WDになるタイミングが一瞬遅れて制御されるのが"従来の特性"。ところが、車輪のどこかがグリップを失うと、瞬間に空転を感じるかどうかで即座に駆動力が伝わり脱出でき難し状況に陥らない。そんな路面状況とタイヤの空転による変化を0対100〜100対0とバリアブルに前後駆動配分を可変しながらグイグイ強引に突き進む頼もしさがある。
ティグアンやトゥアレグに採用されるオフロード用ESPの制御が左右輪のブレーキ制御などを加えて空転を抑え、ハラハラもドキドキもさせられることなく悪路を走破して行く。こういう場面に遭遇するユーザーには本当に頼れる1台といえるだろう。
乗り味に優れているのはオールシーズンタイヤの効果も大きいのだが、それ以外でも「ノーマル」「スポーツ」「コンフォート」と3段階に可変するダンパーの減衰力が明確にハンドリングと乗り味に個性を提供する。標準装着のスポーツタイヤであれば、峠や高速でより高いコーナリング速度を可能にして走行シーンを楽しくするに違いない。
0-100km/h加速は7.8秒。最高速度は212km/hに呆気なく到達する。燃費は8.5L/100km、つまり1Lあたり12kmほどだが、移動する速度や峠でアクセルを頻繁に床まで踏み込んだことを考えると納得の数値である。
日本へは夏頃に上陸予定。最上級のパサートは道を選ばない"オールランダー"ということだった。来期の冬には日本でもその潜在能力を見せつけてくれるだろう。
(Text by Shinichi Katsura)
欧米で人気のセダン系クロスオーバーにフォルクスワーゲンとしてはじめて加わった新種が、「パサート オールトラック」である。日本はワゴンの需要はあるが、車高が高く走破性を求める向きがどれだけいるのか? 日本での反応を確認したい......そんな意味がこめられていたかのか、パサート オールトラックの世界デビューは昨年の東京モーターショーだった。
見た目はパサート ヴァリアントの背を高めた「クロスモデル(ポロ/ゴルフに用意される地上高を高めた仕様)」という認識。しかし外装は本格的なクロスオーバーを想像させる。アンダーガードの類とフェンダーカバーを加えることで、ヘビーデューティーさを強く意識させる。
地上高を165mmと標準のヴァリアントから30mm高め、駆動システムをオンデマンド4WDシステムの「4モーション」を採用した。
エンジンはガソリン/ディーゼルともに2種類用意される。日本に導入されるのはガソリン1種類のみ。211ps/28.6kgmのパフォーマンスを誇り、燃費にも優れる2.0TSI+6速DSGの組み合わせで上陸する。
このエンジン、すでにゴルフGTIでお馴染みの2L直噴ターボ。オールトラックの1.7トンの車重を感じさせない駆動力を誇るほか、キャンピングハウスやボートトレーラーを牽引するため、28.6kgmの最大トルクを1700〜5200rpmの広域で発生し続けるトルク重視のエンジン特性は、GTI以上に活きる。
雪を求めて向かった先はオーストリアのスノーリゾート、エルマウ。ミュンヘン空港でオールトラックを受け取り、まずはアウトバーンでドライの高速性能を確認する。
装着タイヤが標準のスポーツタイヤ(コンチネンタル・スポーツコンタクト3)からM+S(ピレリ・ソットゼロ)のオールシーズンに交換されたことで、乗り味に滑らかさがプラスされたぶん、ハンドリングから剛性感とシャープな特性は削られた。とはいえ、200km/hまで加速した高速直進性と安定性に、タイヤによる腰砕け等のマイナス要因はない。
雪を求めての旅だが、行けども行けども雪はなく、強い直射日光に肌が焼かれる。4WDシステムの4モーションは通常前輪駆動でスタートし、高速であれば10%程の駆動力が後輪に配分される。
駆動輪のスリップ率を感知して瞬時に前後の駆動配分を可変させるのが4モーションを司る「ハルデックスカップリング」の特性だが、いまやフルタイム4WDと遜色がない制御の速さに驚いた。
エルマウに到着すると路面は雪も氷も解けてザクザクのシャーベット状、あるいは水分をたっぷり含んだ土が泥粘地になった不安定な路面状況。だからこそ4モーションの威力が確認しやすいという幸運。
走行中に1輪が深い轍に落ちた瞬間に駆動力を失い、そこで4WDになるタイミングが一瞬遅れて制御されるのが"従来の特性"。ところが、車輪のどこかがグリップを失うと、瞬間に空転を感じるかどうかで即座に駆動力が伝わり脱出でき難し状況に陥らない。そんな路面状況とタイヤの空転による変化を0対100〜100対0とバリアブルに前後駆動配分を可変しながらグイグイ強引に突き進む頼もしさがある。
ティグアンやトゥアレグに採用されるオフロード用ESPの制御が左右輪のブレーキ制御などを加えて空転を抑え、ハラハラもドキドキもさせられることなく悪路を走破して行く。こういう場面に遭遇するユーザーには本当に頼れる1台といえるだろう。
乗り味に優れているのはオールシーズンタイヤの効果も大きいのだが、それ以外でも「ノーマル」「スポーツ」「コンフォート」と3段階に可変するダンパーの減衰力が明確にハンドリングと乗り味に個性を提供する。標準装着のスポーツタイヤであれば、峠や高速でより高いコーナリング速度を可能にして走行シーンを楽しくするに違いない。
0-100km/h加速は7.8秒。最高速度は212km/hに呆気なく到達する。燃費は8.5L/100km、つまり1Lあたり12kmほどだが、移動する速度や峠でアクセルを頻繁に床まで踏み込んだことを考えると納得の数値である。
日本へは夏頃に上陸予定。最上級のパサートは道を選ばない"オールランダー"ということだった。来期の冬には日本でもその潜在能力を見せつけてくれるだろう。
(Text by Shinichi Katsura)