これまでハッチバックだけだった「ゴルフR」にヴァリアント版が登場。その刺激的な走りを試してみる。
ゴルフのスポーツモデルといえば、すぐに「GTI」や「R」の名前が思い浮かぶが、そのどちらもこれまではハッチバックしか選べなかった。
ライフスタイルを考えるとヴァリアント(ステーションワゴン)は外せないが、スポーツモデルの興奮は諦めきれない......。そんな走りにこだわるファンにとって、この「ゴルフRヴァリアント」の登場はまさに朗報だろう。
待望のスポーツワゴンがどんなスペックの持ち主なのかは
「最強」のゴルフヴァリアントは最上級モデルでもある。「R」のロゴが刺繍された専用のレザーシートをはじめ、フラットボトムのステアリングホイール、目盛りが白く彩られたメーターなど、標準のゴルフヴァリアントとの違いは一目瞭然である。
純正ナビゲーションシステムの「Discover Pro」やリヤビューカメラ、アダプティブシャシーコントロール「DCC」、プリクラッシュシステム「Front Assist」に加えて、ゴルフシリーズとしては初となる「ブラインド スポット ディテクション」や「リヤトラフィックアラート」を標準で装着するなど、まさに至れり尽くせりの仕様なのだ。
期待を胸に運転席に陣取ると、R専用のトップスポーツシートが適度なタイトさで身体をサポートしてくれる。といっても、窮屈さはなく、乗降性も悪くないのがうれしいところだ。
エンジンに火を入れると、やや太めのエキゾーストノートが、キャビンの静寂を破った。
さっそく走り出すと、やや硬めとはいえ、文化的な乗り心地を示すゴルフRヴァリアント。そういえばハッチバックのゴルフRも、十分許容できる乗り心地だった。ドライビングプロファイル機能で「コンフォート」を選ぶと、路面からのショックはマイルドになるものの、前後方向の動き、いわゆるピッチングが目立つようになるので、個人的には「ノーマル」のほうが好ましいと思った。
走行中は、静粛性が自慢の標準モデルとは打って変わって、アクセルペダルを踏むたびに低く太いサウンドがキャビンに響き渡る。最近のスポーツモデルは「サウンドジェネレーター」により"効果音"を合成しているが、4気筒らしからぬ音を楽しめるという意味では、なかなかの演出である。
これで音だけ威勢が良くては困るのだが、そんな心配は無用、ゴルフRヴァリアントの加速は効果音よりも速い。2.0 TSIエンジンは、湿式6速DSGと4MOTIONとの組み合わせにより、1560kgのゴルフRヴァリアントをスムーズかつ力強く発進させる。2000rpm前後の常用域では実に豊かなトルクを発揮するおかげで、街中でのちょっとした加速も右足に少し力を加えるだけで済む。なんとも扱いやすい性格である。
しかしそれはゴルフRヴァリアントの一面に過ぎない。高速道路の合流や追い越しなどの場面で、その気になってアクセルペダルを踏み込むと、4つのタイヤがしっかりと路面を捉え、安定しきったまま、スピードメーターの数字は一気に上がっていく。とくに3000rpmあたりからの加速は痛快そのもので、レッドゾーンの6500rpmを超え、シフトアップする6800rpmまでその勢いが続く。もちろん、フォルクスワーゲン自慢のDSGだけに、シフトアップの際に加速が途切れることはなく、あっというまに流れをリードするスピードに達してしまうのだ。
高速でもやや硬めの乗り心地は変わらないが、そのぶんフラット感は高い。4MOTIONのおかげでタイヤの接地感も高く、優れた直進性とあいまって長距離移動はお手のものだ。
高速道路からワインディングロードにステージを移すと、ゴルフRヴァリアントはさらに生き生きとした動きを見せてくれる。ドライビングプロファイル機能で「レース」モードを選ぶと、一般道はもとより高速でも硬すぎるサスペンションが、コーナーでしっかりと踏ん張り、抜群の安定感を示すのだ。そのうえ、4MOTIONが強力なエンジンパワーを余すところなく路面に伝えるおかげで、コーナーからの脱出は素早くスムーズである。
意外なのがそのハンドリング。ハッチバックよりも60kg車両重量が増えているにもかかわらず、むしろハッチバックよりも軽快に思えたのだ。車検証を見ると、ゴルフRヴァリアントの前後軸重は前:900kg、後:660kg。ゴルフRが前:910kgと後:590kgだから、ワゴン化により前後の重量配分が改善されたからだろうか。
ひとたび走り始めると、ヴァリアントであることを忘れてしまう。サーキットを走らせても楽しいだろうな......そんな期待を抱かせるゴルフRヴァリアントなのである。
その一方で、ハッチバックと比べてしまうとボディがややユルく思えるのは事実で、とくに道路の目地段差を越えたときなどにハッチバックとの違いを意識させられる。それでも、これで広いラゲッジスペースが手に入るのだから、目くじらを立てるほどの話ではない。
唯一残念なのが、標準のゴルフヴァリアントに用意されているラゲッジネットに対応しないこと。ラゲッジネットが装着されないばかりか、ラゲッジネットを固定するフックが天井にないため、パーツだけ購入しても利用できないのだ。荷室容量は標準モデルと同じだけに、なんとも惜しいところである。まぁ、大部分のユーザーにとって、あまり問題はならないことかもしれないが......。
ちなみに、試乗時の燃費は、高速の流れに乗って走ったときが14km/L弱をマークし、都内中心の利用でも8km/L台を保った。全体では11.5km/Lだった(いずれも、車両のコンピューターの数値)。高速中心とはいえ、このパフォーマンスを考えると、期待以上の好燃費といえるだろう。
ハッチバックのゴルフRと互角の性能を手に入れたといえるゴルフRヴァリアント。機能性、走りのどちらも諦めたくない欲張りなゴルフファンにとっては、まさに理想の一台といえる存在である。
(Text by S.Ubukata / Photos by M.Arakawa)
※ギャラリーはこちら
ゴルフのスポーツモデルといえば、すぐに「GTI」や「R」の名前が思い浮かぶが、そのどちらもこれまではハッチバックしか選べなかった。
ライフスタイルを考えるとヴァリアント(ステーションワゴン)は外せないが、スポーツモデルの興奮は諦めきれない......。そんな走りにこだわるファンにとって、この「ゴルフRヴァリアント」の登場はまさに朗報だろう。
待望のスポーツワゴンがどんなスペックの持ち主なのかは
「最強」のゴルフヴァリアントは最上級モデルでもある。「R」のロゴが刺繍された専用のレザーシートをはじめ、フラットボトムのステアリングホイール、目盛りが白く彩られたメーターなど、標準のゴルフヴァリアントとの違いは一目瞭然である。
純正ナビゲーションシステムの「Discover Pro」やリヤビューカメラ、アダプティブシャシーコントロール「DCC」、プリクラッシュシステム「Front Assist」に加えて、ゴルフシリーズとしては初となる「ブラインド スポット ディテクション」や「リヤトラフィックアラート」を標準で装着するなど、まさに至れり尽くせりの仕様なのだ。
期待を胸に運転席に陣取ると、R専用のトップスポーツシートが適度なタイトさで身体をサポートしてくれる。といっても、窮屈さはなく、乗降性も悪くないのがうれしいところだ。
エンジンに火を入れると、やや太めのエキゾーストノートが、キャビンの静寂を破った。
さっそく走り出すと、やや硬めとはいえ、文化的な乗り心地を示すゴルフRヴァリアント。そういえばハッチバックのゴルフRも、十分許容できる乗り心地だった。ドライビングプロファイル機能で「コンフォート」を選ぶと、路面からのショックはマイルドになるものの、前後方向の動き、いわゆるピッチングが目立つようになるので、個人的には「ノーマル」のほうが好ましいと思った。
走行中は、静粛性が自慢の標準モデルとは打って変わって、アクセルペダルを踏むたびに低く太いサウンドがキャビンに響き渡る。最近のスポーツモデルは「サウンドジェネレーター」により"効果音"を合成しているが、4気筒らしからぬ音を楽しめるという意味では、なかなかの演出である。
これで音だけ威勢が良くては困るのだが、そんな心配は無用、ゴルフRヴァリアントの加速は効果音よりも速い。2.0 TSIエンジンは、湿式6速DSGと4MOTIONとの組み合わせにより、1560kgのゴルフRヴァリアントをスムーズかつ力強く発進させる。2000rpm前後の常用域では実に豊かなトルクを発揮するおかげで、街中でのちょっとした加速も右足に少し力を加えるだけで済む。なんとも扱いやすい性格である。
しかしそれはゴルフRヴァリアントの一面に過ぎない。高速道路の合流や追い越しなどの場面で、その気になってアクセルペダルを踏み込むと、4つのタイヤがしっかりと路面を捉え、安定しきったまま、スピードメーターの数字は一気に上がっていく。とくに3000rpmあたりからの加速は痛快そのもので、レッドゾーンの6500rpmを超え、シフトアップする6800rpmまでその勢いが続く。もちろん、フォルクスワーゲン自慢のDSGだけに、シフトアップの際に加速が途切れることはなく、あっというまに流れをリードするスピードに達してしまうのだ。
高速でもやや硬めの乗り心地は変わらないが、そのぶんフラット感は高い。4MOTIONのおかげでタイヤの接地感も高く、優れた直進性とあいまって長距離移動はお手のものだ。
高速道路からワインディングロードにステージを移すと、ゴルフRヴァリアントはさらに生き生きとした動きを見せてくれる。ドライビングプロファイル機能で「レース」モードを選ぶと、一般道はもとより高速でも硬すぎるサスペンションが、コーナーでしっかりと踏ん張り、抜群の安定感を示すのだ。そのうえ、4MOTIONが強力なエンジンパワーを余すところなく路面に伝えるおかげで、コーナーからの脱出は素早くスムーズである。
意外なのがそのハンドリング。ハッチバックよりも60kg車両重量が増えているにもかかわらず、むしろハッチバックよりも軽快に思えたのだ。車検証を見ると、ゴルフRヴァリアントの前後軸重は前:900kg、後:660kg。ゴルフRが前:910kgと後:590kgだから、ワゴン化により前後の重量配分が改善されたからだろうか。
ひとたび走り始めると、ヴァリアントであることを忘れてしまう。サーキットを走らせても楽しいだろうな......そんな期待を抱かせるゴルフRヴァリアントなのである。
その一方で、ハッチバックと比べてしまうとボディがややユルく思えるのは事実で、とくに道路の目地段差を越えたときなどにハッチバックとの違いを意識させられる。それでも、これで広いラゲッジスペースが手に入るのだから、目くじらを立てるほどの話ではない。
唯一残念なのが、標準のゴルフヴァリアントに用意されているラゲッジネットに対応しないこと。ラゲッジネットが装着されないばかりか、ラゲッジネットを固定するフックが天井にないため、パーツだけ購入しても利用できないのだ。荷室容量は標準モデルと同じだけに、なんとも惜しいところである。まぁ、大部分のユーザーにとって、あまり問題はならないことかもしれないが......。
ちなみに、試乗時の燃費は、高速の流れに乗って走ったときが14km/L弱をマークし、都内中心の利用でも8km/L台を保った。全体では11.5km/Lだった(いずれも、車両のコンピューターの数値)。高速中心とはいえ、このパフォーマンスを考えると、期待以上の好燃費といえるだろう。
ハッチバックのゴルフRと互角の性能を手に入れたといえるゴルフRヴァリアント。機能性、走りのどちらも諦めたくない欲張りなゴルフファンにとっては、まさに理想の一台といえる存在である。
(Text by S.Ubukata / Photos by M.Arakawa)