「Porsche 968 CS (Club Sport)」は、おそらくもっとも希少な“トランスアクスル”ポルシェだ。240PSと軽量化されたボディで、3L4気筒エンジンの性能を存分に発揮する。
※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

速く豪華なクーペで収益を上げていたポルシェだが、ブランドの魅力をさらに引き上げてきたのがスポーツモデルだった。スポーツとは、常にサーキットでの速いラップタイムを意味し、それは軽量化によってのみ実現可能だった。ポルシェは90年代にもクラブスポーツモデルのコンセプトを継承し、卓越したモデルとして閃光のような速さを誇る968 CSを生み出した。
このモデルは、当時最も排気量の大きい3.0L4気筒エンジンを搭載していた。4つのシリンダーの排気量は、それぞれ750ccで、4つを合わせると3.0Lの排気量になる。トルクのあるエンジンとトランスアクスル式(エンジンは前、ギアボックスは後)の組み合わせにより、968 CSは高速走行を好むドライバーにぴったりのクルマだった。
968 CSの特徴
「968」のフロントは「944」よりも「928」に近く、「993」の要素も取り入れている。われわれのテストドライバーは、968 CSを「ポルシェのスポーツカーの理念に非常に近い走りをする」クルマだと表現している
他のスポーツモデルと異なり、装備の簡素化がクラブスポーツの価格を低く抑えているのも特徴のひとつで、「ポルシェクラブ968」によれば、「CSが968を最も手頃な価格で楽しむ方法だった」とのことだ。

当時、ポルシェは販売不振だった「968」を、968 CSでテコ入れしようとしていた。装備を簡素化することで車重を軽くし、販売価格を引き下げた。パワーウィンドー、ミラー、シート調整機構は廃止され、エアバッグの代わりに3本スポークステアリングホイールが採用され、座席は軽量バケットシートに変更された。そして、後部座席の代わりに、簡素な荷物用ネットが備え付けられた。968 CSは標準で車高が20mm低く、17インチホイールも選択可能だった。1994年には、オプションでリミテッドスリップディファレンシャルが追加された。
968 CSの性能
性能面では、CSはより高性能な968モデルと互角の性能を発揮した。その重量は1,320kgで、3L4気筒エンジンは240PSを発揮、最高速は252km/hに達した。軽量化はサーキットで大きなメリットとなり、前後輪の重量配分のバランスもその利点となっている。因みに車重は、通常の968 Coupeが1370kg、Turbo RSが1300kg弱、Turbo Sが1300kgだ。
968 CSテクニカルデータ
パワーユニット | 直列4気筒DOHCエンジン |
排気量 | 2,990cc |
最高出力 | 240PS/6,200rpm |
最大トルク | 305Nm/4,100rpm |
0-100km/h加速 | 6.5秒 |
最高速 | 252km/h |
駆動系 | FR(トランスアクスル)/6MT |
全長×全幅×全高 | 4,320×1,735×1,275mm |
乾燥重量 | 1,320kg |
新車当時の価格(1995年) | 80,890ドイツマルク(約683万円) |
購入時に注意すべき点は?
購入前には、点検記録簿などの付属書類のすべてを確認することが重要だ。メンテナンスを怠った個体は、安物買いの銭失いにつながる。タイミングベルトは80,000kmごと(または4年ごと)に交換されているか? 車はサーキットで酷使されていないか?

968 CSの価格は、ポルシェらしく、豪華なクーペよりもやや高めだ。いずれにせよ、968 CSは968で最も希少なモデルで、ポルシェクラブ968によれば、11,763台が製造された。現在、フルノーマルのポルシェは人気が高く、価格も高値安定傾向で、今後ますます値上がりすることが予想される。
結論
968シリーズは、通常の968 Couoe、Turbo S、Turbo RSといったバリエーションがあるが、純粋なトランスアクスル ポルシェを運転したいなら、968 CSが最適な選択だ。
(Text by Matthias Brügge / Photos by Roman Raetzke[AUTO BILD])