“VWポルシェ”も1千万円超
ヨーロッパでは「ヤングタイマー」といわれる、登場から20〜30年のモデルが市場で過熱している。2023年10月末に開催されたイタリア最大級・欧州でも屈指のヒストリックカー・ショー「アウトモト・デポカ」でも、それは確認できた。例として、販売終了から3年しか経過していない「アバルト124スパイダー」の特別仕様に円換算で約1600万円のプライスタグが付けられていた。
そのアウトモト・デポカで、ポルシェのイタリア法人は、5つのメーカー公認クラブにスタンドを提供するというスタイルで参加した。
筆者が訪問してみると、「356」「911/912」のクラブとともに、より若いポルシェの愛好会が3つ出展していた。筆者個人のことをいえば、そうしたモデルはけっして嫌いではない。
まずは前述のヤングタイマーの範疇とするには若干“年上”だが、914の愛好会だ。水色の1973年「914 2.0」のオーナーはマッシモ・ビアジェッティ氏。「イタリア914-ボクスター-ケイマン保存会」の会長でもある。
普段は技術職に従事しているというマッシモ氏は「発売当初、914発売の評価は、(911と比較して)限定的でした」と振り返るものの、「ボクスターに先駆けたミドシップ・レイアウトとその操縦性は、ポルシェ史上無視できないものです」と語る。
マッシモ氏によると914の人気は近年上昇中で、米国ではユーロ換算で3万〜3万5千ユーロ(約470万〜550万円)での取引が見られるという。欧州ではそこまで高額ではないが、筆者が中古車検索サイト「オートスカウト24」で確認したところ、すでに12万ユーロ(約1800万円)台が中心価格帯だ。フォルクスワーゲン(VW)と共同開発したことによる“ワーゲン・ポルシェ”という新車時の通称とは、ミスマッチともいえるプライスといえる。
その隣では、設立10年という「イタリア924-944-928-968保存会」の役員、アンドレア・アヴァンツィ氏が迎えてくれた。1962年生まれの彼は、イタリアを代表するスポーツカー生産地であるマラネッロ出身。そのため早くからスポーツモデルに目覚めた。911系も所有したことがあるが、「トランスアクスル搭載モデルの重量配分と、誰でも気軽に日常乗れるところに魅了され」、夫人とともにクラブに入会したという。
隣にあったのは、なんとカイエンの保存会だった。対応してくれたロレンツォ氏は1958年生まれ。若き日に「アルファ・ロメオ・ジュリア」で運転を始め、レンジローバーを2台乗り継いだあとカイエンと出会ったという。「カイエンはプレミアムSUVというカテゴリーの先駆者だったのです」と、自動車史におけるその存在意義を強調する。
さらにロレンツォ氏は、こう話した。「初代は、すでに古典車申請が可能です」。補足すると、イタリアでは登録後20年が経過し、オリジナル状態が維持され、かつ認証機関(イタリア古典車協会など)が指定したモデルなら、ヒストリックカーと認められる可能性がある。初代カイエンの一部モデルも入っているのだ。認定されれば、自動車税・保険などで大きな優遇措置を受けることができる。そのため彼によれば、2006年モデルで3万ユーロの値札が付いた例があるという。
意外な副次効果
今回対応してくれた彼らは見るからに純粋なエンスージアストであり、売却益への関心は薄いことが会話から窺えた。逆に、ヤングタイマー人気による取引価格高騰は、コレクションを増やそうにも、憧れのモデルに手が届きにくくなるという苦しみである。
ただし、ブームには一定の効果がある、とも彼らは指摘する。第一は従来若い歴史モデルにあまり関心がなかったメーカーのヤングタイマー車へのサービスやアシスタンスが充実したことである。
第2は、パーツ入手に広い選択肢ができたことだ。イタリア中部ピストイアの熟練ポルシェ・レストアラー「チヴィコチンクエ」のスタッフによると市場が拡大したことにより、プロの目にも高品質なサードパーティー製が多数出現。ドア内張りのパーツを例にとると、純正品が2千ユーロするのに対し、約半値の1000ユーロ(約15万円)で入手可能という。
そして最後に、ふたたびポルシェ保存会の人々に話を戻せば、「不人気車にもスポットが当たって、仲間が探しやすくなった」こともラッキーだという。実際に、紹介した各クラブのスタンドには、問い合わせにやって来る人々が絶えなかった。
かくもヤングタイマー・ブームは、意外な福音をもたらしているのである。
(report:大矢アキオAkio Lorenzo OYA・photo:大矢麻里 Mari OYA/Akio Lorenzo OYA)