ポルシェは、われわれをフル電動スタディモデル「Missoin R」の初ドライブに招待してくれた。レーシングスーツに身を包み、ポルシェのトレーニングコースをラップする。
※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。
ポルシェの使命は明確だ
Mission R——IAA(ミュンヘンモーターショー)でワールドプレミアされたスタディモデルによって、ツッフェンホイザーはモータースポーツの旅がどこへ向かっているのかを示したいと考えている。正確には、“カスタマースポーツ”においてだ。
1,088PS、4WD、重量わずか1,500kg、2.5秒以下で0から100km/hに到達、最高速度は300km/h以上。
つまり、「911 GT3 Cup」レベルの性能を持つ、この電動スポーツカーを、ハイスピードに果敢に挑む行動力のある顧客層にも受け入れられるようにしたいのだ。そして、そのために多くの努力を重ねてきた。
ミュンヘンモーターショーで、ポルシェが説明してくれたセオリーは、ここまでだ。その数カ月後、われわれは、ロサンゼルスのエクスペリエンスセンターにあるポルシェ専用のコースで、この電動スポーツに再会した。
ここで、彼らの言いぶんが本当かどうかを示すのが、文字どおりMission Rのミッション(役目)だ。
少なくとも、ある程度は……。残念ながら、この100万ドル(約1億1千万円)のコンセプトカーは、現状では、100km/h以上出すことはできないからだ。
コックピットに入るのは至難の業
このMission Rは、「Taycan」より100V高い900Vの技術で動いている。それだけに、万一の場合には、命にかかわることもある。運転が始まる前に、緊急事態が発生した場合の対応について説明があった。アスファルトに触れずにコックピットから飛び出す。あとでわかったことだが、それは私には不可能な芸当だ。
レーシングスーツに耐火シャツ、ブーツ、グローブ、ヘルメットを装着し、コックピットに入る。呼吸が苦しかった。立ち上がることもむずかしい。私は標準的な体型ではないのかもしれない……。
その逆境を、未来のレーシングカーの1周目が補って余りあるものにしてくれるはずだ。もし運転できれば……。
しかし、大柄の私がMission Rを操るのは不可能というのがすぐに明らかになった。
40分間のバトルができるバッテリー
そのため、プランBを選択することにした。コックピットから這い出した私は、助手席に向かう。クッションはないが、そのぶんわずかにスペースには余裕がある。
運転席に収まるのはラース・カーン。ポルシェのテストドライバーだ。テストドライバー兼エンジニアであるラースが、軽快にハンドルを握り、いくつかのスイッチを押すと、いよいよ電動砲丸のテストが始まる。
ピットレーンから、コースに出ると、ラースは迷うことなく思い切りパワーペダルを踏み込んだ。Mission Rは、この世の終わりかと思えるほどものすごい加速で前方に突き進み、私を硬いバケットシートに押し付ける。
ダイレクトなレスポンスと瞬発力。つま先をピクリと動かすだけで、ワイルドな加速が私を襲う。
ジェット機と路面電車を掛け合わせたような、大きな音と唸り声を上げながら、Mission Rはコースを駆け抜け、警察犬のように鋭敏にステアリング操作に反応し、カーブを次々と切り開いていく。
助手席の私でも、このコンセプトカーに漲るエネルギーは十分に感じることができた。ちなみに、82kWhのバッテリーにより40分間のバトルに耐えられるそうだ。
(Text by Michael Gebhardt / Photos by Porsche AG)
「Auto Bild JAPAN Web」は、世界最大級のクルマ情報サイト「Audo Bild」の日本版。いち早い新車情報や高品質なオリジナル動画ビデオを満載。さらに、チューニングカー、ネオクラシックなど世界のクルマ情報は「Auto Bild JAPAN Web」でゲット!