「EV for all」から「チャイナ・スピード」まで
![画像: IAAモビリティー・ミュンヘンのメッセ会場にて。「フォルクスワーゲンID. GTIコンセプト」。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/1a4bb1c0202aca341c16c77f27af104aa9089682_xlarge.jpg)
IAAモビリティー・ミュンヘンのメッセ会場にて。「フォルクスワーゲンID. GTIコンセプト」。
自動車を含むモビリティーに焦点を当てた展示会「IAAモビリティー」が、ドイツ南部ミュンヘンで2023年9月5日から10日に開催された。同イベントは、2019年までフランクフルトで開かれていたモーターショーが都市と形態を変えて2021年から再発足したものである。
2023年は前回同様、BtoBを対象とした有料のメッセ会場と、一般来場者のために無料開放される市内会場「オープンスペース」の2つで行われた。
![画像: ミュンヘンのオデオン広場、VWブランドの市内パビリオンはルートヴィヒ1世像を囲むように設けられた。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/2aa73f9c44cad8d8cf111959004b5dd77cb53687_xlarge.jpg)
ミュンヘンのオデオン広場、VWブランドの市内パビリオンはルートヴィヒ1世像を囲むように設けられた。
VWグループは4日の報道関係者公開日に、メッセでプレゼンテーションを実施した。内容は電動化にとどまらず広範囲にわたるものだった。
VWブランドのトーマス・シェーファーCEOによると、従来のMQBプラットフォームを使用した車両の累計生産台数は、2012年以来すでに約4500万台に達したという。
いっぽうでVWグループのオリヴァー・ブルーメCEOは、次世代のBEV用プラットフォームであるMEB+を、プレミアム・ラグジュアリー用のPPEプラットフォームと合わせて、2024年初頭から2025年に発表することを明らかにした。MEB+は10%の航続距離向上と、20分以内のチャージングタイムを実現する。
いっぽうで、2025年に投入予定のBEV「ID2. ALL」は、2万5千ユーロ(約395万円)以下で販売する予定で、「すべての人にEモビリティをもたらす」と宣言した。
![画像: 「フォルクスワーゲンID2. ALLコンセプト」。生産型は普及型BEVとして、2025年に2万5000ユーロ(約395万円)以下での発売が予定されている。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/937e3992e326eb7e55a7bbeac892f05feaeb0b83_xlarge.jpg)
「フォルクスワーゲンID2. ALLコンセプト」。生産型は普及型BEVとして、2025年に2万5000ユーロ(約395万円)以下での発売が予定されている。
![画像: 「ID.2 ALLコンセプト」。航続距離は450km。2023年3月に公開された。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/4aca26286dc186908eccf8f2a6276d019628f44e_xlarge.jpg)
「ID.2 ALLコンセプト」。航続距離は450km。2023年3月に公開された。
![画像: メッセ会場に展示された「フォルクスワーゲンID.7」。IDシリーズ初の3ボックスとして2023年1月のラスベガスCESでデビューした。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/b9d528b6be42d445ad992e85ad0403a3761eadea_xlarge.jpg)
メッセ会場に展示された「フォルクスワーゲンID.7」。IDシリーズ初の3ボックスとして2023年1月のラスベガスCESでデビューした。
![画像: 市内パビリオンにディスプレイされた「フォルクスワーゲンID.7」。「プロ」と名づけられた仕様は最高出力210kW・最大トルク545Nm。ロングレンジ仕様の航続距離は約700kmに達する。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/13ee9973ba246ec573a4a19d1bb951edb3d6376a_xlarge.jpg)
市内パビリオンにディスプレイされた「フォルクスワーゲンID.7」。「プロ」と名づけられた仕様は最高出力210kW・最大トルク545Nm。ロングレンジ仕様の航続距離は約700kmに達する。
コンファレンスの説明は、インフラストラクチャーの整備にも及んだ。VWグループのトーマス・シュマール技術担当取締役は、充電ネットワークを米欧中で展開中であることを説明。ファストチャージャー4万基を2025年までに設置する計画であることを明らかにするとともに、すでにその半数以上が整備済みであることを報告した。
![画像: VWグループのチャージング・プロバイダー「エッリ(Elli)」によるステーション用充電器。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/89358d6699a36ebdb673dbc70244fc6524c54e3f_xlarge.jpg)
VWグループのチャージング・プロバイダー「エッリ(Elli)」によるステーション用充電器。
VWグループの電池セル会社「PowerCo」は、形状を共通化したバッテリー「ユニファイド・セル」でコストダウンに貢献。それはグループ内の車種80%で用いられる予定だ。また、生産するギガファクトリーを、ドイツ、スペインそしてカナダに計画中である。
プレゼンテーションを締めたのは、ラルフ・ブラントシュッテッター中国担当役員だった。彼は、中国がインテリジェント・コネクテッド・ヴィークル(ICV)時代を主導するマーケットとなるとし、VWがそれに引き続き対応してゆくと決意を示した。
そして「中国で、中国のために(在中国 為中国)」というモットーを流暢な現地語で紹介。SAIC、FAWといった長年の合弁先企業に加え、地元のテック企業とも連携し、より中国のカスタマー嗜好に応えてゆくことを明らかにした。さらに2023年夏に提携したEVブランド 小鵬(シャオペン)汽車のもと、2026年からミッドサイズ・モデル2車種を生産しVWブランドで導入することも説明。「VWはチャイナ・スピードを加速させる」と締めた。
EV時代のGTI & 新型パサートが公開される
VWブランドの展示車を紹介しよう。メッセ会場では「ID. GTIコンセプト」が世界初公開された。前述のID. 2ALLを基に、BEV時代のスポーツモデルを模索したものだ。末尾の「I」は、1976年GTIがインジェクションを意味していたのに対し、「インテリジェンス」であるとメーカーは説明する。また、現行ゴルフGTIの電子制御油圧式フロント・ディファレンシャルロックを超える統合制御システムによって、車両のキャラクターを無限に変化させることが可能という。発売は2026年の予定だ。
![画像1: 「フォルクスワーゲンID. GTIコンセプト」](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/1ec7759ec764ef88f2b21a8edc827e7a85c3c3eb_xlarge.jpg)
「フォルクスワーゲンID. GTIコンセプト」
![画像2: 「フォルクスワーゲンID. GTIコンセプト」](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/62c2892e37dd9caf60f5a19f2489dfffae14a643_xlarge.jpg)
「フォルクスワーゲンID. GTIコンセプト」
![画像3: 「フォルクスワーゲンID. GTIコンセプト」](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/b000a46f8ded4db430563442d32574361221b65c_xlarge.jpg)
「フォルクスワーゲンID. GTIコンセプト」
いっぽう、ミュンヘン市内オデオン広場には、VWブランドの2階建てバピリオンが設営され、一般に開放された。その1階では、9代目「パサート・ヴァリアント」が世界初公開された。プラットフォームにはMQB Evoを採用。全長は14センチメートルも長くなり、後席を畳んだ場合最大1920リットルのラゲッジスペースが出現する。
ボディタイプはステーションワゴン、変速機はATのみで展開される。だがパワーユニットはガソリンエンジン2種類、ディーゼルエンジン3種類、マイルドハイブリッド1種類、プラグインハイブリッド2種類の計8種類が用意される。ここからは、VWブランドが内燃機関車に関しても、引き続き一定の市場と需要を期待していることが認識できる。
![画像1: 「フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアントeハイブリッド」](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/fbc6c53dce54a1d7ffe8379bdad1f9e458bbc321_xlarge.jpg)
「フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアントeハイブリッド」
![画像2: 「フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアントeハイブリッド」](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/c933669cb894840a673c7127d8fd27633e038919_xlarge.jpg)
「フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアントeハイブリッド」
![画像3: 「フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアントeハイブリッド」](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/bc4b2c7419f4e7c7526d15ca1dcf6273eb16a1c8_xlarge.jpg)
「フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアントeハイブリッド」
![画像4: 「フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアントeハイブリッド」](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/5445c9d869c2ac6a6ddd53c0fbf508012c768672_xlarge.jpg)
「フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアントeハイブリッド」
それら以上に、筆者は2つのVWらしさを今回のIAAミュンヘンで発見した。
![画像: 市内会場に展示された「トゥアレグR eハイブリッド」。車外からスマートフォンを介して駐車操作可能な「パークアシスト・プロ」も搭載されている。価格は93,870ユーロ(約1475万円)。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/790463b9809b5868ba0d03d9ea499b0332bcd3d7_xlarge.jpg)
市内会場に展示された「トゥアレグR eハイブリッド」。車外からスマートフォンを介して駐車操作可能な「パークアシスト・プロ」も搭載されている。価格は93,870ユーロ(約1475万円)。
![画像: 次期「フォルクスワーゲン・ティグアンeハイブリッド」はカムフラージュのまま市内会場に展示された。全長・全高ともに増すが、全高とホイールベースは同一である。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/4fa7dd90c86526f8b8574f378c9fef809bb855cb_xlarge.jpg)
次期「フォルクスワーゲン・ティグアンeハイブリッド」はカムフラージュのまま市内会場に展示された。全長・全高ともに増すが、全高とホイールベースは同一である。
第1はカットモデルで紹介されていた「パフォーマンス・リアeドライブ」だ。これはID.7の後輪駆動に搭載されるものである。モーター用の油冷循環には電動ポンプを省略。代わりにギアの回転とコンポーネンツの形状最適化だけで行っている。これによって、エナジーセービングにつながるというわけだ。ステーターの外側に設けられた冷却板もそれを補助する。かつて、初代VWビートルのウォッシャー液作動は、モーターに頼らず、スペアタイヤの空気圧を利用していた。開発担当者やサプライヤーがそれを意識したとは考えにくいが、可能な限りパーツを減らす精神が息づいているのであれば、それはメーカーのDNAといえよう。
![画像: 「パフォーマンス・リアeドライブ」のカットモデル。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/90a5dd66781897f93523770401e1adeb31d4442a_xlarge.jpg)
「パフォーマンス・リアeドライブ」のカットモデル。
ところでVWグループは、MEBのコンポーネンツやユニファイド・セルを先に発表があったフォードに加え、インドのマヒンドラ社にも供給する計画だ。かつてVW初代ビートルの全盛期、それをベースに、さまざまなバリエーションやスペシャルが世界中の外部メーカー、今日でいうサードパーティーによって造られた。電動車の時代でも「VW入ってる」の時代がやってくる。
![画像: VWグループの子会社で、ライドシェアリングを専門とする「モイア」のブースで。ID. BUZZをベースにした自動運転実験車。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/c4330249ce5f2013e9b2cac5ebe67d436fd5660d_xlarge.jpg)
VWグループの子会社で、ライドシェアリングを専門とする「モイア」のブースで。ID. BUZZをベースにした自動運転実験車。
![画像: 同上。すでに路上での実証実験を開始しているが、今回はVWグループ側の意向で、車内を見えないようにしたという。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/112875550cddfc1b3344a05f1d613042ace5030d_xlarge.jpg)
同上。すでに路上での実証実験を開始しているが、今回はVWグループ側の意向で、車内を見えないようにしたという。
![画像: こちらはドイツを代表するメガサプライヤーのひとつ「コンチネンタル」のブースで。ID.BUZZには、制御用コンピューターからタイヤまで計14のパーツを供給していることが説明されていた。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/25a30624d8d4bdfbf4bd6febed58925084f1b3bb_xlarge.jpg)
こちらはドイツを代表するメガサプライヤーのひとつ「コンチネンタル」のブースで。ID.BUZZには、制御用コンピューターからタイヤまで計14のパーツを供給していることが説明されていた。
![画像: VWブランド・パビリオンの一角には、人材募集コーナーが設けられていた。背景には、他の欧州諸国同様、ドイツも陥っている深刻なヒューマン・リソース不足があるのは明らかだ。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/cef9199cd2be19df7e2922a49a687c2992834554_xlarge.jpg)
VWブランド・パビリオンの一角には、人材募集コーナーが設けられていた。背景には、他の欧州諸国同様、ドイツも陥っている深刻なヒューマン・リソース不足があるのは明らかだ。
![画像: 市内パビリオンの一角に展示されたこのVWは…](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/08bf8e7a4cd48aefc130c08d3ce23a9fd0418479_xlarge.jpg)
市内パビリオンの一角に展示されたこのVWは…
![画像: 日本も共同制作に参画している3DCGテレビアニメ『ミラキュラス レディバグ&シャノワール』最新作の劇中車。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/eece57fa5cf5a05d66515c755112065cf3d7dd72_xlarge.jpg)
日本も共同制作に参画している3DCGテレビアニメ『ミラキュラス レディバグ&シャノワール』最新作の劇中車。
![画像: 『ミラキュラス レディバグ&シャノワール』の劇場公開版にちなんで、ポップコーンを無料配布するコーナーも設営された。ただいまスタッフにより“燃焼試験”中。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/27e6bf25cd69c7b89720bb222b3b6e96ea10315a_xlarge.jpg)
『ミラキュラス レディバグ&シャノワール』の劇場公開版にちなんで、ポップコーンを無料配布するコーナーも設営された。ただいまスタッフにより“燃焼試験”中。
![画像: 市内パビリオンで、リサイクルマテリアルを用いたID.ロゴ入りキーホルダーを作るスタッフ。完成品は無料配布されていた。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/24f9a126fa2e7c0c3eb590d2c6684be170bbdd16_xlarge.jpg)
市内パビリオンで、リサイクルマテリアルを用いたID.ロゴ入りキーホルダーを作るスタッフ。完成品は無料配布されていた。
![画像: レジデンツ(旧バイエルン公爵邸)の中庭には、VWグループのテーマパーク「アウトシュタット」が出張ブースを展開していた。車両は1966年T1トランスポーター“サンババス”。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/28499edd12487ba8a43ffbb0bb4ca2b9c5217d8b_xlarge.jpg)
レジデンツ(旧バイエルン公爵邸)の中庭には、VWグループのテーマパーク「アウトシュタット」が出張ブースを展開していた。車両は1966年T1トランスポーター“サンババス”。
![画像: アウトシュタットのブースで。幼少期からブランドに親しんでもらうという自動車メーカーの伝統的ストラテジーは、ここでも実践されていた。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783350/rc/2023/09/18/9865b00ebcbee1162381e48a637f9c7c32aad2aa_xlarge.jpg)
アウトシュタットのブースで。幼少期からブランドに親しんでもらうという自動車メーカーの伝統的ストラテジーは、ここでも実践されていた。
(report & photo 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)