画像: パリ「レトロモビル2023」会場で。フォルクスワーゲン・コマーシャルヴィークルズ(VWCV)は、トランスポーターにスポットを当てた。T1は若者たちにもクールと映るらしく大人気だ。

パリ「レトロモビル2023」会場で。フォルクスワーゲン・コマーシャルヴィークルズ(VWCV)は、トランスポーターにスポットを当てた。T1は若者たちにもクールと映るらしく大人気だ。

58年もの・ワンオーナーのT1も

2023年2月1日から5日まで、フランス・パリで欧州最大級のヒストリックカー・ショー「レトロモビル」が開催された。

第47回を迎えた今回、出展企業・団体は500以上を数え、展示車両は約千台に達した。3年ぶりの通常開催であったことから、入場者数は過去2番目に多い12万5千人を記録した。

メーカー出展の復帰も顕著で、その数は12に及んだ。フォルクスワーゲン(VW)グループからは商用車部門のフォルクスワーゲン・コマーシャルヴィークルズ(VWCV)も参加した。

なお、同じVWグループのポルシェに関しては、こちらをご覧いただきたい。

VWCVが焦点を当てたのは、トランスポーターだった。ブースを一望すればわかるとおり、それは電気自動車「ID.Buzz」および商用車版である「ID.Buzzカーゴ」の認知度向上を意図していたことは明らかだ。

それでも主役は、やはり往年のモデルたちである。その代表は1965年T1 ウエストファリア製4人乗りキャンパー仕様だ。驚いたことに今日でも新車時のオーナー家族のもとにあるという。これまでにスイス、イタリア、ギリシアを含むヨーロッパ各地を旅し、オドメーターは16万キロメートルを刻んでいる。

画像: 1965年T1ウエストファリア製4人乗りキャンパー仕様。今も新車で購入した家族のもとにある。

1965年T1ウエストファリア製4人乗りキャンパー仕様。今も新車で購入した家族のもとにある。

画像: その内装。木目溢れるパネルとチェック柄のクッションが、時代感覚を盛り上げる。

その内装。木目溢れるパネルとチェック柄のクッションが、時代感覚を盛り上げる。

隣に展示されたもう1台のT1は、その最終生産年である1967年式だ。トランスポーター生みの親である元VW社長H.ノルトホフのファーストネームである“ハインリッヒ”が愛称として冠されている。

画像: 1967年T1“ハインリッヒ”。

1967年T1“ハインリッヒ”。

さらに1972年T2も展示された。こちらのニックネーム“リトル・ミス・サンシャイン”は、同型・同色のT2が登場する2007年アカデミー賞映画のタイトルにあやかったものである。

そうしたID.Buzzのご先祖たちは、連日来場者からカメラのレンズを向けられていた。それは−−今や年金生活を満喫している−−往年のヒッピーたちのシンボルであるためだ。T1やT2に対抗し得るキャラクターを備えたモデルが、当時存在しなかったこともある。当時を知らない世代にも人気があるのは、彼らがTシャツをはじめT1が描かれたさまざまなアイテムに日ごろ触れていることが背景にあろう。

画像: “リトル・ミス・サンシャイン”のニックネームがつけられた1972年T2の7人乗り仕様

“リトル・ミス・サンシャイン”のニックネームがつけられた1972年T2の7人乗り仕様

画像: 歴代トランスポーターの展示は、ID.Buzzのプロモーションも兼ねていた。

歴代トランスポーターの展示は、ID.Buzzのプロモーションも兼ねていた。

画像: ブースの一角では、初代ビートルやT1のVW公式プレイモービルが販売されていた。

ブースの一角では、初代ビートルやT1のVW公式プレイモービルが販売されていた。

広がる妄想

いっぽう特別企画のひとつとして「バンライフ」と名付けられたコーナーも展開されていた。パビリオン間を繋ぐ渡り廊下に繰り広げられたそれは、さまざまな時代に各国で造られた、主にワンボックス型のバン&ワゴンを回顧・展示するものだった。

オーガナイズを担当したのは、ロラン&フロリアンの2氏だ。彼らが主宰する映像プロダクションの名前は「レ・コフローク」。命名の理由をロラン氏は「もともと俺たちはルームメイト(les cofloc)だったんです」と説明する。

旅行系・アドベンチャー系を得意とする彼らは、VWCV、ミシュラン社の旅行部門さらにフランス欧州および外務省などの協力を得て、ドキュメンタリー映画「バンライフ—新しいノマド」(2021年)を動画配信サービスで公開した。
ロラン氏は「バン生活を満喫する人々をオーストラリア、ニュージーランド、パタゴニアそしてカリフォルニアで追いました」と解説する。

彼らによる1時間21分の力作は、以下でご覧いただける(音声:フランス語)。ミュージシャンのカップル、家族、年金生活者など、さまざまな人たちが登場する。

●Vanlife, new nomads
https://www.youtube.com/watch?v=eixdDY1OKek&t=30

会場には、彼らがロケに使用した1986年T3シンクロもディスプレイされた。

画像: 「バンライフ」のコーナーで。1986年T3シンクロ。

「バンライフ」のコーナーで。1986年T3シンクロ。

画像: 映像プロダクション「レ・コフローク」を主宰するロラン氏(左)とフロリアン氏(右)。

映像プロダクション「レ・コフローク」を主宰するロラン氏(左)とフロリアン氏(右)。

画像: レ・コフロークのロゴが施された現行モデルT6のキャンパー仕様。

レ・コフロークのロゴが施された現行モデルT6のキャンパー仕様。

画像: 会場の一角には、彼らの作品「バンライフ—新しいノマド」の上映コーナーも。

会場の一角には、彼らの作品「バンライフ—新しいノマド」の上映コーナーも。

動画は、ノマド生活を憧れさせるに十分な内容だ。何台ものVWトランスポーターには、T1で旅をする人も紹介される。

ただし、レトロモビル公式オークションであるアールキュリアル社のセールに出品された1968年T1の23枚ウィンドー仕様“サンバ”は、5万6102ユーロ(約814万円。税・手数料込み)という高値で落札された。洒落たノマドを演じるのは決して安くない。

画像: アールキュリアル社のセールに出品された1968年T1の23枚窓仕様“サンバ”。落札金額は円換算で800万円を超えた。

アールキュリアル社のセールに出品された1968年T1の23枚窓仕様“サンバ”。落札金額は円換算で800万円を超えた。

「レ・コフローク」のT3シンクロの隣にふと目をやると、T2トランスポーターのキャンパーが置かれていた。パリ北郊を拠点とするガレージによる展示だった。時速90キロメートルを示す店名「90 à l’heureキャトルヴゥンディズア・レール」が暗示するとおり、古いワンボックスワゴン、とくに歴代VWトランスポーターに注力しているという。

価格は「4万2千ユーロ(約610万円)から」だ。けっして即決できる値段ではない…と思ったら、レンタル制度もあって1泊149ユーロ(2万1千円)という。
「この文章はオーロラの下、半世紀前のVWキャンパーの中でしたためている」などという書き出しの原稿を8speed編集部に送信する…にわかノマドワーカーの妄想が広がったのであった。

画像: T2トランスポーター・キャンパー仕様のレンタルは、1泊149ユーロ(2万1千円)。

T2トランスポーター・キャンパー仕様のレンタルは、1泊149ユーロ(2万1千円)。

(report & photo 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

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