フォルクスワーゲンは、2019年4月の上海モーターショーで中国市場向け新ブランド「ジェッタ(捷達)」を公開した。

画像1: 中国の新ブランド「ジェッタ」に初代ビートルの幻影を見た!

「ジェッタ」と聞いて読者の皆さんの中には、初代ゴルフに唐突なデザインでトランクを付け足した初代ジェッタをとっさに思い起こす方もおられるだろう。実際に現在もその後継車である7代目ジェッタがメキシコと中国で生産されている。

今回のジェッタはそれと異なり、中国第一汽車(FAW)との合弁による独立ブランドとしてのジェッタだ。

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今回北京で発表されたジェッタは、

セダン「VA3」

5ドアSUV「VS5」

5ドアSUV「VS7」

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の3モデルである。

本稿執筆段階で詳細なスペックは発表されていないが、いずれもMQBプラットフォーム(中国語でMQB平台)をベースとしている。

フォルクスワーゲンは2018年に中国で310万台を顧客に引き渡した。世界レベルのフォルクスワーゲン出荷台数でみると、その50%を占める重要なマーケットである。

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加えて、30年前の中国市場参入以来、常にマーケットシェア1位を維持してきた。「Volkswagen」とはドイツ語で国民車を意味するが、いわば中国の国民車でありつづけてきたことになる。

フォルクスワーゲンが新たなブランド、ジェッタで目指すマーケットは、すでにアッパーボリューム・セグメントでその地位を確立したフォルクスワーゲンと、国内ブランドが製造するエントリー車との中間である。
 
フォルクスワーゲンによると、中国には人口100万人以上の都市が数多く存在するが、そうした街における自動車の普及率はいまだ1000人あたり100台、つまり10人に1人である。メガシティである北京や上海と比較するといまだ低い。
ジェッタが狙うのは、そのような地方都市在住で、初めて自動車を購入する25〜35歳の顧客だ。

フォルクスワーゲンのユルゲン・シュタックマン取締役は、ジェッタの価格について「現在中国で5000ユーロ〜6000ユーロ(円換算で約61万円〜73万円)で販売されているエントリーレベル車より上になる」としている。

同時にシュタックマン氏は「ジェッタはエコノミーブランドを目指さない」とし「高品質、安全、感動、安定した価値、そして新鮮なデザインを提供する」と語っている。

このあたりは、フォルクスワーゲングループが1994年にチェコのシュコダを、ルノーが2004年にサブブランド「ダチア」を欧州各国で展開を開始したときのマーケティングに近似しているといえよう。

ジェッタは四川省成都の一汽工場で生産される。目下発売は2019年の第3四半期とされているが、中国の現地報道の中には9月と報じているメディアもある。

さて、上海ショーでジェッタのブースは、一汽VW、一汽アウディそして輸入のフォルクスワーゲンと同じブースに設けられていた。

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コンパニオンは、ジャージ+パンツや、チアガールを想起させるTシャツ+ミニスカートにハイソックスといった衣装で若々しさを強調していた。

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頭上を見上げると、「自信」「真誠」「直接」「楽観」といったブランド観を表すフレーズが次々と投影されている。

受付デスクの下には「捷達、大衆汽車子品牌」とフォルクスワーゲンのサブブランドであることを示す文字が小さく記されていた。だが、それ以外に既存のフォルクスワーゲンブランドに頼るムードがないのが潔い。

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ブースの一角に目を移せば、オリジナルグッズを販売するコーナーが早くも設けられていた。

ジェッタVS5に乗り込んでみる。

最新フォルクスワーゲンのようなデジタルメータークラスターこそ備わっていないが、ダッシュボード中央には大型ディスプレイがその存在感を誇示している。

センターコンソールに目を落とせば、オートエアコンやシートヒーターまで装備されている。

ダッシュボードのモダン感は、ゴルフ6どころかゴルフ7を凌駕しているといって過言ではない。

画像13: 中国の新ブランド「ジェッタ」に初代ビートルの幻影を見た!

いっぽうドア内張りに用いられたプラスチックの質感は今ひとつだ。ドアポケットの開口部にもバリが残っている。

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だが筆者にとって、それは些細なことである。なにしろ本連載の第2回で記したように、筆者の子供時代家にあったフォルクスワーゲンビートルのスチール製ダッシュボードたるや、塗装工程で固まった塗料がつらら状に垂れ下がっていたのだから。

「国民車」による新しい「国民車」であることを考えれば、上出来である。

画像15: 中国の新ブランド「ジェッタ」に初代ビートルの幻影を見た!

ふとステアリング周辺のスイッチを見ると、クルーズコントロール、それもアダプティブ・クルーズコントロールまであるではないか。

ふたたび個人的思い出で恐縮だが、学生時代の筆者にとって初めての車だった親のお下がりのアウディ80はマニュアル5段で、ステアリングもパワーアシスト無しだった。そのため、スタイリッシュな外観とは裏腹に、いつも汗だくで運転していたものだ。

あの時代からすると、中国の初心者ユーザーの、なんと幸せなことよ!

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(文と写真 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

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