160210-RAYS-15.jpg東京オートサロン2016でついに市販版が発表となった「VOLK RACING G25 Edge」。研ぎ澄まされたデザインと性能が際立つこの最新作はどのようにして生まれたのか? その秘密に迫る。 ■モータースポーツの経験を市販ホイールに

VOLK RACINGのプロデューサーの山口浩司氏と研究開発担当の小川憲昭氏が、商品開発の裏側を語った。

小川:山口から提示されたデザインに応えられたと思っていますが、そのときは「スポークをここまで細くするのか?」と面食らいました。ただ、要求レベルが非常に高いのはいつものことですし、山口はやりたいといったら絶対やる(笑) だから、話をもらった瞬間から、どうやって実現するかを考え始めました。

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山口:RAYSはGTカーやルマンのレーシングホイールを手がけてきましたが、この縦断面の手法はレース用ホイールをつくるのに近い。ただ、レース用ホイールはこんなにきれいにつくる必要はありませんし、マシニングセンタで削り出してつくるのは、手間はかかるが決して難しいものではない。でも、それをRAYSが得意とするデザイン金型鍛造でつくるのは、かなりハードルが高いことです。基本的なデザインを出しましたが、その実現のために実際に図面を引いて解析したのは小川です。

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小川:あまり目につかないところ、たとえば裏の形状などの処理は私たちに委ねられたところです。いいかえれば、そこが設計担当者の腕の見せどころですから、とくにこだわりましたね。窓から見える表情が一番難しかった。

また、軽量化を図るために、裏側の肉をここまで抜いています。普通だったら上型に手間をかけるんですけど、このG25 Edgeの場合はひょっとしたら下型のほうがコストがかかっているかもしれません。一番の狙いはホイールの軽量化です。使える質量のなかで、できるだけスポークを高くできたのが、ホイールの軽量化と高い剛性の両立につながっています。

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山口:生産性や金型の寿命などを考えると、鍛造ホイールの裏側はあまりデザインしたくない。G25 Edgeのように裏側まで凝っているのは軽さを実現するためです。

■"キャンバー剛性"という指標

G25 Edgeを世に送り出すうえで山口氏がこだわったこととは?

RAYSはいたずらに軽さだけを求めることが正しいとは考えません。まずはクルマからの要求事項を満たす高い剛性を実現することが重要です。

アルミホールは歪まないものだと思われがちですが、ステアリングを急に切ったときなどにはリムもディスクもミリ単位で変形します。イン側が浮くように変形するとタイヤの接地面が変わりグリップが変化してしまう。これにより、ドライバーが不安を感じることになります。

ステアリングを操作する、ブレーキを踏む、加速しながらコーナーを脱出する、という場面で、ホイールがたわむと、ドライバーの意思と違う動きをクルマがしてしまいます。これがレースの世界だと、柔なホイールだと思ったよりも30cmとかはらんでしまう。それを修正しようとして切り込むと、今度はイン側に15cmくらい入ってしまいます。

その点、「RAYSのホイールは思ったようにトレースしてくれる」とプロのドライバーから高い評価を得ています。ドライバーの操作にリニアに反応するというのが、高剛性ホイールの強みなんです。

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もちろん、高い剛性のホイールのメリットはレーシングカーのみならず、市販車でも同じことがいえるのです。たとえば、ホイールの剛性は走行安定性に直結しています。

ただ、ホイールに軽さを求めると、それにともない剛性も落ちる傾向にあります。そこでRAYSは肉の付け方やスポークの形状などを工夫することで軽さと剛性をバランスさせるような設計を行っています。

いままではディスク面が動かないとか、リムがたわまないなどミリの単位の話でしたが、最近はそれにともなうキャンバーの変化も排除してほしいという話になってきています。これが"キャンバー剛性"です。RAYSは、このキャンバー剛性の変化をシミュレーションにより解析する技術を、市販車用ホイールの開発にも活用しています。

ヨーロッパを知り、レーシングカーを知り、自動車メーカーとの密接な関係で常に理想的な数値を追い求めている私たちは、キャンバー剛性というのが重要なファクターになっていると肌で感じています。実際、市販車が20インチのハイグリップタイヤを履くようになると、キャンバー剛性の低さによって接地面が変化するの放っておくわけにはいかないのです。そんな時代の要求に対応したのでこのG25 Edgeです。

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リムの形状を変えたり、肉を厚くしただけでは必要なキャンバー剛性が得られない。そこで考えたのがスポークを縦断面にすることでした。さらに、ディスクの取付位置の強度を上げたり、インナーリムの形状を最適化するなど、さまざまな要素を積み上げることで、非常に高いキャンバー剛性が実現できました。

その性能はGT500レベルの性能! 市販のホイールをつくったはずなのに、結果としてそれほどの性能を手に入れてしまいました。そのうえ、その性能を考えると、非常に軽量に仕上がっています。Audi RS 5などのスーパースポーツやパフォーマンスSUVに装着してもられば、その違いはすぐにわかるはずです。

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技術がわからない人でも「このデザインはすごい迫力ですよね」といいます。デザイントレンドとして縦断面をもったスポークをみんなに見てほしい、わかってほしいですね。

美しさで魅せるのがG25。上質の革靴をどうやったらさらに良い革靴にできるのか挑戦したわけです。

G25ですら、高性能車に履かせてめげない性能を持っています。腕時計に例えると100m防水です。それを300m防水にしてみようかといって生まれたのがG25 Edge。サーキットでスリック履いてもいける市販ホイールなんて、なかなかありませんよ。

そんな尖ったホイールですから、RAYSファンといっても最初はその5〜10%くらいの人しか共鳴しないと思うんですよ。100m防水の時計でも十分過ぎるのに300m防水をお客さまに勧めるようなものですからね。しかし、そこの詰まった技術を手に入れたいと思う人には必ず響くホイールだと信じています。

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(Text & Photos by Satoshi Ubukata)

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