ついに日本上陸した「ゴルフ8」から、1L直列3気筒ターボエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載する「ゴルフeTSI Active」をチェック。果たして新型の仕上がりは?

2019年10月のワールドプレミアから1年7カ月を経て、ようやく日本にも新型ゴルフが上陸した。

ゴルフ8は、「デジタル化」「電動化」「ドライバーアシスタンスシステムの充実」をテーマに進化を遂げたといい、その概要は上記のニュースをご覧いただくとして、まずは1L直列3気筒エンジンを搭載するゴルフeTSI Activeを試す。

1Lエンジンを積むグレードにはゴルフeTSI Activeと「ゴルフeTSI Active Basic」が設定される。エントリーグレードのゴルフeTSI Active Basicは、3ゾーンオートエアコンやスマートエントリー&スタートシステム“Keyless Access”が省かれ、さらに、「Discover Proパッケージ」や「テクノロジーパッケージ」が選べないなど装備が限定されるが、ドライバーアシステンスシステムの多くが標準で装着されることを考えると、純正ナビゲーションシステムやIQ.LIGHTが不要という人には新型ゴルフを安く手に入れられる狙い目のグレードといえるだろう。

一方、今回の試乗車は、ゴルフeTSI ActiveにDiscover Proパッケージとテクノロジーパッケージが装着され、312万5000円の車両本体価格に40万7000円のオプション代が上乗せされる。

さっそく試乗車に乗り込むと、コックピットのデザインが大きく様変わりしている。いわゆるゴルフ7.5からデジタルメータークラスターの“Active Info Display”が標準またはオプションで採用されているが、このゴルフ8ではその進化型の“Digital Cockpit Pro”が標準装着になるとともに、そのすぐ左にインフォテインメントディスプレイが配置されたおかげで、今風のデザインになった。

それとともに、プッシュスイッチやダイヤルが、タッチスイッチや画面操作に変わるなどしてすっきりしている。このうち、ライト類のスイッチはメータークラスターと同じ高さになったことで操作性が向上。一方、エアコンの温度設定はインフォテインメントディスプレイ前にある左右のタッチスイッチを使うが、こちらは従来のダイヤル式のほうが使いやすかった。

面白いのは地図の縮尺の変更で、こちらはインフォテインメントディスプレイ前にある中央のタッチスイッチを使う。これを2本指でスライドすれば縮尺が変更できるのは使いやすい。ちなみに1本指でスライドさせるとインフォテインメントの音量が変更できる。

メータークラスターとともに大きく変わったのが、DSGのシフトレバー。“シフト・バイ・ワイヤー”を採用することで、レバーそのものが小振りなスイッチになり、センターコンソールがすっきりとした。操作はシフトレバーを前後させることで「R」「N」「D」「S」を選択する。「P」は独立したプッシュスイッチを使って選ぶことになる。

慣れの問題もあるが、個人的には以前の長いシフトレバーのほうが操作性が良い印象だ。マニュアルシフト時はステアリングホイールのパドルを使うが、シフトレバーでマニュアルモードが選べないので、時間が経つと自動的にDレンジに戻ってしまうのが面倒に思えることがあった。

また、シフトレバーとパーキングブレーキのスイッチが同じ線上にあり、走行中に手探りで操作しているときに、誤ってパーキングブレーキを操作してしまうことがあった。レイアウトを含めて再考の余地がありそうだ。

シフトレバーの先にあるスタートボタンを押してエンジンを始動し、クルマを発進させると、予想以上に動き出しが軽やかで、「これが本当に1Lエンジン?」と疑うほどだ。低回転でのトルクは十分で、アクセルペダルの操作に対してエンジンの反応も悪くない。

メーターパネルには何も表示されないが、これには48Vマイルドハイブリッドシステムが貢献していて、加速時にモーターがエンジンをアシストすることで、小排気量ターボの弱点をカバーしていると考えられる。

3気筒エンジンだけにその静粛性を心配していたが、ゴルフeTSI Activeでは不快なエンジン音や振動がよく抑えられていて、言われなければ3気筒であることに気づかないかもしれない。

低いエンジン回転を多用する一般道では十分なパフォーマンスを見せる1Lエンジンは、大きな加速を必要とする場面でアクセルペダルを深く踏み込めば、2500rpmあたりから力強さを増し、その勢いは6000rpmまで続く。

マイルドハイブリッドシステムの搭載により、パワートレインの挙動にも変化がある。高速道路のみならず、一般道をある程度のスピードで走行中にアクセルペダルから足を離すと、エンジンがすぐに停止する場面を頻繁に確認できる。この“エココースティング”機能により燃料の消費を低減。アクセルペダルを踏めば、スムーズかつ即座にエンジンはスタートする。アイドリングストップからのエンジンの再始動も実にスムーズだ。

205/55R16インチタイヤが装着されるゴルフeTSI Activeは、乗り心地がマイルドでロードノイズも気にならないレベル。走行中はゴルフらしい落ち着いた挙動を示し、高速道路のフラットさもまずまずである。エアロダイナミクスを磨いたというだけあって、高速走行時の風切り音もよく抑えられている。

ワインディングロードでは、それなりにロール感はあるものの、ロールの量やスピードが適切に抑えられるおかげで、安心してコーナーを駆け抜けることができた。

ユーザーインターフェイスには戸惑うところもあったが、あらゆる部分で進化が確認できたゴルフ8。今回は燃費をチェックすることができなかったが、改めて試乗車を借りだし、じっくりとその実力を確かめたいと思う。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Satoshi Ubukata, VGJ)