ゴルフ2も、より旧い方がカッコイイ・・・。RV型で最初期GX型のフェイク、FGXを作ろうとしたのは、こんな思いからだが、これを実現するにはかなりの時間、そしてコストがかかる。ゴルフ2の専門店、スピニングガレージのサポートがなければ、おそらく実現しなかったものと思う。それにしても、このプロジェクト、とても楽しかった。(前編はこちら
■ベースは'88年式の限定車

FGXの素材はある程度揃っていた。オグラ手持ちのゴルフ2のなかに、なにかの部品との物々交換で入手した'88年式の2ドア、左ハンドル、マニュアルのRV型(後にヤナセがVW輸入35周年を記念して出した限定車と判明)があったし、三角窓付の2ドア用ドアもあった。だが、いかんせん、細かいパーツが揃わない。なにより、このFGXプロジェクトを進めるだけの資金がない。

そこで、スピニングガレージの代表、田中さんに、「クルマを提供するから、FGXを作らせて」と協力をお願いした。ともあれ、スピニングにはものすごい数のストックパーツがあるし、認証を持つ整備工場でもあるから、数年は放置されていたゴルフを走行できるようにし、ナンバーを取得できる状態にするのはいとも簡単。それに、代表の田中さんはなにしろノリがいい。「面白いですね。やりましょう」と即答してくれた。


このサポーテッド・バイ・SGのFGXプロジェクトを進めていくなかで、オグラが非常に興味深かったのは、同じクルマが装いを変えていくだけでドンドン旧っぽくなっていくことだった。外観のGX化は、用意してあった三角窓付きのドアをはじめ、スピニングのストックパーツから、クローム風のモールが入った前後スモールバンパー、バンパー下のフロントエプロン、バーの細かいフロントグリルなどを揃え、順次変更していったわけだが、その度に年式を遡っていく感じ。

ベースになったゴルフのボディカラーはソリッドのブラックだが、結果的にはフロントエプロン、左右のドアが色違いになって、6N型のポロにあった、パネル毎に色が違う限定車、HARLEKIN(ドイツ語で道化師の意)を思い出させた。


もちろん、室内のGX化も忘れてはいない。トリムは、もともと三角窓付ドアにくっついていたものだから、そのまま採用。ステアリングは、グリップ部の径が細く、スポークが"へ"の字型の2本スポークにして、シフトノブは5速の表示がEとなるタイプに変更した。センタコンソールはパワーウインドーのスイッチがないタイプとし、オーディオは昔懐かしいボタンをギュッと押し込むタイプにした。前後のシートだけが、さすがのスピニングでもGX型のものは在庫なく、同じグレー系ということでアプトのコンプリート仕様に装着されていたというものを使う。それでも、一応、見た目、GX型にはなった。

■こだわる、こだわる

GX型らしさが色濃く出たのは、全塗装を施してからだ。スピニングのスタッフとともに、ボディカラーをどうするか、検討した結果、決まった色は、GX型にしかなかったとされるライトブルー。水色とも、空色ともいえるソリッドカラーだ。

スピニングの協力工場であるアイアールサービスでの、RV型にはあるサイドプロテクションモールの取り付け穴を塞ぎ、リア中央のVWエンブレム用の丸い凹部も埋めて、擦り傷や錆、小さな凹みを修正しての全塗装は、このクルマの印象をガラリと変えた。ライトブルーは大正解。実にGX型らしい、旧車っぽい雰囲気が醸し出されて、期待以上の仕上がりだった。

外観が整えば、次は室内の完成度を高める作業。一部分が垂れ下がり、汚れてもいたルーフライニング(天張り)を張り替えて、見栄えをよくしようという試み。やはりスピニングの協力工場であるアップサービスカンパニーの代表、小川玄(まこと)さんがスピニングに出張してきてくれて、サクサクッと半日ほどで張り替えてくれた。これで分かったことは、天井がスッキリしていると、気分もスッキリするということ。やってみるものだ。

車検整備は、項目こそ多く、交換部品も少なからず発生したが、作業そのものは淡々と、着実に進んでいった。そうして、4月半ばには車検を受け、ナンバーを取得した。ここまでは、まぁうまく進んできたのだが、ひとつ問題が残った。エンドマフラーが、GX型にはどう考えても似合わないDTMタイプ。これを、こだわって、出口が下向きとなる純正タイプに変えようということになっていたのだが、この部品がなかなか届かなかったのだ。部品が届いて装着できたのは、6月になってから。これでようやく、ようやく完成した。

■このクルマ、カワユイ

マイナーなトラブルがなんだかんだとあったものの、とりあえず走れる状態になったことから、試乗&撮影に連れ出したのは、7月初めだ。長い眠りから覚めてまもないということもあって、その走りには少しぎこちないところがあったが、やがて自然とユッタリとして、落ち着いた気分になってきた。それは、グリップ部の細い、頼りなげなステアリングを握るためだろうか。なんとなく、周囲のクルマのドライバーの視線が温かいようにも感じたのは、気のせいか。旧さが分かる外観なれど、塗装はピッカピカ。どうしたって、ドライバーのクルマ好き度の高さがうかがえるからだろうか。ともあれ、フェイクではあっても、十二分にノスタルジックな雰囲気が味わえたのである。それも、ラクに・・・。

そして、撮影しての感想は、"このクルマ、カワユイ"だった。


※なお、このFGXプロジェクトの詳細は、スピニングガレージのサイトにアップしているので、興味のある方は是非チェックしていただきたい。