そもそも、新名神の亀山〜草津の区間、忍者推しがヒドイ。ヒドイは正直言いすぎかとも思うが、そう言いたくもなるくらい忍者推し、なのです(笑)。
亀山起点で大阪の方に向かう名阪国道は伊賀を通りますが、こちらは甲賀。流派の違いはあれど、鈴鹿を超えて大阪に向かうときは「忍者がいつどこから飛び出してこないとも限らないので」注意が必要、であります(笑)。
土山SAは、琵琶湖を要する滋賀県。そして京阪神と中京エリアの境目のような場所。料理のバラエティというか、微妙な「手法の違い」ひとつとってもたのしいものです。京風のうどんときしめんなどがしっかり棲み分けられているし、肉料理も、近江牛という肉にフォーカスが当たるのか、味噌カツのようなスタイルの問題なのかも、なかなか好みが分かれるもの。
これはすなわち「選ぶのは容易いことではない」ということを意味しています。
いつも券売機の前で悩むのです。先日も迷いました。
悩んでいると「そういえばあまり食べた記憶がないな」というメニューに目に留まりました。「近江ちゃんぽん」。これで行くことにしました。ちゃんぽんというと、けっこうスープも炊かれていてしっかりこってりかなあ?よく琵琶湖周辺走っていると目にすることはあるなあ。待っている間もいろんなことがよぎります。
それはそうと、ここは塩むすびが売っているのを思い出しました。国道1号沿いの道の駅あいの土山でも売られていましたが、やはり米どころでもある滋賀県、東海道を旅していた人たちも腹ごしらえしたのかなあ?と思いを馳せることができる白い塩むすび。
高速道路のここ土山サービスエリアでも売られていて見つけるとつい買ってしまうのです。冷えていますが、それでも、それだからこそ楽しめる米の甘み。これもちゃんぽんと一緒であれば贅沢なセットになりますな。お土産やら、鯖寿司とかが並ぶフードコートの向かいの売り場に行き、ちゃんぽん待つ間に調達しました。
そして、待つことしばし。近江ちゃんぽんが出てきました。
割と澄んだスープ。しかし香りが良いですよ!野菜もたっぷり入っていてこりゃいい。ちゃんぽんの定義は地域によってさまざまかもしれませんが、私のイメージからすると、味噌ラーメンでの味付けに醤油味に寄せている感じでしょうか。でも具の旨み、甘みがしっかり引き出されていて、これは美味い!今まで食べなかったことを悔いるレベルです。
こういうものまだまだあるのかもなあ。最近切実に思うのですが、いつか食べられるつもりでいると、結局食べずじまいになりそうです。気になったら、発生ベースでどんどん食べていかねばならないですね。
半分くらい食べたられんげ一杯程度のお酢を加えて混ぜて食べると美味しいと、カウンターのところに指南書きがありましたので試してみると、綺麗に尖った酸味が消えて、今までの旨みを単純に積み増ししている、爽やかで一味違った凛とした雰囲気も出ていたりして。
これはこれはますますうまい!こういう時にうどんとか食べてばかりいましたが、これは近江ちゃんぽんである!それでも「どうして今まで食べなかったか悔しい」くらいで済んでよかったと思いたい。なぜならちゃんと味わうことができたのだから!
スープも優しく美味しいので飲み進めると、どんぶりの底に何かメッセージが。
よく見ると「あたり」の文字。ドライブの途中で食べたらこんなの出てきたら嬉しいですよね(どうせ全部のどんぶりに書いてあって、食べた人への労いとかだろうなと思ったのです)。
食器を返しに行くときに「あたりとか出てきてなんか嬉しくなりますね、ごちそうさまでした」と言ったら、お店の人が「あら、あたりあたり、ちょっとお待ちくださいね」と手を止めてお店の奥に。「ささやかですがどうぞ。この先も気をつけて」とお茶をくださいました。
滋賀の玄米と甲賀市のお茶で作った玄米茶。嬉しいではないですか!土山も茶所なんですよね。パーキングで一休みのつもりが、思いがけずその土地にコミットメントできるメニューやもてなし、いろいろの趣向。
ああ、ここは忍者推しの土地だった。
お茶をもらった時に思い出しました。なるほど、何が隠れているかわからないし、それによってこんなもてなしが飛び出すなど。忍術とは異質かもしれないけれど、なんだか嬉しいし、単に漫然と、ではないこの土地の人たちの何かに触れられたような気がしました。
ここ、石窯で焼いてくれるピザも美味いんですが、この日は「あたり」が出たのですでにお腹いっぱいです。さてさてどうしたものか。
今度は何が飛び出すか、土山サービスエリアも色々と看過できない。さすが忍者推しエリアの施設だなと思いました。
(Text & photos by Kentaro Nakagomi)