以前、夏至まで2週間を切ろうという頃のことです。私はクルマを京都へと走らせていました。明日は土曜という金曜日の深夜2時半をすぎると、さすがの東名高速も交通量はまばらになります。
前の晩、食事をパスしたのと、少し早めに仮眠をとったもので、なかなか眠れずにクルマを進めてきたものの、この辺りで少しちゃんと休もうと浜名湖サービスエリアに立ち寄りました。
浜名湖の山側を抜けて、浜名湖に大胆に横串を刺すように降りてくる道は、新東名に主流の座を譲ったような今でも、通るたびに窓を開けてそのダイナミックな風景、道路の造作、雰囲気を丸ごと楽しみたくなってしまうものです。
クルマを停めると、鳥の囀り(さえずり)。あんなのを聞くと、もう間もなく夜は明けるのだな、と思うものです。鳥は何を察知して囀るのでしょうか?なかなか野性の能力というのはやはり卓越している。つくづく感心させられるものです。
クルマ旅をする人たちや、休日返上の物流関係のクルマ以外は比較的空いていました。そんな静かな深夜のサービスエリア、眠気がまったくないので少し歩いてみることにしました。すると微かに浜名湖の湖面がわかるようになります。いよいよ朝です!
あいにく雲が多い天気ながら、やはり早朝、朝一番で浜名湖を拝めるとには何かありがたみさえ感じました。
そして相変わらず眠気はさほど、ですが、前夜からの空腹が流石に。何か食べられないか見てきましょう!
海の見えるフード館、うどんそばの「さざなみ」と、丼ものの「こはん」は24時間営業。今時ほんとありがたい話ですね。
朝だからやさしめ?しかし無性にしっかり食べたいという衝動に駆られました。カツ煮やチキン南蛮はヘビーなのでタレカツ丼で穏便に、というよくわからない分類と論理で赤赤鷄のタレカツ丼を頼むことにしました。
ササミのチキンカツか、と思ってのっていたカツ一口かじると、思いのほかジューシー。しかもこの時間に向き合っても、どこか優しい感じのあるチキンカツなのでした。細めのキャベツの千切りもその甘みが嬉しく、よく合います。また、全体的にコッテリし過ぎないもののしっかり甘めなタレ。これが全体をうまくまとめています。
お味噌汁でなく豚汁のセットにしてもらいましたが、根菜たっぷりの食べ応え。未明の夜食ながら、瞬く間に平らげてしまいました。
食事を終えて外に出てくるとかなり明るくなっていましたが、今日も頑張るぞ!そんな意気込みと、まだまだ長い道のりを走り切るクルマ旅への意欲を大いに盛り上げてくれるパワーフードでした。
ここから京都まではおよそ200キロ。しかしさほど大袈裟にいうこともないでしょう。こう思えただけでも、タレカツ丼が高速メシとしての本分を全うしている、そう言って差し支えないのかもしれません。
「今日は俺の勝ちだな」勝ち負けとかよくわからないですが、そんな気にさせてくれる浜名湖のタレカツ丼。皆さんもロングドライブでここを通る際には、ぜひ未明のタレカツ丼で、朝を待ち伏せしてみてはいかがでしょうか。
(Text & photos by Kentaro Nakagomi)