“アクティブシリンダーマネージメント”機構採用の1.5L直噴ガソリンターボエンジンと、48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「1.5 eTSI」の燃費を調査するために、東京から鹿児島へ“おひとりさま”ドライブ。途中無給油で約1400kmを走りきることはできるでしょうか?
ついに日本国内でも発売になった「ゴルフ8」。ニュースでもお伝えしたとおり、スタンダードなゴルフには1L直列3気筒直噴ガソリンターボと1.5L直列4気筒直噴ガソリンターボの2種類のエンジンが用意され、そのいずれにも48Vマイルドハイブリッドシステムが搭載されています。
カタログ燃費は、1.0 eTSI採用グレードが18.6km/L、1.5 eTSIが17.3km/L(WLTCモード)。高速道路モードの燃費はそれぞれ20.6km/Lと19.8km/Lです。
1.5Lエンジンには、気筒休止機構の“アクティブシリンダーマネージメント”が搭載されますが、これを採用するエンジンは高速を上手く走るとカタログ燃費を大きく上回ることを経験しています。
「ひょっとすると、高速道路を使えば、東京から鹿児島まで途中無給油で走れるのではないか?」
そんな疑問を解決するため、「ゴルフeTSI R-Line」で実際に走ってみることにしました。
東名の東京インターから九州道の鹿児島インターまでは約1400km。ゴルフeTSI R-Lineの燃料タンクは51Lですので、単純に計算すれば平均燃費が27.5km/L以上なら無給油で走破できることになります。一方、燃費が25km/L程度では九州道の熊本インターの先で燃料切れ。20km/Lでは九州に渡ることが危うくなります。以前、「ゴルフ7 TDI」で山陽道から九州道を“燃費運転”したときが28.7km/Lでしたので、かなり頑張らないと27.5km/L超えは難しそうですね……。
正直なところ、かなり不安を抱えながら東京を出発しました。その日の午後2時頃、東京インター手前のガソリンスタンドで満タンにし、あとは東名〜新東名〜東名〜名神〜新名神〜山陽道〜中国道〜九州道といったルートで鹿児島を目指します。途中で一泊しますが、そのために一般道を走りたくないので、今回は東名の多賀SAにあるハイウェイホテルを利用。少し遠回りになりますが、豊田JCTから草津JCTまでは東名を利用するルートになりました。
走行にあたっては、ドライビングプロファイルは「エコモード」を選択。エアコンはオンにして走ります。熱中症で具合が悪くなったら困りますので(笑)
基本的にはアダプティブ クルーズ コントロール(ACC)は使わず、瞬間燃費の数字を見ながら、75km/hを目安にペースを調整します。7速、75km/hのエンジン回転数は1400rpmほど。低燃費が期待できる気筒休止の“2シリンダーモード”を使うにはある程度エンジン回転を上げてやる必要があり、7速では75km/hあたりから2シリンダーモードが使えるからです。
走行の様子は車載カメラで収めた動画を用意しました。長いのでお時間のあるときに、適当に飛ばしてご覧ください(笑) なお、機器のトラブルで一部記録されていない区間があります。
さっそく走り出すと、東京から標高の高い御殿場に向かうまでは平均燃費が25km/L前後でしたが、そこを超えると燃費は伸びはじめて、最初の休憩地の静岡SAまでの区間平均が30.4km/Lに達しました。1.5 eTSIの効率の高さに加えて、空気抵抗が減少したゴルフ8のボディが、この低燃費を実現しているのでしょう。なかなか幸先の良いスタートです。ただ、山陽道や九州道の終盤はアップダウンがきつく、燃費が落ちるので、前半で燃費を稼いでおきたいところです。
静岡SAから豊田上郷SAの区間は今回のベストの32.9km/Lをマークしました。次の多賀SAまでの区間はアップダウンが多いためか29.0km/Lに低下。上り勾配では登坂車線でガマンの走りを強いられますが、一方、下り勾配ではアクセルペダルから足を離し、エンジンをオフにして走る“エココースティング”で燃費を稼ぎます。48Vマイルドハイブリッドシステムならではのやり方ですね。
ただ、この状態ではエンジンブレーキが効かないので、速度を調整するにはエンジンブレーキが効くようパドルでマニュアルシフトしたり、Sレンジを選んだり、あるいはフットブレーキを活用します。
2日目は朝の5時頃に多賀SAを出発。天候はあいにくの雨で、事故による渋滞や通行止めがないことを祈るばかりです。その後、白鳥PAで休憩をとったときには雨が激しかったものの、次の宮島SAに着くころにはすっかり雨も上がり、気温が高くなります。区間燃費は多賀SA〜白鳥PAが28.7km/L、白鳥PA〜宮島SAが29.2km/Lと、依然合格ラインをキープしています。とはいえ、目的地までの距離と走行可能距離の差が60kmを切り、決して余裕があるとはいえません。
ここから壇ノ浦PAまでの区間と、次の北熊本SAまでの区間では、29.4km/Lと29.8km/Lと好燃費。累計の平均燃費も29.6km/Lという予想以上の数字に、少し安心しました。
ここから鹿児島までは190km弱ありますが、メーターの走行可能距離は340kmと余裕があります。ただ、この先の八代インターからえびのインターにかけてはアップダウンが厳しく、一気に燃費が低下する恐れがあり、油断は禁物です。
実際、最後の区間は今回のワースト記録になりましたが、それでも28.7km/Lをマーク。累計の平均燃費は29.6km/Lで、あと0.4km/Lで30km/Lというところでした……惜しい!
鹿児島インターを過ぎ、鹿児島駅近くに辿り着いた時点で燃料警告灯はまだ点灯しておらず、走行可能距離も160kmと余力がありました。ギリギリまで走れば1500km行けるかも!?
というわけで、見事、無給油で東京〜鹿児島間を走破できました! メーター読みの燃費は次のとおりです。
区間 | 区間距離[km] | 累計距離[km] | 区間燃費[km/L] | 累計燃費[km/L] | 走行可能距離 | 目的地まで |
---|---|---|---|---|---|---|
東京IC〜静岡SA | 166 | 166 | 30.4 | 30.4 | 1040 | 1200 |
静岡SA〜豊田上郷SA | 129 | 296 | 32.9 | 31.4 | 1170 | 1070 |
豊田上郷SA〜多賀SA | 111 | 407 | 29.0 | 30.7 | 1040 | 959 |
多賀SA〜白鳥PA | 190 | 598 | 28.7 | 29.9 | 850 | 768 |
白鳥PA〜宮島SA | 244 | 842 | 29.2 | 29.7 | 590 | 524 |
宮島SA〜壇ノ浦PA | 179 | 1022 | 29.4 | 29.6 | 440 | 344 |
壇ノ浦PA〜北熊本SA | 169 | 1192 | 29.8 | 29.6 | 340 | 174 |
北熊本SA〜鹿児島料金所 | 174 | 1366 | 28.7 | 29.6 | 160 | 0 |
ガソリンスタンドで満タンにしたところ、給油量は46.0L。1回の給油ではばらつきが出やすいので、その後を含めた全4回の給油により、ばらつきを補正して算出した満タン法による燃費は29.1km/Lになりました。
翌朝には桜島をバックに記念撮影。さらにフェリーで桜島に渡り、ワインディングロードをひとっ走りして戻りました。
鹿児島からの帰りは、無給油にはこだわらず、まわりの流れにあわせて走りました。その際の燃費はメーター読みで21km/L程度でした。一部区間でACCを使ってみたのですが、これがなかなか優秀で、私がACCを使わずに走ったときとほぼ同じレベルの燃費でした。
ACCを使えばドライバーの疲労は明らかに軽減されますし、トラベルアシストならさらにラクができることを考えると、高速道路はACCとトラベルアシストに任せっきりでも良いかもしれません。
午前中に鹿児島を出発して約15時間後、無事東京に戻りました。
2泊3日、約2800kmの弾丸ツアーは、1.5 eTSI搭載のゴルフ8が、TDIもビックリの低燃費を誇ることが明らかになりました。ならば、1.0 eTSIはどうなのか? ゴルフeTSI Activeの燃費調査も実施しないといけないですね(笑)
(Text & photos by Satoshi Ubukata)