フォルクスワーゲンの新しいフラッグシップモデルとして登場した「アルテオン」に試乗。その魅力は?
※2017年12月の記事を再構成して掲載しました。
すでにニュースでもお伝えしているように、新しいフラッグシップモデルとなる4ドアクーペ「アルテオン」が日本でも発売になった。
フォルクスワーゲンの4ドアクーペといえば、「パサートCC」や「フォルクスワーゲンCC」が思い浮かぶ。アルテオンはその後継モデルということになるが、受け継いだのはボディタイプとポジションだけで、デザインも中身も一新されているのは、写真を見るだけでも明らかだろう。
なかでもフロントビューは、これまでのフォルクスワーゲンとはまるで違う印象だ。堂々たる水平基調のフロントグリル、そこにつながるヘッドライト、フロントフェンダーに覆い被さる大きなボンネット。そのすべてが新しいデザインを支えている。
ちなみに、"デイタイムランニングライト"はこのアルテオンから標準搭載され、フロントマスクの印象をさらに際立たせている。
低く流麗なルーフラインやフレームレスのウインドーを備えるのも、アルテオンの特徴だ。さらに、大型のテールゲートを採用することで、ヴァリアントに迫る実用性を手に入れているのも見逃せない。
一方、インテリアはパサートに準じたデザインに。日本仕様はすべてR-Lineとなるため、ブラックのルーフライニングやアルミのデコラティブパネルなどがスポーティな雰囲気をつくり上げている。
試乗した「アルテオン R-Line 4MOTION アドバンス」では、デジタルメータークラスターの"Active Info Display"が装着され、最新のフォルクスワーゲンのテクノロジーに触れられるのもうれしいところだ。
シートは、ぜいたくなナパレザー仕様。カーボンレザーがあしらわれ、上質さに加えてスポーティさが高められる。
全長4865×全幅1875×全高1435mmの余裕あるボディサイズと、2835mmのホイールベースのおかげで、後席のスペースは実に広々としている。実際、身長167cmの私が運転席でシートポジションをあわせ後席に乗り移ると、ニールームは30cmに及び、ラクに足が組めるほどだ。これは、BMW5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスよりもはるかに広い。
一方、ヘッドルームは拳1つぶんほどで私には十分だったが、長身の人は窮屈に思えるかもしれない。
アルテオンのパワートレインは、2.0 TSIと7速DSGの組み合わせで、4MOTIONにより4輪を駆動する。2.0 TSIは「ゴルフR」のユニットをデチューンして280psにしたものだから、ゴルフRのパワートレインを受け継いだと考えられる。当然、エンジンは横置きである。
いまやこのクラスでも4気筒が主流なだけに、パワフルな2.0 TSIエンジンを手に入れたアルテオンは低速から活発な動きを見せる。1500rpm以下では多少レスポンスが鈍い2.0 TSIだが、そこを超えるとレスポンスが良くなり、それにあわせて力強さも増していく。
高速の合流や追い越しの場面でアクセルペダルを深く踏み込めば、3500rpmを超えたあたりからその加速は勢いを増し、1720kgのボディを軽々と加速して見せる。
うれしいのは乗り心地の良さ。DCCのおかげで実にマイルドで快適な乗り心地が保たれるのだ。挙動も落ち着いていて、フラット感もまずまず。「アドバンス」グレードには20インチのアルミホイールと245/35R20タイヤが装着されるために、目地段差を越えたときに多少をショックを伝えてくるが、十分快適なレベルに収まっている。
ただ、個人的にはもう少しだけ硬めのセッティングが好ましいと思う。かといって、ドライビングプロファイルをノーマルからスポーツに切り替えると今度はゴツゴツ感が目立ってくる。
そんな悩みを解決してくれたのが、ドライビングプロファイルのカスタム機能。なんとDCCの設定が15段階から選べるのだ。おかげで、好みの硬さに設定できた。他のモデルでも採用してほしいものだ。
ということで、試乗会でチェックするかぎりは,実に魅力的なクルマに仕上がっていたアルテオン。それだけに、かつてトゥアレグがプレミアムSUVブームを起こし、フォルクスワーゲンのイメージを変えたように、このアルテオンがフォルクスワーゲンの新しいイメージづくりに貢献してくれるのではないかと期待する私である。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)