縦置きエンジンレイアウト用プラットフォームの「PPC(Premium Platform Combustion)」を採用する新型「Audi A6」を試乗。その出来栄えは?
新しさのなかに懐かしさも
今回は、Audi A6としては6代目、「Audi 100」の時代を入れると9代目にあたる“C9”型の新型「Audi A6」のなかから、プレミアムセダンのふさわしい品格と佇まいを兼ね備えたAudi A6 Sedanを、メディア向け試乗会でチェックすることができた。
新型Audi A6の概要は上記のニュースをご一読いただくとして、試乗車は2.0L直列4気筒ディーゼルターボを搭載するAudi A6 150kW TDI quattroである。
試乗会場で初めて見る新型Audi A6 Sedanは、クーペのようなルーフラインや丸みを帯びたテールエンドが、エレガントなデザインで注目を集めた「C5」型を彷彿とさせ、スタイリッシュさが際立っている。空力性能を追求したフォルムもAudi A6の伝統で、この新型Audi A6 Sedanは歴代トップのCd=0.23を誇っている。
インテリアは、いまやすっかり見慣れたMMIパノラマディスプレイが新型Audi A6のコックピットを特徴づけている。湾曲したMMIパノラマディスプレイは視認性が高く、ドライバー側へ緩やかに向けられているため操作もしやすい。物理スイッチは大幅に減らされているが、必要な機能へ素早くアクセスできるよう工夫されており、単なる“タッチ操作化”に終わっていない点にも好感が持てる。
一方、最新のモデルイヤーでは、ステアリングホイールのスイッチの一部に物理式の回転ダイヤルが採用されるようになり、誤操作の心配が減ったのがうれしいところだ。
室内は、プレミアムアッパーミディアムセダンにふさわしい広いスペースが確保されている。後席の足元は足が組めるほど余裕があり、また、サンシェード不要のスマートパノラマガラスルーフのおかげで頭上のスペースもゆったり。荷室は、床下収納はないものの、奥行き、幅、高さとも十分なサイズが確保されている。ちなみに、Audi A6 Sportback e-tronやAudi A5 Sedanが大型のテールゲートを備えるのに対して、このAudi A6 Sedanは通常のトランクリッドを採用しており、4ドアセダンスタイルにこだわる人には、見逃せないポイントだろう。
洗練のパワートレインと走り
Audi A6 TDI quattro 150kWには、最高出力150kW(204ps)、最大トルク400Nmを発揮する2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンが搭載され、7速Sトロニックと4WDのquattroが組み合わされる。さらに、48Vマイルドハイブリッドシステムの「MHEV plus」が搭載されているのも、このパワートレインの特徴である。
ブレーキペダルから足を離すと、車両はゆっくりとクリープを開始する。従来であればエンジンが即座に始動し、そのまま車両が動き出していた場面だが、Audi A6 TDI quattro 150kWでは挙動が異なる。車両が動き出した後、遅れてエンジンが始動するのだ。これはエンジンが十分に暖まっている条件下では、発進をMHEV plusのモーターであるPTG(パワートレインジェネレーター)が担うためで、短距離ながら電力のみでの走行を可能としている。その結果、発進はきわめてスムーズで、エンジン始動に伴う違和感を意識させない。
これはすでにAudi Q5やAudi A5のTDIでも経験済みだが、このAudi A6では、これらのモデル以上に2.0 TDIエンジンのノイズや振動が抑え込まれ、TDIであることを意識せずにすむほど洗練されていることに驚いた。
また、PTGのアシストによりアクセル操作に対するレスポンスも良好だ。もともと太いトルクを持つ2.0 TDIエンジンだが、その立ち上がりがより鋭くなった印象を受ける。加えて、ディーゼルエンジン特有の振動やノイズはしっかりと抑え込まれており、快適性の面でも完成度は高い。
ふだん走行する分には2000rpm以下でほとんどカバ−できるほど低速トルクは強力。一方、アクセルペダルを踏み込めばさらに勢いを増し、3000rpm超えではさらに力強い加速が味わえる。
MHEV plusを搭載したことで、走行中にアクセルペダルを戻すとエンジンが完全に停止する場面が頻繁に見られる。軽い加速であればPTGのみでの走行も可能で、より静かで滑らかなドライビングフィールを実現している点は、このシステムの大きな特徴といえる。
エンジンがオフの状態でも、回生ブレーキが得られるのもMHEV plusの特徴のひとつ。また自動回生機能により、先行車との距離に応じて回生ブレーキの強さを自動調整してくれるのも、運転のしやすさにつながっている。
マイルドハイブリッド車では、減速時のエネルギー回生と機械式ブレーキを協調制御するケースが一般的であり、MHEV plusも同様の仕組みを採用する。こうした制御では、ブレーキペダルの踏力に違和感が出ることも少なくないが、この Audi A6 TDIではほぼこうしたことが気にならなかった。
アダプティブエアサスペンションはいまや必須
試乗車にはオプションのアダプティブエアサスペンションと20インチホイール、さらにオールホイールステアリングが装着されていた。
まず印象的だったのは、直進時の安定感の高さだ。高速道路ではステアリングの据わりが非常によく、わずかな修正舵で狙ったラインを正確にトレースする。プレミアムセダンらしい落ち着いた走りが味わえる。
20インチタイヤを装着しているにもかかわらず、乗り心地は想像以上に穏やかだ。路面からの入力をしなやかに受け止めながら、ボディの上下動はしっかりと抑えられており、一般道でも終始フラットな姿勢を保つ。
目地段差を通過する際でもショックの抑え込みが巧みで、プレミアムサルーンに求められる上質な乗り味を実現している。
ステアリングレスポンスも好印象だ。全長約5mのボディを意識させない軽快さがあり、市街地の交差点やワインディングでもノーズは素直に向きを変える。この自然な身のこなしには、オプションのオールホイールステアリングも大きく貢献しているはずだ。
静粛性も高いレベルにある。ロードノイズはしっかりと抑え込まれており、高速巡航時でもキャビンは落ち着いた雰囲気を保つ。一方で、路面の粗い舗装では20インチタイヤが路面の細かな凹凸をわずかに伝える場面もあるが。快適性を損なうものではなかった。
約70分という限られた試乗時間ではあったが、その短時間でも新型Audi A6 TDI quattro 150kWの完成度の高さは十分に伝わってきた。パワートレインの洗練性、上質な乗り心地、そしてプレミアムセダンらしい風格を高い次元で融合したその走りは、Audiのプレミアムアッパーミディアムセダンにふさわしい仕上がりといっていいだろう。
(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Audi Japan)