3代目に生まれ変わった「Audi Q3」をメディア向け試乗会でチェック。その進化のほどは?

最新のAudiデザインを採用

すでにニュースでもお伝えしているとおり、AudiのプレミアムコンパクトSUVであるAudi Q3シリーズがフルモデルチェンジにより3代目に生まれ変わり、2026年5月に日本でも発売になった。

このAudi Q3シリーズは、2011年の初代登場以来、グローバルで累計200万台以上を販売してきたAudiの主力コンパクトSUVで、最新の3代目は、最新の横置きエンジンプラットフォームの「MQB evo」を採用するとともに、デザイン、デジタル機能、ライティング技術、シャシー制御などに上位モデルの要素を取り入れた点が大きな特徴である。

Audi Q3シリーズの概要については上記のニュースをご一読いただくとして、今回はSUVスタイルを採用するAudi Q3のなかから、1.5L 直列4気筒直噴ガソリンターボエンジンを搭載するFWD仕様の「Audi Q3 TFSI 110kW advanced」を短時間試乗することができた。

“タンボラグレーメタリック”のこの車両は、メーカーオプションのデジタルマトリクスLEDヘッドライト/ダイナミックターンインディケーター(28万円)が追加されただけのシンプルな構成で、550万円の車両本体価格にボディカラーの有償分8万円を加えて586万円という仕様。Audi Q3の基本性能を知るにはまさに打ってつけのクルマである。

実車を目の当たりにすると、コンパクトSUVという言葉から想像する以上に存在感がある。それも当然で、全長4530×全幅1860×全高1610mmのAudi Q3は、世界的にはコンパクトSUVに位置づけられるが、日本車と比較すると「Toyota Corolla Cross」と「Toyota RAV4」の中間となるボディの持ち主だからだ。

8角形のシングルフレームグリルとシャープなデザインのデイライトによりひと目で最新のAudi Qシリーズとわかるフロントビュー。兄貴分のAudi Q5やAudi Q6 e-tronと似たデザインのため、Audi Q3とすぐに認識できないのが悩ましいところだ。

一新されたコックピットは使い勝手も上々

インテリアは、上級モデル同様、「デジタルステージ」と称する11.9インチのバーチャルコックピットと12.8インチMMIタッチディスプレイを組み合わせて「MMIパノラマディスプレイ」がこのクルマの新しさを物語っている。湾曲したデザインのため、MMIタッチディスプレイが運転席から見やすく、手が伸ばしやすいのも、このデザインのメリットである。コックピット全体はAudiらしい上質さに溢れているのも見逃せないポイントだ。

さらにこの新型Audi Q3では、シフトスイッチをステアリングコラムに統合した「インテグレーテッドスイッチモジュール」を搭載したのが新しい。Audiとして初めて採用するこのスイッチは、ステアリングコラム上に配置された横長のバーに、走行時に必要なスイッチをまとめたもので、左にはウインカー、ワイパー、ハイビームの切り替え、一方、右にはシフトスイッチを配置している。

実際のデザインとは一部異なります。

実際に使ってみると、ウインカー、シフトスイッチともに操作にはすぐに慣れるうえに、ステアリングホイールから手を離さず、また視線を動かすことなく、スイッチを軽く上下に動かすだけで簡単に操作できるのが実に快適。シフトスイッチが姿を消したぶん、センターコンソール部分がすっきり広々としたのもうれしいところだ。

パッケージングについても触れておくと、後席は頭上、足元ともに余裕があり、シートバックはリクライニングも可能。ラゲッジスペースは後席を使用している状態でも奥行きは約90cm確保されており、さらに後席を前にスライドさせればさらに10cmスペースが拡大できる。もちろん、後席を倒すことも可能で、その場合は奥行きは150〜170cmまで広げられ、大きな荷物も楽に飲み込める頼もしさだ。

使いやすいMHEV

試乗車には、110kW(150ps)を発揮する1.5 TFSIエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされ、湿式多板クラッチ式の7速Sトロニックにより前輪を駆動する。

走り始めてまず感じたのは、1.5 TFSIの扱いやすさだ。もともと低回転域から十分なトルクを発生するエンジンに、マイルドハイブリッドシステムのモーターアシストが加わることで、発進や加速時のレスポンスは軽快そのもの。アクセルペダルを大きく踏み込まなくても余裕で加速するため、日常的なシーンでも運転しやすい印象を受けた。さらにアクセルを深く踏み込めば、3000rpm付近から5000rpm超まで力強い伸びを見せ、高速道路への合流や追い越し加速でも不足を感じることはなかった。欲をいえば、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間の加速にもう少し力強さがあればとも思うが、それでも加速性能は必要十分といえる。

1.5 TFSIに組み合わされるマイルドハイブリッドシステムは、アクセルペダルを戻した際、条件がそろえばエンジンを停止したまま惰性で走行し、燃料消費を抑えてくれる。また、低負荷時にはシリンダーオンデマンド(cod)による2気筒運転も行われるため、燃費性能にも期待が持てる。今回は試乗時間と走行距離が限られていたことから実燃費までは確認できなかったが、あらためて長めの試乗で検証してみたいところだ。

マイルドハイブリッドシステムの恩恵は、アイドリングストップからの再始動時にも感じられる。エンジンは違和感なく滑らかに始動し、市街地でのストップ&ゴーでも快適性を損なわない。

さらに進化を実感したのが、コースティング制御の賢さである。従来は前走車の有無に関係なくアクセルオフでエンジンを停止し、そのまま惰力走行へ移行するため、交通状況によっては意図したよりも前車との距離が縮まる場面もあった。しかし、このAudi Q3では前方に車両がいる場合はコースティングを行わず、回生ブレーキを活用して減速を実施。さらに回生ブレーキの強さを自動で最適化する設定を選択すれば、状況に応じて適切な車間距離を保ってくれるため、実に運転がしやすいのだ。

新開発のダンピングコントロールサスペンションが走りを大幅にアップグレード

さらにこのクルマの印象を良くしているのが、新開発のサスペンションだ。ダンピングコントロールサスペンションは、伸び側と縮み側とで独立したオイル回路を持つ2バルブタイプのダンパーに、電子制御のダンピングコントロールを組み合わせることで、減衰力をきめ細かく調整できるのが特徴である。しかも日本仕様のAudi Q3では、このダンピングコントロールサスペンションが全車に標準装着されるのが特筆すべきところだ。

S lineパッケージが装着されない“素”の試乗車には、235/55R18タイヤが装着されることもあって、乗り心地は終始穏やかで、街中から高速道路まで快適性の高さが際立つ。サスペンションは路面からの入力を巧みに受け止めながら、高速巡航時のピッチングやコーナリング時のロールをしっかりと抑制。SUVであることを忘れさせるほど安定感のある落ち着いた身のこなしを披露してくれた。

加えて、フロントサイドウインドーに遮音ガラスを採用したおかげで風切り音や外部からのノイズが巧みに抑えられており、新型Audi Q3は快適性でも、ひとクラス上のSUVへと進化したような印象を受けた。

ということで、短時間の試乗でも、進化の大きさが感じ取れた新型Audi Q3。今後、機会を見てS lineパッケージ装着車をはじめ、quattroモデルやSportbackにも試乗し、その魅力をさらに探っていきたいと思う。

(Text & Photos by Satoshi Ubukata)