50年に一度、は、一生に一度。

普通なら、前々から計画し、モロモロ地ならしをしてから実行するようなこと。

画像: 欧州中から集まったGolferたち。

欧州中から集まったGolferたち。

Golf誕生50周年の今年、本国ドイツ、フォルクスワーゲン本社脇で行われる“GTI FAN FEST”への旅。

実は「今年のドイツ行きは無理」とハナから諦めていた。

それは、2台のGolf1(Caddy)を同時にレストアしている、という自分でも呆れるような年だったから。

一台は、ボルトの一本までバラバラのフルレストア、もう一台は、一年近くエンジン不動と闘い続けている状況で、ご尽力いただいている工房の皆さまの手前、自分だけGolf祭りを楽しもうと言うのはどうか、と。

それなのに、イベント会期の始まる3日前、『まさかね…」なんて軽い気持ちで飛行機の空席検索などしてしまったら…いつも一杯のフランクフルト便に空きがあるではないか!いやでも、まさか、そんな急に「ちょっとドイツ行ってくるわ」とはいかないよなぁ…。

そのとき、自分がどんな顔をしていたのか分からないけれど、「行けば?」と妻がひと言。

いや、でも…と、物凄い逡巡(だが短時間)。

急に仕事を休むことにもなるけど「次の50周年にはこの世にいない」と思い、決めた。

はい飛行機予約!そして、同じく「ドイツ行きたい」と言っていた友人に、念のため声をかけてみたら「行ける!」という返事。

画像: 急な渡航にお付き合いいただいたフォルクスワーゲン3台持ちの友人。

急な渡航にお付き合いいただいたフォルクスワーゲン3台持ちの友人。

明後日からですよ?ドイツですよ?なんだか信じられないスピードで物事が決まり、ホテルとレンタカーを手配し、渡独が実行モードに移行。

GTI FAN FESTは金土日の開催だったけど、金夕にフランクフルト着、ウォルフスブルクには夜中着の予定なので、土曜から楽しむことに。

さて、羽田から十数時間、欧州上空にさしかかった着陸1時間ほど前に、機内でメールチェックしているときのこと。

見慣れない差出人から「今日トーマス・シェーファーに会わない?」というタイトルのメールが。

え?! 差出人のアドレスは「volkswagen.de」、つまり本社の方。

トーマス氏ったら、現在のVolkswagen CEO。

実は今年の春ごろ、ドイツ発行の「Ramp」という雑誌が、Golf 50thで世界各地のGolf fan(ゴルフバカ)を特集するという企画があって、日本については私が取材され、掲載に至ると言うことがあった。

画像: 「Ramp」、という雑誌に掲載いただいた。

「Ramp」、という雑誌に掲載いただいた。

そのご縁で広報の方からCEO秘書の方に「アイツ来るらしいぞ」と連絡が行ったようで、それならば、と一計を案じてくれたようだった。

だが、あいにく私のウォルフスブルク入りはその日の夜中。

残念ながらこの面会は叶わなかった。なかなか面白い想い出になりそうだったのだが、次の機会に譲ることに。

さて、フランクフルト空港からレンタカーでウォルフスブルクへ。

借り出したのハイブリッドではないベーシックグレードの白いGolf8.5。

画像: 移動は、レンタカーのGolf 8.5。

移動は、レンタカーのGolf 8.5。

暗闇迫る中、アウトバーンを飛ばすこと5時間、小雨降るウォルフスブルクに到着した。

工場の壁にある巨大なVWロゴが暗闇から我々を迎えてくれる。

画像: 壁のVWは、新ロゴになるたび更新。

壁のVWは、新ロゴになるたび更新。

明日からの濃い日々に備えて、ビール1本で就寝。

翌朝、ホテルを出てFAN FEST会場へ向かう。

雨は少し残っていたけど、予報はイベントに好意的だ。

予想はしていたが、会場に入る前からテンションはMAX。

フェスに向かうクルマは当然ながらみなフォルクスワーゲン、しかも、普通に初代Golfが走っている。

会場前のパーキングには、さまざまな国からさまざまな世代のGolfが集まっている。

初代のGTIも多く、ナンバーは、ドイツはもとより、イギリス、オランダ、デンマーク、ハンガリー…など欧州中から集結している。

画像: ナンバー末尾のHは、Historicで税金優遇。

ナンバー末尾のHは、Historicで税金優遇。

陸続きというか、海底トンネル、フェリーもあるだろうか…。

こうして集まっている光景を見ると、そう簡単には愛車で参加できないfar eastの我が国を想う。

会場内も気になる。

ゲートでチケットがわりのリストバンドをもらい入場。

Volkswagen Arena(競技場)の周囲がフェス会場になっている。

ゲートを入って早々に、Volkswagenロゴのついたレスキュー隊の人たちが、「LT」という商用車ベースの救急車とともに出展していた。

画像: LTベースのステルス救急車。

LTベースのステルス救急車。

ルーフにはランプがあり、内装は救急車なのだけど、外装は真っ白。

「これは何のクルマ?」と話を聞くと、「万一に備えてテストカーなどに伴走していく特殊な救急車」だ、と教えてくれた。

外装が真っ白なのは、一般の人に誤解を与えないためだそうだ(たぶん、通常の事故では出動しない)。

会場内には、初代GTIやWRC Polo、Goodwood Festival出走のEV車•ID.Rがあったり…歴代GolfやTuned Golf、数々のプロトタイプが並び、公式ショップには長い列ができている。

さすがオフィシャルイベント、貴重な車両が惜しみなく展示されている。

画像: ミニカーでしか見たことなかった。

ミニカーでしか見たことなかった。

会場の横には池があるのだが、そこに懐かしい車両が浮かんでいた。

そう、浮かんでいたのだ。

最初のドイツ訪問のとき、アウトムゼウムという旧くからあるフォルクスワーゲン博物館に展示されていたSeeGolf(湖のGolf)という車両。

画像: 博物館から出てきた”SeeGolf”。

博物館から出てきた”SeeGolf”。

初代カブリオに小船のようなフロートをつけたマンガみたいな車両だけど、現役できちんと浮かぶことができるとは驚いた。

これまでオーストリア・ヴェルター湖畔で開催されていたGTI TREFFEN(MEETING)、が、同地域で開催継続できなくなったのを受けて、本社脇でやることをフォルクスワーゲン取締役会が即決した、というこのイベント。

ヴェルター湖畔ではもっとヤンチャなイベントだったとのことだが、今回は公式開催でもあり、落ち着いた雰囲気。

旧い部品のスワップミートがなかったのは残念だったが、その分、蔵出しの展示車が多く、会場のムードはとにかく笑顔とGolf愛に満ち溢れていた。

来場の皆さんが着ていたGolfがデザインされたさまざまなTシャツを撮りまくってくれば良かった。

世界には、こんなに多様なGolfのTシャツがあるのか…。

中央ステージでは、フォルクスワーゲンデザイン部門の統括責任者、アンドレアス•ミント氏のプレゼンが行われたり、一般オーナーが愛車とともに登壇、推しポイントをアピールしたり…すべての話題がGolfに終始する、というGolf好きには夢のようなひとときであった。

会場で、Autostadt(アウトシュタット)に勤める友人、マルコと落ち合う。

画像: Autostadtの最強ガイド、マルコ。

Autostadtの最強ガイド、マルコ。

半端ないコミュ力の彼と歩いていると、色んな人に日本から来た我々を紹介してくれる。

ひと通り見て回り、会場を出るとAutostadtは目の前、昨年の春以来の訪問だ。

「AutostadtにもGolf 50thの展示があるぞ」と聞いていたけれど、それは明日ゆっくり見ることに。

ちょっと寄り道して、完成車が貨車に積まれて出荷されていくヤードを見せてもらった。

カブトムシやカラフルなGolfが何百台も長い貨物列車に積まれている昔の広報写真を見た方も多いと思う。

我々が訪れたときは、工場が夏休みだったので、貨車は空っぽだったけれど。

画像: 新車が積まれて出荷されていくヤード。

新車が積まれて出荷されていくヤード。

その後は、マルコが夕食を一緒に、と予約してくれた店に連れて行ってもらう。

「あ、ここ、去年も来た!」。

それは「ALTES BRAUHAUS ZU FALLERSLEBEN(アルテスブロイハウスツーファラースレーベン)」という、1765年創業の醸造所。

当時はまだ当然工場はなく、一帯の地名もウォルフスブルクではない頃。

実に趣のある建物と庭園が、ドイツビールをさらに美味しくしてくれる。

画像: 町から10分くらいの旧い醸造所。

町から10分くらいの旧い醸造所。

夕食後は、ウォルフスブルク最古のバー、「Altdeutsche Bierstube(アルトドイチェビアシュトゥーベ)」へ。

壁には旧いフォルクスワーゲン関連のモノクロ写真が掲げられたしっとり呑めるバーであった。

血中フォルクスワーゲン濃度もアルコール濃度も初日から振り切れる勢いで、今夜はよく眠れそう…。

翌日は、朝からとてもいい天気。

フェスト会場は隅々まで見たので、我々はアウトムゼウムに行くことにした。

Autostatdができたときになくなるのではないか、と言われていたが、しっかりと独自路線を死守して開館している。

ここにも、Golf 50thの特別展示があり、それはもう見応え十分な内容であった。

ここの展示車は、その状態もさることながら、中には走行距離が数百km、という車両もあり驚かされる。

こういうのは、完成したところで出荷されず、保存されているのだろうか。

Golfという車名ではないが、構造的に半分GolfであるCaddyもしっかりとその歴史の一部として展示されていて、目下レストア中の私は新車に近いCaddyを見ることなどそうあることではない、ということで、ちょっとフロア下の配管のつき方など観察させていただいた。

画像: ほぼ新車のようなCaddy。

ほぼ新車のようなCaddy。

そして、この博物館には、前回も触れた危険なミュージアムショップがある。

受付を兼ねた非常に小ぢんまりしたスペースだが、その品揃えはAutostadtの売店よりも魅力的で、覗くたびに財政破綻の危機に見舞われる。

しかし、去年に比べると今年は空冷関係のグッズが多く、水冷専門の私としては、心穏やかにその場を立ち去ることができた。午後は再びAutostadtへ。

ここに来たら、フォルクスワーゲンのソウルフード、Curry Wurst(カレーソーセージ)を食べねばなるまい。

画像: カリーブルスト2人前。

カリーブルスト2人前。

自動車の生産台数よりも生産本数で勝っているというこのソーセージはフォルクスワーゲン工場の食堂で出されているものだが、Autostadtのオープンとともにパーク内の「Tachometer(タコメーター)」というレストランで食べられるようになった。

このレストランからは、少し離れたところにある「Schloß Wolfsburg(ウォルフスブルク城)」も見える。

画像: 日本のフォルクスワーゲンでも売って欲しい…。

日本のフォルクスワーゲンでも売って欲しい…。

ちなみにソーセージは買って帰ることもできるが(パッケージには"フォルクスワーゲン純正部品"と書かれている)要冷蔵のため泣く泣く断念。

しかし、今回は専用のロゴ入り皿をゲットできた。

相当迷って、大を一つ、小を二つ購入。

日本で再現することにする。

その後はAutostadtのパビリオンを見て回る。

フェスも済んだ平日とあって、パーク内は貸切かというほど静か。

画像: アウトシュタットにて。

アウトシュタットにて。

工場の4本煙突を見渡す市内の絶景ポイントや、工場に一番近いフォルクスワーゲンディーラーなどをゆっくりと巡った。

フォルクスワーゲンに乗っていなければ、Golfにハマっていなければ、特に面白くない町だろうと思う。

私はもう10回ほど来ているけれど、そんな趣味の日本人もそういないと思われる。

でも、私には特別な場所になってしまった。

今回同行のフォルクスワーゲン乗りの友人もそうだと思う。

町を走れば、対向車も、路駐も9割方がフォルクスワーゲン、渋滞の車列だって、Golf、Golf、Golf、Passat、T4、Golf、up!、Polo…。

あぁ、幸せ。

最後に、友人が勤めるVolkswagen Oldtimer Depotの倉庫に眠るお宝を見せてもらい、お腹いっぱいで我々のWOBツアーは終わりを迎えた。

その夜は、工場夜景を見渡せるホテル屋上のバーで濃かった2日間を振り返り、翌日の移動に備えた。

あとは、レンタカーのGolf8.5でアウトバーンを飛ばし、ハノーファー経由で帰路につくのみ。

あまりにも急な計画だったけれど、来てよかった。

初めて訪れたのは27年前。

画像: 8世代だとVWになるんだ。

8世代だとVWになるんだ。

生産されているGolfの世代は更新されても、町の雰囲気は大きくは変わらないだろう。

きっと、次の50年後もそうなのかもしれないが、Golf好きを30年以上やってきた身としては、今回の渡独はやはりスルーできなかった。

短かったけど、色々ありすぎた。

マルコが手を尽くして入手してくれた記念プレート「50 years of G♡lf」のプレートとともに、日本へ帰ろう。

画像: 記念プレートを愛車に装着。

記念プレートを愛車に装着。

Vielen dank und Auf Wiedersehen!!

※イベントの模様をYouTubeにも公開しています。ぜひご覧ください!

■2024 GTI FAN FEST - "50 years of Golf" VWゴルフ50周年 GTI ファンフェスト@ウォルフスブルク
https://youtu.be/K4obAM5bZhQ

画像: 【Liebe zum Golf(ゴルフへの愛)】Nr.6:祝・Golf誕生50周年“GTI FAN FEST”の旅

なぜそんなにGolfが好きなのか、そんなにGolf好きだと人生どうなっちゃうのか。折しも、Golf誕生50周年の節目にあたる2024年にスタートした、私の狂ったGolf愛を語り尽くす【Liebe zum Golf / リーベ ツム ゴルフ(ゴルフへの愛)】。熱く、深く、濃く、という編集方針に則り、偏愛自動車趣味の拙文を綴ります。

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