長い歴史を持つVolkswagenには、GolfやBeetleだけでなく、いま振り返っても興味深いモデルが数多く存在します。そんな歴代Volkswagenを1台ずつピックアップ。その誕生の背景や特徴、モデルの変遷をたどりながら、あらためてその魅力に迫ります。

今回採りあげるのは、Volkswagenの新時代を告げたスポーツクーペ、初代「Scirocco(シロッコ)」です。

1974年、Volkswagenは新しいスポーツクーペであるSciroccoを発表しました。Golfの登場より3カ月早く世に送り出された初代Sciroccoは、ジョルジェット・ジウジアーロによるシャープなスタイリングと、横置きエンジン+前輪駆動という新世代のメカニズムを採用。1976年には110PSのGTIも加わり、Volkswagenのスポーティモデルを語るうえで欠かせない存在となりました。

Golfに先駆けて登場したスポーツクーペ

Volkswagenが初代Sciroccoを発表したのは1974年2月のこと。のちにVolkswagenの主力モデルとなるGolfが登場する3カ月前でした。

開発と生産を担ったのは、ドイツ・オスナブリュックのKarmann(カルマン)です。当時、Karmann Ghia Type 14の後継モデルが必要とされており、その役割を担う新しいスポーツクーペとしてSciroccoが誕生しました。社内コードは「Type 53 Coupé」です。

ボディデザインを手がけたのはジョルジェット・ジウジアーロ。2+2シーターのコンパクトなクーペで、全長は約3.85m、全高はわずか1.31mに抑えられていました。車両重量もドライバーを除いて約800kgと軽量です。

メカニズムで注目したいのは、のちにGolf Iにも採用される横置きエンジンと前輪駆動の組み合わせです。つまりSciroccoは、スポーツクーペであると同時に、新世代Volkswagenの基本設計をGolfに先駆けて市場に送り出したモデルでもありました。

発売当初のエンジンは水冷直列4気筒で、1.1Lの50PS、1.5Lの70PS、そしてScirocco TSに搭載された1.5Lの85PSという3種類が用意されました。いずれもSOHCを採用するエンジンで、カムシャフトの駆動にはタイミングベルトが使われています。

装備仕様によって外観にも違いがあり、NとLには角型ヘッドライト、スポーティなTSには丸型2灯式ヘッドライトが採用されました。

110PSのScirocco GTIが登場

初代Sciroccoはデビュー後も改良が続けられます。

1975年1月には1.5Lエンジンとオートマチックトランスミッションの組み合わせを設定。同年8月にはScirocco TSの1.5Lエンジンが1.6Lへと変更されました。最高出力は従来と同じ85PSです。また、このタイミングですべてのモデルに大型のシングルアーム式フロントワイパーが採用され、Sciroccoを特徴づけるディテールのひとつとなりました。

そして1976年には「Scirocco GTI」と「Scirocco GLI」が追加されます。こちらもGolf GTIの登場に先行するもので、1.6Lエンジンに機械式K-Jetronic燃料噴射装置を組み合わせ、最高出力110PSを発揮しました。

パワーアップにあわせてシャシーにも手が加えられ、サスペンションをローダウンするとともに、前後スタビライザー、フロントのベンチレーテッドディスクブレーキ、幅広のホイールなどを採用。エクステリアではフロントスポイラーがGTI/GLIを見分けるポイントになりました。

GTIのインテリアにはスポーツステアリングホイールやタコメーター、時計と油温計を備えるセンターコンソール、チェック柄のスポーツシートを装備。一方のGLIは、同じ110PSのパワートレインを搭載しながら、ティンテッドガラスや高さ調整式フロントシートなどを備えた、より上級志向の仕様として位置づけられました。

1977年には初の大規模なモデルアップデートを実施。バンパーが樹脂で覆われ、ホイールアーチまで回り込む形状となったほか、フロントウインカーを大型化。Bピラーやドアミラーのハウジングもブラック仕上げに変更されました。さらに1979年には、新しいベースエンジンとして1.3L・60PSのガソリンエンジンが追加されています。

初代Sciroccoの生産は1981年2月に終了。1974年2月4日の生産開始からKarmannで製造された台数は、合計50万4153台に達しました。その後、1981年には2代目Sciroccoへとバトンタッチ。Sciroccoの名は1992年まで続いたのち一度途絶え、2008年に3代目として復活することになります。

初代Sciroccoは、Golfと基本メカニズムを共有するスポーツクーペというだけではありません。Golfより先にVolkswagenの新しい前輪駆動時代を市場に示し、さらにGTIというスポーティモデルもGolfに先駆けて投入しました。1970年代のVolkswagenが新しい世代へ移行していく過程を知るうえでも、重要な1台なのです。

(Text by 8speed.net Editorial Team / Photo by Volkswagen AG)
※本記事はプレスリリースをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。