これまで何度か試乗はしたものの、ロングドライブの機会がなかった「ID.Buzz」で東京から三重まで出かけてみました。おおむね快適な旅でしたが、途中の充電で“冷や汗”をかく場面もありました。

2025年6月発表、翌7月からデリバリーが開始されたフル電動ミニバン「ID.Buzz」。そういえばロングドライブに出かけていないなと思い、とある週末、東京〜三重往復の旅に連れ出すことにしました。

ご存じのとおり、ID.Buzzには全長4715mm、ホイールベース2990mmの「ID.Buzz Pro」と、ホイールベースが3240mmに伸ばされ、それにともない全長も4965mmとなる「ID.Buzz Pro Long Wheelbase」の2グレードが用意されています。このうち、今回はロングホイール版のID.Buzz Pro Long Wheelbaseをお借りしました。

ID.Buzz Pro Long Wheelbaseのインプレッションは上記の2記事をご覧いただくとして、今回お借りしたのはボディカラーがキャンディホワイトとスターライトブルーメタリックの2トーンという、比較的落ち着いた雰囲気のクルマでした。それでも、すれちがうクルマや街中からの視線を感じましたし、クルマから降りた瞬間に「これ、新しいワーゲンバスですよね!」と声をかけられるなど、あらためてその人気ぶりには驚くばかりでした。

さて、今回の目的地は、三重県にある鈴鹿サーキット。都内の自宅からは約400kmあります。ID.Buzz Pro Long Wheelbaseの一充電距離は554kmですので、計算上は途中の充電なしで鈴鹿まで辿りつけるはずですが、高速道路をメインに使うと実際の航続距離は短くなりますから、途中どこかで1回、充電したほうが良さそうです。

往路は比較的時間に余裕があるので、高速道路から降りて「PCAネットワーク」に加盟するPorscheやAudiのディーラーに立ち寄り、帰路は高速道路のSA/PAでそれぞれ急速充電を行う予定。さらに、宿泊するホテルに普通充電器があるので、これも利用しよう思います。

さて、着座位置の高い運転席によじ登ると、ふだん乗る「ID.4」よりもさらに見晴らしのいい視界に、あらためて感心します。運転席まわりの収納も多く、ドリンク、スマホなど置く場所に困りません。

ID.4同様、このID.Buzzにも純正カーナビは用意されず、私の場合はCarPlayを使ってiPhoneを接続し、ナビアプリを利用します。私が所有する初期型のID.4とは違って、ワイヤレス接続ができるのがうらやましい。試乗車には「ラグジュアリーパッケージ」が装着されていて、パノラマグラスルーフに加えて、プレミアムサウンドシステムが利用でき、長旅には打ってつけです。

首都高と東名下りの綾瀬付近の渋滞を避けようと、金曜日の早朝に東京を出発。狙いどおり、ほぼ渋滞なしで通過することができました。高速道路は、ACCを100km/h、または、制限速度の低いほうにセットして巡航。御殿場ICを通過し、東名に分岐してしばらく走ったあと、富士川SAのスマートICから一般道に向かいます。ここまでの電費は5.0km/kWhでした。

ここから一般道の電費をチェックしながら、浜松エリアにあるPorscheディーラーを目指すことにしました。一般道といっても半分以上は片側2車線、信号も少ないため、電費を稼ぐには好条件。ふだん高速道路を利用しているぶん、視界に入る風景が新鮮です。

途中、浜松の手前の磐田で、お気に入りの餃子屋さん「福みつ磐田店」にピットストップ。ドライバーのお腹を満たしたあとは、「ポルシェセンター浜松」で急速充電を行いました。ここまでの電費は6.8km/kWhと優秀で、高速道路よりも時間はかかりますが、電気と高速代の節約になりました。

充電速度が速いことで知られるPorscheのターボチャージャーだけに、ID.Buzz Pro Long Wheelbaseとの組み合わせでは最大140kWhで充電が進んでいきます。ここでは約25分の充電で、バッテリー残量は34%から76%、走行可能距離は170kmから180km増えて350kmになりました。この速さは、ロングドライブ時にはとても頼りになります。

ちなみに、ボディサイドの後端に充電口が付いているID.Buzzの場合、停車位置によっては充電ケーブルが届かないことあります。この店舗もギリギリでした。

浜松からは再び東名高速に乗り、伊勢湾岸道でみえ川越ICで降りてしばらく一般道を走ると鈴鹿に到着しました。この日の走行距離は451kmでしたが、EVらしい落ち着いた走りのおかげで、疲れ知らずでした。鈴鹿到着時のバッテリーの残量は40%、走行可能距離は192km。この感じだと、浜松での急速充電は5〜10分で十分でしたが、バッテリー残量に余裕を持って走るほうが、なにかと安心です。

さて、この日宿泊する「ルートイン鈴鹿」には6kWの普通充電器があり、夜中に充電すれば翌朝には満充電になるはずです。しかも最近は充電器の予約ができるので、「充電器が空いていなくて、翌朝ピンチ」という事態もなくなりました。実際、翌朝には、満充電でホテルを出発することができました。

実はここで、ちょっとしたハプニングが! クルマをバックで壁近くまで停めて、助手席側にある充電器から運転席側にある充電口にケーブルを引っ張ってきたら、いきなり電動テールゲートが開き始めたのです。「やばい、壁に当たる」と思い、とっさにテールゲートを押さえると動きが止まりましたが、少し判断が遅れていたらと思うと冷や汗が出ました。

電動テールゲート付きのクルマには、リヤバンバー下で足を動かしたりすることで、テールゲートが開く便利な機能が備わるものが多く、このID.Buzzにもついています。私のID.4にもついていて、たまに充電ケーブルの動きでテールゲートが開いてしまうことがありました。幸い、これまではテールゲートが何かに当たることはありませんでしたが、ID.Buzzはテールゲートが大きいため、後ろの壁やポールなどにヒットする恐れがあります。とりあえず、「イージーオープン」機能をオフにしましたが、解錠中や充電フラップが開いているときには、この機能が働かないようにするなど、何らかの対応を考えてほしいと思いました。

鈴鹿サーキットでの仕事を終えたのが日曜日の昼過ぎ。バッテリー残量94%で東京に向かいます。帰りは新東名高速を利用するつもりで、途中、岡崎SA、浜松SA、清水PA、駿河湾沼津SAに150kWと高速の急速充電器が設置されているので、ある程度バッテリー残量が減ったところで、休憩がてら、充電しようと考えていました。

この日は鈴鹿を発った時間が比較的早かったせいか、新東名まではほとんど渋滞なく、順調にドライブ。そして、鈴鹿から230kmを走ったところで、清水PAに立ち寄ります。ここの急速充電器を利用するには、「e-Mobility Powerネットワーク」に対応した充電カードを使うか、スマホを使ってビジター利用することになります。今回は充電カードを使用。通常は30分が上限ですが、実際には15分の充電でバッテリー残量は35%から72%、航続距離は170kmから333kmに伸び、余裕で帰宅できるレベルに達しました。充電器をセットしたあと、トイレに行って、お土産を買ったら15分なんてあっという間です。

ここからは、週末恒例(!?)、東名上りの渋滞に巻き込まれながらも、明るいうちに東京に到着。この時点のバッテリー残量が35%、走行可能距離は175kmでしたので、清水PAの充電は5分程度で十分だったようです。

最終的には、3日間で881kmを走り、総平均電費は5.4km/kWh。往復ともに、途中15分程度の急速充電を1回するだけで目的地まで辿り着けるID.Buzzは、ロングドライブのお供としても、快適かつ頼もしいクルマでした。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Satoshi Ubukata, VWJ)