2026年1月9日から11日まで、FUCHS JAPANは、幕張メッセで開催中の「東京オートサロン2026」に、初の単独出展中だ。
潤滑油のスペシャリスト「FUCHS」
FUCHS(フックス)は、1931年にドイツ・マンハイムで創業した潤滑油専業メーカーである。1930年代から一貫して潤滑油の研究・開発に取り組み、現在では世界40カ国以上に研究拠点、生産拠点、事業所を展開するグローバル企業へと成長してきた。
最大の特徴は、いわゆるオイルメジャーとは異なり、油田を保有しない「独立系潤滑油メーカー」である点にある。原油調達から自社完結するメジャー系とは異なり、FUCHSは用途やエンジン仕様に応じて最適なベースオイルを柔軟に選択できる立場にあり、その自由度が製品開発力につながっている。潤滑油に特化した研究・開発・生産・販売を一貫して行う独立系メーカーとしては、世界最大規模を誇る。
東京オートサロンへの出展は今回が初となり、日本市場における一般消費者への認知拡大を目的としたものだった。日本ではまだ知名度が高いとは言えないものの、欧州を中心に長年積み重ねてきた実績と技術力を前面に押し出すことで、その立ち位置を明確に示した形だ。
FUCHSが選ばれる理由
FUCHSのエンジンオイル開発で重視されているのは、ベースオイルと添加剤の最適な組み合わせである。かつてはベースオイルの品質が性能を大きく左右していたが、近年のエンジンは高出力化・高効率化・低粘度化が進み、単純なベースオイルの良し悪しだけでは対応できなくなっている。
FUCHSでは、用途やエンジン特性に応じてベースオイルと添加剤を精緻に設計し、長期間使用しても性能劣化が起こりにくい配合を追求している。劣化の指標として重要視されるのが粘度変化であり、走行距離を重ねても油膜保持性能が大きく低下しないことが、エンジン保護の観点から重要とされる。
また、欧州車向けエンジンオイルにおいては、自動車メーカーが定める厳格な認証(アプルーバル)への対応が不可欠となる。FUCHSはこの分野で突出した実績を持ち、エンジン仕様ごとに最適化されたオイルを提供している点が特徴だ。認証は単なる番号ではなく、特定のエンジンに必要な性能要件を満たしている証明であり、ユーザーが安心して長期間使用できることを意味する。
モータースポーツの現場でも、その信頼性は裏付けられている。ブースに展示されている「GOODSMILE RACING」のメルセデスAMG GT3は、SUPER GTに参戦する際に、特別なレース専用配合ではなく、市販されている認証取得済みのFUCHS製エンジンオイルがそのまま使用している。高負荷領域での使用においても油膜切れの不安がなく、実戦を通じて耐久性が実証されている点は、ブランドの技術力を象徴する事例といえる。
FUCHSの強み
FUCHSの強みは大きく三つに整理できる。
第1に、独立系メーカーであることによる開発の自由度である。特定の原油に縛られず、世界中から最適なベースオイルを選択できるため、エンジンごとの要求性能に合わせた最適解を追求できる。
第2に、研究開発への高い投資比率だ。全社員の約10%が研究開発に従事しており、自動車用オイルだけでなく、工業用、プラント、発電設備、風力発電といった幅広い分野で培った潤滑技術を相互にフィードバックしている。過酷な剪断環境で培われたノウハウが、自動車用の低粘度オイル開発にも生かされている。
第3に、自動車メーカーとの強固なパートナーシップである。メルセデス・ベンツをはじめ、BMWやAudi、Volkswagenといった欧州メーカーと協業し、純正オイルとして供給されている事例も多い。欧州ではFUCHSのロゴが入った純正オイルパッケージが広く普及しており、メーカー側が「潤滑油のスペシャリスト」としてFUCHSを評価していることの表れでもある。こうした取り組みは、新車時の性能を長期間維持し、ブランド全体の顧客満足度を高める狙いとも一致している。
FUCHSは、潤滑油専業メーカーとして90年以上の歴史を持ち、独立系ならではの柔軟な開発体制と高い研究開発力を武器に、世界的な評価を確立してきたブランドである。
欧州車の厳格な認証に対応した製品群、モータースポーツで実証された信頼性、そして自動車メーカーとのパートナーシップは、その技術力を裏付ける要素だ。東京オートサロン初出展を機に、日本市場においても「潤滑油のスペシャリスト」としての存在感を高めていくことが期待される。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)