2025年12月17日、Volkswagenグループ傘下のバッテリー企業PowerCo SEは、ドイツ・ザルツギッターに建設したギガファクトリーを稼働させ、同社初となる「ユニファイドセル(統一規格セル)」の量産を開始した。欧州で設計・開発・生産までを一貫して手がけるバッテリーセル工場が本格稼働したことで、同グループの電動化戦略は新たな段階に入った。

欧州初の「自社完結型」バッテリーセル生産

今回稼働したザルツギッターのギガファクトリーは、PowerCoの本拠地であり、同社にとって最初の量産拠点となる。ここで生産されるユニファイドセルは、Volkswagenグループが電動化時代に向けて開発した統一規格の角形セルで、ブランドや車種、地域を問わず使用できる点が特徴だ。

PowerCoは、グループ全体で必要となるユニファイドセル需要の約50%を自社生産でまかない、残りを外部サプライヤーから調達する計画を掲げている。セルの標準化によってスケールメリットを引き出すと同時に、コスト競争力と供給安定性の両立を狙う。

初期生産はNMCセル、エネルギー密度は約10%向上

ザルツギッターで最初に生産されるユニファイドセルは、NMC(ニッケル・マンガン・コバルト)系正極材を用いたタイプである。量産セグメント向けとしては高い性能を持ち、従来セルと比べてエネルギー密度を約10%向上させたという。

これらのセルは、Volkswagenが新たに導入するCell-to-Pack(セルトゥーパック)方式のバッテリーシステムと組み合わされ、航続距離、効率、パフォーマンスの向上に寄与する。生産されたセルは今後、Volkswagen、Škoda、SEAT/CUPRA各ブランドの電動モデルに搭載され、路上テストが行われる予定で、来年には「エレクトリック アーバンカー ファミリー」として市場投入される計画だ。

年産最大40GWh、欧州を代表するバッテリー拠点へ

ザルツギッター工場の生産能力は、第一段階で年産20GWh。需要に応じて最大40GWhまで拡張できる設計となっている。20GWhは、バッテリー容量にもよるが、約25万台分の電気自動車に相当する規模だ。

同工場は、PowerCoが今後スペイン・バレンシア、カナダ・セントトーマスに展開するギガファクトリーの「標準モデル(ブループリント)」にも位置付けられており、ここで得られる生産ノウハウや人材は他拠点へと横展開される。あわせて、ザルツギッターでは研究開発・試験施設の拡充も進んでおり、2026年初頭には新たな試験場の稼働も予定されている。

再生可能エネルギー100%、CO2削減も重視

ザルツギッターのギガファクトリーは、持続可能性の面でも新たな基準を打ち立てる。生産に使用する電力はすべて風力および太陽光による再生可能エネルギーで賄われ、通常は化石燃料に頼ることが多いクリーンルームや乾燥室もグリーン電力で稼働する。

これにより、同規模の従来型工場と比較して、年間最大11万5000トンのCO2排出量削減が可能になるという。加えて、高度に自動化された生産ラインとリアルタイムのデータ分析、AIを活用した品質管理により、トレーサビリティと生産効率の向上も図られている。

Volkswagenの電動化戦略の中核

VolkswagenグループCEOのオリバー・ブルーメは、「将来の重要なテクノロジーを自らの手で開発している。PowerCoはその中核を担い、世界における自動車テクノロジーの牽引役となる」とコメントしている。バッテリーセルを自社で開発・生産する体制を欧州で確立したことは、同グループの技術的主権と競争力を大きく高めるものといえる。

(Text by 8speed.net Editorial Team / Photos by Volkswagen Group)
※本記事はプレスリリースをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。