2025年12月15日、Volkswagenは次世代エントリーEVとして開発を進めている「ID.Polo」の進捗状況を明らかにした。2026年の市場投入を予定する同モデルは、量産仕様に近いプロトタイプによる最終テスト段階に入っており、現在は世界各地で走行試験を重ねている。VolkswagenにとってID.Poloは、電動化戦略の中核を担う重要なモデルと位置付けられている。

ID.Poloは、2026年以降に投入されるコンパクトセグメント向けの新型EV4車種のうち、最初に登場するモデルである。従来のID.シリーズがアルファベットと数字の組み合わせによる車名を採用してきたのに対し、ID.PoloではVolkswagenのベストセラーである「Polo」の名を継承する点が特徴だ。これは、電動化時代においても親しみやすさとブランドの連続性を重視する姿勢の表れといえる。

パワートレインは、デビュー時に3種類を設定する。出力は85kW(116PS)、99kW(135PS)、155kW(211PS)で、用途や価格帯に応じた幅広い選択肢を用意する。さらに年内には、166kW(226PS)を発生するスポーティなID.Polo GTIの追加も予定されている。バッテリーは2種類が設定され、エントリーグレードには37kWh(ネット)のLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーを採用。上位グレードには52kWh(ネット)のNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)バッテリーを搭載し、航続距離は最大450kmを見込む。

充電性能も実用性を意識した内容となっている。37kWhバッテリー仕様は最大90kWのDC急速充電に対応し、52kWh仕様では最大130kWまで引き上げられる。日常使いから中距離移動までを想定したバランス型の設定といえる。

ID.Poloの技術的な核となるのが、進化版EVアーキテクチャーであるMEB+の採用だ。前輪駆動を採用し、電気モーターやバッテリーを高効率かつコンパクトに配置することで、コストと消費電力量の低減を図っている。搭載されるモーターは最新世代のAPP290で、床下にはPowerCo製の統一セルを用いた新世代バッテリーを搭載。セル・トゥ・パック構造により、エネルギー密度を約10%向上させつつ、軽量化と省スペース化を実現した。

ボディサイズは全長4053×全幅1816×全高1530mm、ホイールベース2600mm。従来のPolo(MQB)と近い外形寸法ながら、EV専用設計の利点を生かし、室内空間は一段と拡大されている。後席足元の室内長は19mm延長され、とくに後席でのゆとりが向上した。ラゲッジ容量は通常時で435Lと、従来型Polo比で約24%増加。後席を倒せば最大1243Lを確保し、コンパクトカーとしては高い実用性を備える。

運転支援機能も次世代仕様となる。進化したTravel Assistを搭載し、高速道路での操舵・加減速支援や車線変更支援に対応。さらに、信号機や一時停止標識の認識機能も初めて導入されるなど、小型EVであっても最新の先進安全技術を惜しみなく投入する方針が示されている。

開発体制はVolkswagenグループ内のブランド横断型プロジェクトとして進められており、SEAT & CUPRAがプロジェクトを主導。デザインはウォルフスブルクのVolkswagenデザインセンターが担当し、生産はスペイン・マルトレル工場で行われる予定だ。欧州の技術力と生産基盤を結集したモデルとして、ID.Poloは同社の電動化戦略における象徴的存在となる。

VolkswagenブランドでCEOを務めるトーマス・シェーファー氏は、ID.Poloを「新世代Volkswagenの幕開け」と位置付け、欧州でのエントリー価格を2万5000ユーロ(約450万円)からとする方針を示している。手の届きやすい価格帯と実用性を両立させたID.Poloは、電動化時代における“国民車”の再定義を担うモデルとなりそうだ。

(Text by 8speed.net Editorial Team / Photos by Volkswagen AG)
※本記事はプレスリリースをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。