2025年9月7日、フォルクスワーゲンは9月8日から14日までミュンヘンで開催される「IAA MOBILITY 2025」において、コンパクトSUVスタイルのEVである「ID.CROSS Concept」を世界初公開すると発表した。
ドイツおよび欧州で2025年に最も多くの電気自動車を販売した同社にとって、この新モデルはエントリー向けEV戦略の中心を担うものであり、2026年から順次市場投入が予定されている。
エントリーEV戦略の新たな柱
今回の発表は、フォルクスワーゲンが進めるエントリーEVラインアップ拡充の一環である。同社は「ID.2 all」「ID.GTI Concept」「ID. EVERY1」に続き、4番目の小型EVコンセプトとしてID.CROSS Conceptを提示。2026年前半には「ID.Polo」(ID.2 allの市販版)が発表され、同年中に高性能仕様「ID.Polo GTI」も登場する見込みだ。さらにID.CROSS Conceptの市販モデルは2026年夏に正式公開され、2027年にはID.EVERYの市販版が加わる予定である。
これらの新型車は、フォルクスワーゲンを中心としたブランドグループコア(セアト、クプラ、シュコダ、フォルクスワーゲン商用車)が連携し、スケールメリットを活かして開発・生産される。
新デザイン言語「Pure Positive」
ID.CROSS Conceptは、都市部から長距離走行まで幅広い用途に対応するコンパクトSUVとして設計されている。外観デザインはアーバンジャングルグリーンに塗装され、フォルクスワーゲンが新たに掲げるデザイン言語「Pure Positive」を体現。ヘッドライトやリヤのグラフィックは笑顔を想起させる造形で、親しみやすさと個性を両立させた。ヘリテージ要素として「Golf」や“ワーゲンバス”を思わせるCピラー形状や直線的なウインドウラインを採用し、ブランドアイデンティティを未来に引き継ぐ。
コンパクトながら広い室内空間
ボディは全長4161×全幅1839mm×全高1588mm、ホイールベース2601mmと、現行「T-Cross」に近いサイズ。専用デザインの21インチホイール「Balboa」と、Goodyearと共同開発した235/40 R21タイヤが装着される。
室内は5人乗りで、450Lのラゲッジ容量と、“フランク”と呼ばれる25Lのフロント収納を確保。幅広い室内設計により、コンパクトSUVでありながらゆとりある空間を実現した。内装はベージュ系の「Vanilla Chai」を基調に、光・音・空調を組み合わせた「Atmospheres」モードで雰囲気を演出。シートはVWバスを想起させるフルフラット機能を備え、リラックス空間としても利用可能だ。
コックピットには11インチのデジタルメーターと13インチのセンターディスプレイを直線上に配置し、操作性を重視。新設計のマルチファンクションステアリングや、直感的なUI、自然言語による音声操作などにより、快適なドライビング体験を提供する。
MEBは最新世代のMEB+へ
ID.CROSS Conceptは、フォルクスワーゲンが展開する電動車専用アーキテクチャ「MEB」を進化させた「MEB+」を採用する。MEBはID.3やID.4など現行の主力EVに用いられている基盤であり、車種ごとに異なるボディサイズや駆動方式に柔軟に対応できる点が特徴である。今回のMEB+では、バッテリー技術、パワートレイン、ソフトウェアの各面で改良が加えられている。
パワートレインでは、前輪駆動レイアウトを基本としつつ、新設計の電動モーターとパワーエレクトロニクスをフロントアクスルに統合。出力は155kW(211PS)に達し、日常ユースから長距離ドライブまで幅広い用途に対応する。バッテリーは車体床下にフラットに配置され、低重心化と室内空間の確保を両立。車両重量の最適化にも寄与している。一充電走行距離は最大420km(WLTP)を達成する。
フォルクスワーゲン開発担当取締役のカイ・グリューニッツ氏は「MEB+は次世代ソフトウェアを採用し、従来は上級モデルだけに提供してきた機能を小型車クラスにも導入できる。これにより価格競争力を維持しながら商品力を大幅に向上できる」とコメントしている。つまりMEB+は、単なる改良版ではなく、EVの普及を一段と加速させる基盤技術と位置づけられている。
フォルクスワーゲン ブランドCEOのトーマス・シェーファー氏は、「フォルクスワーゲンの歴史上もっとも完成度の高い世代を目指しており、ID.CROSS Conceptはその成果を示すものだ」と述べている。
2024年には約480万台を世界で販売した同社にとって、ID.CROSS Conceptを含む新しいEV群は、次世代の量販車戦略の基盤となる。欧州で需要が拡大する手頃な価格帯のEV市場に対し、フォルクスワーゲンは量産技術とブランド力を武器に競争力を発揮する構えだ。
(Text by 8speed.net Editorial Team / Photos by Volkswagen AG)
※本記事はプレスリリースをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。