ハッチバックとともにマイナーチェンジした「Golf Variant」のなかから、2.0 TDIエンジンを搭載するスポーティ仕様の「Golf Variant TDI R-Line」をチェックする。

進化を続けるGolf Variant

3代目Golfの時代にラインアップに追加されたステーションワゴンのGolf Variant。Golf7 Variantまではハッチバックと同じホイールベースだったのに対して、Golf8 Variantではハッチバックよりもホイールベースが50mm長くなった。これにより、ハッチバックでも余裕ある後席のスペースはさらに広がり、前席と膝のあいだは20cm強と、脚が組めるほどのスペースが確保されている。

ラゲッジルームは、後席を使用する状態でも100cm強の奥行きがあり、さらに後席を倒せば160cmを超える広さに拡大。ラゲッジスペースのレバーを操作するだけで簡単に後席を倒すことができたり、使用しないときにラゲッジネットパーティションやスライディングカバーを床下に収納できたりするのも便利である。フロアは2段階で高さの調整が可能で、フロアボードを上の段に設置すれば、リヤの開口部とラゲッジのフロアの段差がなくなり、荷物の積み下ろしが楽になる。また、この状態で後席を倒せばフラットなフロアが現れるので、大きな荷物を積むのに適している。

さらに、オプションのテクノロジーパッケージを選択すればパワーテールゲートが装着されるのもうれしいところだ。その際、R-Lineではアラウンドビューカメラ“Area View”が追加されるのも見逃せない。

こうした特徴を持つGolf Variantがマイナーチェンジによりさらに進化。ハッチバック同様、より直線的なデザインになったヘッドライトや新デザインのテールライトなどを採用したことに加えて、フロントグリルにイルミネーション付きのVWエンブレムを初めて採用。一方、室内は、ダッシュボード中央のタッチパネルがこれまでよりひとまわり大きな12.9インチとなり、操作性の向上が図られるなど、見どころは盛りだくさんである。

最新版Golf Variantの概要は上のニュースをご一読いただくとして、今回試乗したのは2.0 TDIエンジンを積むグレードのうち、スポーティなデザインが魅力のGolf Variant TDI R-Lineだ。試乗車にはメーカーオプションとして設定されているDiscoverパッケージとテクノロジーパッケージに加えて、レザーシートが装着。R-Line専用レザーシートはやや硬めの座り心地のスポーツシートで、シートベンチレーションが装着されるのがうれしいところ。冬だけでなく、夏場も快適に過ごせるのがいい。

マイナーチェンジよって大きく変わったコックピットは、12.9インチのタブレット型タッチパネルが大きくて見やすいうえに、直接アクセスできるメニューが増えたことで操作が向上している。また、モニター下部にあるエアコンの温度設定と音量調節用のタッチスライダー部分にイルミネーションが追加されたおかげで、夜間でもストレスなく使えるようになった。

高い実用性と経済性、快適さをあわせもつ2.0 TDI

搭載される2.0 TDIエンジンは、排ガス中のNOxを低減するために、SCR触媒コンバーターを2個直列に配置した“ツインドージング”システムを採用。最高出力110kW(150ps)/3000〜4200rpm、最大トルク360Nm(36.7kgm)/1600〜2750rpmを発揮し、湿式多板クラッチ式の7速DSGにより前輪を駆動する。

さっそく走らせると、ディーゼルエンジンとしては、ノイズや振動がしっかりと抑え込まれているのがすぐにわかる。低速での加速こそノイズが耳に届くが耳障りな音質ではなく、スピードが上がればほとんど気にならないレベルである。

一方、TDIの魅力といえば力強い加速が挙げられるが、もちろんこの2.0 TDIも低回転から余裕あるトルクを発揮し、2000rpm手前から力強さを増す。アクセルペダルの動きに即座に反応し、街中では実に運転がしやすい。アクセルペダルを踏み込めば4000rpm超まで勢いが続く。とはいえ、高速道路の合流や追い越しといった場面であっても、アクセルペダルをさほど深く踏み込まなくても余裕ある加速がもたらされ、たいていの場面で2500rpmも回せば事足りてしまうのが2.0 TDIの頼もしい点だ。

気になる燃費だが、Golf Variant TDI R-Lineのカタログ燃費は、WLTCモードが20.1km/L、市街地モードのWLTC-Lが14.4km/L、郊外モードのWLTC-Mが20.3km/L、高速道路モードのWLTC-Hモードが24.1km/L。これに対して試乗時の燃費は、ACCを使って高速道路を約100km/hで巡航したときが24.6km/L、比較的空いた一般道を丁寧なアクセルワークで走ったときが24.0km/Lをマーク。約600kmを走行した総平均燃費は20.5km/L(47km/h)で、この低燃費は実も魅力的である。

ハッチバックより穏やかな性格

R-Lineの場合、ハッチバック同様、専用スポーツサスペンションやプログレッシブステアリング、225/40R18タイヤが標準で装着される。

「Golf eTSI R-Line」ではやや硬めの乗り心地が気になったが、このGolf Variant TDI R-Lineではハッチバックに比べて長いホイールベースやeTSIよりも重量が増えたのが幸いして、Golf eTSI R-Lineよりも乗り心地が多少穏やかになり、さほど硬さが苦にならなかった。一方、スポーティなハンドリングや高速走行時のフラット感のある乗り味などはそのままというのがうれしい。

TDIだけに燃料の安さも魅力であり、ロングドライブに出かけることが多い人には、このGolf Variant TDI R-Lineはまさに打ってつけの一台だろう。

(Text & Photos by Satoshi Ubukata)