オリジナルのまま、ダメージのない状態の「Golf2 GTI」(1989)。“悪そうな外観”やDTMスタイルのエキゾースト、ローダウンサスペンションといったモディファイがなされていないGolf2 GTIはドイツでは珍しい。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

Golf誕生50周年! 2024年、このアイコンの記念すべき年がウォルフスブルクで盛大に祝われた。1974年に登場した初代モデルは、長きにわたって人気のクラシックカーだが、Golf2や、かつては不人気だったGolf3(少なくとも特別仕様車)も、いまではヴィンテージでモダンなクラシックカーとして人気を集めている。そんな中でもGTIは特に高人気を博している!

安価なGolf1 GTIは長い間市場に出回っておらず、もし出回っていたとしても、その多くは何か怪しいところがあるものだ。最初のGTIはファンから崇拝されており、それ相応に高価だ。程度の良いGolf1 GTIは、見つかれば2万ユーロ(約336万円)以上で取引されている。多くのGTIが事故に遭い、残っている数台も、現在の視点から見ると疑わしいチューニングパーツで外観が損なわれていることが多いため、供給量は極めて少ないのだ。

1983年に登場した2代目Golf GTIの状況は、それほど悪くはない。このクルマも、長い年月の間にかなりの割合が“邪眼”のDTMスタイルのエキゾーストやBBSのレプリカホイールを装着しているが、少なくとも数は多いのだ。とはいえ、ここでも難しいのは、きちんと整備され、錆のない個体を見つけることだ。

たとえば、このクルマはハンブルクのスポーツカー専門店「David Finest Sports Cars GmbH」で販売されている。「ランボルギーニ アヴェンタドール」、「ロールス・ロイス ゴースト」、さらには「メルセデス・ベンツ300 SLロードスター」といった貴重で高価な車に囲まれて、この小さなGolfは少し場違いな感じさえする。しかし、広告の説明によると、それは極めて保存状態の良いGTIであるとのことだ。

しかし残念ながら、これはあまり人気のない8Vバージョンで、112PS、触媒コンバーターなし(触媒コンバーター付きでは107PS)である。1986年以降、フォルクスワーゲンは139PS(触媒コンバーター付きでは129PS)の16VとしてGTIも提供していた。16Vのほうが人気があるけれど、1.8Lの8V(1987年以降のエンジンコードPB)も正真正銘のGolf GTIであり、このコンパクトカーを9.7秒で0から100km/hまで加速させ、最高速は191km/hに達した。

今日ではもはや特別なものではないが、30年以上前には確かに印象的だった。しかし、正直にいっていまやGolf2 GTIの魅力はスペックではなく、運転を楽しむことだ。

スペインからやってきたGTI

最高出力や最高速、加速性能よりもずっと重要なのは、クルマの状態だ。その点、ここで紹介する2ドアのGTIの場合は、その状態は良好のようだ。このGolfは1989年9月に初めて登録され、現在、走行距離は約187,500kmだ。

注目すべきは、2021年までフォルクスワーゲンの整備士が所有していたことだ。その人物は、GTIを入念にメンテナンスし、チューニングによる悪影響を一切与えなかった。内外装ともに、Golfはオリジナルのまま、損傷のない状態で保存されている。これは絶対的な珍しさだ。

広告の説明によれば、このGolf2 GTIはスペインの陽光のもとで過ごしたため、錆びは問題ではない。窓枠、ホイールアーチ、給油口、テールゲート、ナンバープレート取り付け部など、錆が発生しやすい箇所にも錆びは一切ないという。

GTIはこれくらいの価格で販売されるべきである

結論からいえば、これは、真正かつオリジナルの、証明可能な履歴を持つ中古の2ドアのGolf2 GTIを購入するチャンスである。価格は13,999ユーロ(約235万円)である。決してバーゲン価格ではないが、適正価格である。そして、交渉次第ではもう少し値下げできるかもしれない。

結論

確かにこのGTIは16Vではなく、ドイツ国内で販売されたクルマでもないが、オリジナルの状態と証明可能な履歴は、このスペインのGTIにとって大きな魅力だ。しかもこの価格は妥当だと思うし、オリジナル状態のGolf2 GTIがこれ以上安くなることはないだろう。

(Text by Jan Götze / Photos by DAVID Finest Sports Cars DFSC GmbH)